人の作る喧騒が幕を下ろした浜に座り
何時間も
ただ聞いていた
見ない、聞かない、感じない
わたしにのしかかるものを
封印して
追い払って
閉じた目で、塞いだ耳で、からにした心で
海に広がる水音を
何時間も
ただ聞いていた
風を受け入れた海は
その証に立ち上がり
知らしめるようにしぶく
鳴動と静寂
海に広がる水音
わたしはどこに行こうと言うのか
何を受け入れるのか
人の声が愛おしくなる少し前に
その昔羊水の中にいたことを
無い記憶の中で
思い出した
そうだ
もう一度だけ振り返り
この音を胸に
わたしは風を受け入れてみよう
#詩