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詩 おかえり


西日の中を歩いていた

泥で固めた小さなお団子をふたつ大事に

手のひらの中で崩れないようにと

とっても大事に持ちながら

西日の中を歩いていた

から

…… から

驚かないようにと思って

声をかけなかったんだその時は

言い訳ひとつ

路面電車がガタゴトと音を立てる

西日の中を歩いていた

でも……

でも

顔を見てみれば良かったのに

その時に顔を見てあげれば

きっと歪んでいたことに気が付いたんだよ

迷子はどこにいても迷子

帰る家を知っていても迷子は迷子

お豆腐売りのおじさんが

ラッパを吹きはじめる西日の中にいた

抱っこしようね

歩き疲れた小さな女の子は

ほっとして眠り込んでしまった女の子は

ずっと西日の中を歩いていた

何十年も何十年も

お家を探して西日の中を歩いていた


おかえり




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