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花が咲いて、身になって。

ダイニングの椅子に座って、外をぼうっと眺める。

定位置から、空き地を挟んだお向かいさんの緑が見える。そよそよ風に揺らされて、とっても気持ちがよさそう。


そのお家にはいくつかの種の樹木が植えられている。ちょうど人の高さほどの塀があるので、住人の方と目が合うことはない。おかげさまで、躊躇いなく日課を続けることができている。

冬にはミカンを、春先には梅の花を楽しんだ。5月に入った頃から、緑が青々と茂り「新緑の季節だな~」とこれまたウキウキしたものだ。

6月も中旬。可愛らしいお花を咲かせていたあの木が、今度は立派な大粒の実をなしている。なんだろうと、じい~っと見つめた。


「あ、梅だ。」

梅の木には、実もなるのだ、と。

そりゃそう、なのだが。

けれど実際、花は見ていたのに、実は見ていなかった。おそらく、緑に溶け込んでいて、それが実であったと気付きもせずに眺めていたから。

すでにほんのり黄色がかっている。青々とした時期はとっくに過ぎたようだ。これからじわじわと頬を桃色に染めていく段階なのだろう。

そしたら、収穫されて実らしく形になっていく。
時間をかけて梅干しにされたり、夏に向けて梅酒に使われたり。暑い季節には欠かせない、強い味方になってくれる。




花があって、緑があって。
わかりやすいものは目に留まる。認識をする。美しい花なら、なおさらのこと。

馴染んでしまったものは見つけにくい。

しっかりとそこにはある。少しずつ大きさや色を次に移して、だんだんと認識する。その頃には、もうすっかり立派な姿になっていて。



人もそう。
容姿が美しい人や、わかりやすい才能がある人は、誰かの目に留まりやすい。称賛されやすい。

けれど、目に見えるものは、代わりがいたり、消えてしまったりする。

その瞬間は儚い。



内面はどうだろうか。
何かに取り組んだこと、続けたこと、自信を持てたこと…日々のたわいもなく些細で小さなこと。

代わりはいない、消えないものになる。

身になる。色付いていく。



「花も実もある」

この言葉にあるように、身も心も充実すること。そうすれば、いつの日か「実のある人」になれる気がする。



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