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連載小説 マリアと呼ばれた子ども 第27回

幸子からタオライアーの今後の製作方法について細かく教わった後は、クリスマスツリーを囲んでお茶会になった。
幸子はドイツ製のクリスマス菓子パン、シュトーレンを用意してくれていた。アンニカ親子は手作りのジンジャーマンクッキーを差し入れてくれた。僕たちがお土産に持参した無農薬のハーブティーを幸子さんは、陶器のポットで丁寧に淹れてくれた。ハーブティーは乾燥したオレンジやレモン、シナモンなどのスパイスが入った、クリスマスブレンドだった。
マリアを含めて子どもはみな、ジンジャーマンクッキーを夢中で頬張っていた。幸子は子どものために、刺激の少ないノンカフェインの紅茶を淹れてくれた。
大人はみな、本格的なシュトーレンを濃密な香りのハーブティーとともに味わった。一気にクリスマス気分が盛り上がってきた。
突然、アンニカが【安曇野のワークショップで通訳をしてくれた、愛さん覚えてますか。愛さんが住んでおられる、熊本県阿蘇市の森の中で、来年の春、ワークショップをされます。ご一緒にいかがですか】と切り出した。
来年の春に製作するのは、今制作中のタオライアーよりもう少し大型で、【ドルフィン】という名前が付くという。
愛さんの話では、ドルフィンには熊本県阿蘇市の山林で育った木材を使うそうだ。10年は自然乾燥された、優良な木材だという。
「え、えー。今度のタオライアーはドルフィンっていうの。」マリアは驚きと喜びの混じった叫び声を上げた。
マリアは、今制作中のタオライアーをイルカちゃんと呼んでいることを説明した。
【え、えー】っと、今度は一同が驚きの声を上げた。
「凄い、それは偶然の一致ね。じゃあ、マリアちゃんは参加決定かな。」と幸子が満面の笑みを浮かべて、明るい声で言った。
「行きたい!」女の子三人が異口同音に唱えた。
「ねぇ、お父さん、良いでしょう。」とマリアに強請られて僕は思わず、うなづいていた。
「じゃあ、決まりかな。詳しいことを愛さんから教わって、皆さんに連絡しますね。わー、今から楽しみだわ。」アンニカも薄青い瞳の目をいつものように喜びで細くして優しく笑った。
【熊本県阿蘇市にはもの凄いパワースポットがあると話には聞くけれど、愛さんのライアー工房兼住居は森の中というが、いったいどんな場所なのだろうか。】僕の好奇心がむくむくと大きくなって来た。

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