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詩 口にできない言葉


ちいさな弟がこぼしたスイカの欠片に
近付くアリを見つめた
よく知らない田舎町の
遠くで音をたてるせせらぎに
ここにいる意味が揺らぐ

降り降りてくるような夕焼けに
壊される幻影

いつだってそうだった

楽しい思い出は残したくないと
口にできない言葉があった

アリを追いかけていた弟が
上を見上げる
軒先に吊るされた風鈴が
チリリンと音を立てて
赤みの増した雲の帯に
吸い込まれていった


#詩

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