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連載小説 マリアと呼ばれた子ども 第33回

僕は再び、愛さんと幸子、アンニカに質問をした。
「みなさんはレムリア時代のお仲間だったとのことですが、琴座の一等星の『ベガ』と関係があるんでしょうか。いや、実は僕はマリアとともに初めてタオライアー製作ワークショップに参加した時たまたま、シュタイナーの母国語であるドイツ語ではライアーを【Lyra 】と綴ると知り、そのことに興味を持ったんです。」
僕は説明を続けた。
【Lyra 】はもともとラテン語の綴りで、夏の夜空に輝く星座「琴座」のことも意味するからだ。琴座自体は比較的こじんまりしているが、一等星のベガは夏の夜空に光り輝く目立つ星だ。古くから日本では七夕の「おりひめ星、織女星」と呼ばれて親しまれている。ベガと、はくちょう座α星のデネブ、わし座α星のアルタイルの3つの1等星で、夏の大三角と呼ばれる大きな二等辺三角形を形成する。わし座α星のアルタイルは七夕の「ひこ星、牽牛星」と呼ばれて、ベガとともに世界中で親しまれ愛されている。日本でも平安時代から文学作品にたびたび取り上げられているくらいだ。
しかも、ベガの「おりひめ」アルタイルの「ひこぼし」という星の名は、プレアデス星団の「すばる」とともに、現代でも同じように呼ばれている、数少ない星である。
その点について、アンニカがいつもの通り優しい口調で語ってくれた。
「実は私たちが地球にやって来る前は、琴座のベガに居たんです。この時代に地球に大きな変革が起きることを知り、ベガからまずレムリアの時代にやって来ました。その時、最初は私たちイルカだったんですよ。」アンニカは薄青い瞳の大きな目を細くして、僕の方を見てにっこり優しく微笑んだ。
「え、えー。イルカだったんですか。」僕は驚いて、ほとんど叫んでいた。
「ふ、ふ、ふ。イルカは人間よりずっと知能が高くて、テレパシーでコミュニケーションができるんです。いろんな物質と自分との方向や距離も、音波を飛ばして知ることができるんです。でも、私たちが地球にやって来た本当の目的は、人間として生きて、この大変革の時代にお手伝いをすることでした。それで、いつからか、人間として生きるようになったんです。」このようにアンニカは説明を続けた。
「そうだったんだ。知らなかった。」僕は、居合わせている他のみんながベガから地球に転生して来てからの年月と苦労を脳内で想像し、圧倒されるような感じがした。
「魂にはそれぞれ、同じ目的を持った集団があります。グループソウルと呼ばれることもあります。ちゃんと巡り会って助け合うようになっているんです。」今度は幸子が説明してくれた。

「今回のワークショップで製作するタオライアーには『ドルフィン』という名が付いてますが、関係があるんでしょうか。」僕は続けて質問をした。


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