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汗をかく

 一週間くらい引きこもっていた。いつもは学校やら塾やらなんやらで毎日外に出ているが、ここのところ夏休みで塾の夏期講習も終わったので自室にこもっていた。
 さすがに人間としてまずいのではないかと思い、今日はサイクリングをした。サイクリングって言ってもただの散歩みたいなものだ。近所の大通りを走って疲れたらUターンして戻る、それだけ。日はもうすっかり沈んでいて夜だった。大通りの夜は良い。信号が赤になった一瞬、すべての車が停止して、音が消えてまったくなくなるのだ。その一瞬が奇跡のようで、毎度はっとする。
 ずっと自転車を走らせていると汗をかく。息が上がる。信号待ちの時心拍数がすごく早いことに気づく。そうやって汗を流しながらずっと漕いでいると、だんだん気持ちよくなってくる。背中やズボンに張り付く汗が気持ちよいというのも変な話だけれど。外出でおしゃれしているときは不快だが、運動して汗をかくのはむしろ達成感がある。
 そもそも汗って暑いときに水を出して冷やそうというのだから、すごく原始的かつ効率的なシステムだ。打ち水するのと原理は全く一緒。とても分かりやすくていい。最近はゲリラ豪雨(というか雷雨)がとても多いが、あれもようは汗みたいなものなんじゃないか。暑すぎるから水で冷やす。超単純な原理。地球温暖化に対する自然の防衛反応という感じがして面白い。
 当たり前だけれど普段引きこもっていると汗をかいて息が切れることなどないので、とても特別な感じ。思えば夏って汗をかくものが多い。海やプールで泳ぐのも、山に登るのも汗をかく。心なしかスイカや夏野菜も水っぽいし。どうせじっとしてても汗をかくのだから、せっかくならたくさん汗を流して気持ちよく青春しようということなのだろうか。青春って、春のくせに夏の季語みたいなところがあって面白くないですね。


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