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掌編 正しい杖の使い方


神話部は、夏祭りが終わったばかりですが、既に次のお題の締め切りが近付いてま、ます😂
お題 《杖》
掌編小説

掌編小説 正しい杖の使い方

 この辺りで宿を取ろうとしていた旅の一行は思わぬ騒ぎに足を止めた。

「庄屋さま〜!由兵衛さんが!」

 血相を変えた男が庄屋の屋敷に飛び込んで行った。

「どうしなすった?」旅の一行の若い衆が騒つく村人に声をかけた。

「急に倒れたんでしょう。これで五人目」

 村人の言葉に一行の者達は眉を寄せた。


「するってぇと、さっきまでピンピンしてたモンが立て続けに倒れたと?」

 宿に入った一行は詳しく話してくれと、女将にせがんだのだった。訳がわからぬと言う女将の横で、番頭の喜助が話を続けた。

「ところが庄屋様んとこの客人が祈祷をすると治っちまうんですよ。何でも杖を使うとか」

「祈祷師に杖、ですか」一行の中の老人が口を開く。

 はい、と女将が受け取る。
「何でもゲレシアとか言う異国の神様が使う杖のご利益だとか。杖に蛇の彫り物がしてあって、病を治すらしいんですよ。喜助、なんてったっけねえ」
「えっと、あすくれ……なんとか」喜助は盆の窪を掻いた。


「病が治るのは本当で、なんでもその後法外な金品を要求するとか」

 その夜宿に合流した竹とんぼの弥吉と言う遊び人風情が、早速見聞きした事を話してくれた。

「その祈祷師は怪しい。弥吉、詳しく調べてくれ」
 誰とも無い言葉に皆頷き合った。


「お客さん、また病人が!」
 翌々日、喜助が一行の部屋に飛び込んで来た。
「またか!」
「へい、源太郎ってんですが、なんでもうわ言で、キノコを食わされたと」

「ご隠居!」
「ふむ、重さん、忠さん、いきますよ!」

 越前の紙問屋を名乗る一行が源太郎の家に急ぐ。

「わしが毒を?この不届き者めが!」
「おとっつぁんは、庄屋さんとこでご馳走になったと言ってるんだ!」

 庄屋と源太郎の息子が睨み合う中、そこに割って入ったのは一行の忠さんこと忠房だった。

「そこのニセ祈祷師!毒を仕込んだ挙句異国の杖などと言って、こっそり解毒薬を飲ませていた事はわかっておる!」
「なんだ貴様!」
「悔しかったら何と言う名の神の杖なのか言ってみろ!」
「ア、ア、そ、そうだアスクレ……」
「言えぬか!アスクレピオス、ゲレシアの神だ!」
「くそ!ふざけるな!」

 その時弥吉の竹とんぼが祈祷師のおでこに当たり、それを合図に殴り合いが始まったのだった。

「そろそろ頃合いですか、重さん、忠さん!」

「ええい、控え!」

 紙問屋とは偽りで、幕府御三家のご老公の姿がそこにあった。

「さて庄屋さん、あんたごろつきを使ってとんでもない事を企みおって。しっかり償ってもらいますよ。そもそも杖とはな」そう言うとご老公は、平伏す庄屋の前で自分の杖をドンと大きくつくと、しっかと足を踏ん張った。

「地面に立ち、歩かせてくれりゃあ充分なんじゃよ!」


《了》


勧善懲悪は突っ込みどころ満載と相場は決まっておるが、更に少々文字数が飛び出すとは、いやはや面目ない。
全ては言葉遣いゆえ。
父さんーおとっつぁん
するとーするってぇと
┐('~`;)┌ソンナワケアルマイ


アスクレピオス
ギリシャ神話。医療の守護神で、蛇が巻き付いた杖を持つ。


なんとでも言ってくれ。


#mymyth202309 #掌編 #神話部 #言い訳が見苦しい

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