今日は変わった人がお相手をします?
時は平成30年のお盆の夜(のつもりで)
こんばんは、いつもご贔屓にありがとうございます。
実はね、今日はちょっと妙な人が来てて…… 店を手伝いたいって…… どうもこうもお読みいただける物語を用意するどころじゃなくてね(-_-メ)
あ、でももしよかったら寄っていってくださいな。
その人なんやかんや喋りたいみたいで、むしろ、ちょっと付き合ってあげてくださいませな。
という事で、邪魔してもいけないので、わたしはここで一旦失礼しますよ、また後で。
いつものように、こちらのドアを開けてくださいね。
いらっしゃいまし~
さぁさ、よく来てくださいましたね…… なんてあたしは上品な口きくの苦手でね、好きなところに腰かけとくれ。
いやね、実はあたしが住んでた町で盆踊りがあってね。
何年かに一度は来てるんだけど、今年は翠が飲み屋を始めたってんで、ちょいと様子を見に寄ったってわけさ。
久しぶりだね~だんだん遠のいちまって、こっちに来んのは八年ぶりだよ。
あたしかい?あたしは翠って子のご先祖様だよ。
りつってんだ。おりつさんだよ。
ゆんべの話だけど、久しぶりの盆踊りだったねぇ。
今時分はあっちでもこっちでも盆踊り。あたしたちのために踊ってくれてんだろ?せっかくだから一緒んなって踊ってきたんだよ。
あぁよしとくれよ、ちゃんと足は借りてきたからさ。
「月が~出た出た~月が~あ出た~よいよい!」
すっかり覚えちまったよ。調子ん乗って太鼓まで叩いてたやつがいてね。幼なじみの嘉平って気のいい大工さ。みんな来てるんだねぇ。
そうそう、金魚すくいが出てたんだよ。
あたしが町中の男ども尻ぃ敷いていた時分にはさ、金魚を持って帰るなんてことぁできなくて、小唄やちょいとした踊りの間に、何匹釣れるかの競争だったのさ。
暴れん坊が幾人かいたら、ちっちゃい子は尻をくらっちまう。
今は違うんだね~
玉ぁみたいな汗かきながら金魚追っかけてた子がいてね。
可愛らしいじゃないか。
そんでもってその子のおっかさんがねぇ、また優しそうな顔して寄り添って、いい顔してたね~
あたしもおっかさんのこと、思い出しちまったよ。
(短歌 翠作)
もちろんあたしだって子供ん頃があったんだよ。
あたしはね、ほんとはもっとおばあさんなんだよ。
でもこっちぃ来る時にお役人さんに頼むと、まあまあ融通利かせてくれんのさ。なるべくべっぴんさんだった頃にしてください、てね。
腕のいい髪結いのねえさんが、こっちでもおかしくないようにってぇいじってくれんのさ。
あっちじゃお迎えが来た時のまんまさ。
何しろうちのばか息子も、あたしとたいして変わんないじいさんなんだよ。せいぜい八つくらい若いだけさ。笑っちまうだろ!
え、うちの人かい? やだねぇ、そりゃ相変わらずの助平じじいだよ。
でもね、あたしのおっかさんはもっと若い時分に病気でねぇ。あたしが嫁ぇ行くずっとずっと前さ。
おとっつぁんにしたって孫の顔見る前だったねぇ。
だから会えたんだけど、あたしはおばあちゃんだよ。おっかさんより、ずっと歳上だ。だからさ、生きてた頃のようなわけにもいかなくてね……
あら、やだよ、何だか湿っぽい話になっちまった。
そう言えばさ、時々こっちを覗いちゃいるけど、なんだかわかんないことばっかしだよ。
盆踊りでもそうだったけど、みんななんだい、四角い印籠みたいなもんをせっせと見てるじゃないか。おまえさんも持ってるそれだよ。
え?『すまほ』ってのかい?けったいなもんが流行ってるんだねぇ。
でもさ、こう言っちゃぁなんだけど、流行りもんには目がないんだよ。あたしもひとつ買っていこうかねぇ。
あの世でも使えるのかい?その『わいはい』とかってぇのは。『はい』じゃなくて『ふぁい』?言葉まで小難しくなっちまったのかい。
そうそう、忘れるとこだった。
寄ってってくれた人にどうぞって言うんだった。
なんでも翠が『表紙』ってのを用意したらしいよ。いつも来てくれる人に今晩は粗品を用意したらしいんだよ。
最初は『さむね』何とか?とか『あい』何とかって言ってたけどさ、覚えらんないからわかる言葉にしてちょうだいって言ったら、表紙って教わったのさ。
おかしなもんだねぇ、表紙をどうぞってなんのことだい。さっぱしわかんないよあたしには。
表紙って紙束の表につけるもんじゃないのかい。
中身が無くて表紙だけってねぇ。
でもさ、せっかく翠が言うんだから、気に入ったのがあったら貰ってやっとくれ。
*画像配布は終了させていただきました。
(画像は削除してあります)
それにしてもあれだねぇ
お江戸の町に比べりゃたいしたことないって思ってたけど、ここもなかなかいいとこじゃないか。
そうそう、今晩はここから見えるところで花火があがるらしいってよ。
せっかくだからあたしは近くまで行ってくるよ。
あ〜なんだか久しぶりに楽しかったよ。話に付き合ってくれてありがとね。
あたしがこんだぁこっちぃ来るってなったらさ、おまえさん、絶対に寄っとくれよ。
そうだよ、当たり前じゃないか。もちろん来られんのはこの時期だよ。
そうだねぇ、あたしも意地ぃはってないで、おとっつぁんとおっかさんにこっちの土産話でもすっかねぇ。
ほら、花火が始まっちまうよ!じゃあね。
(昨年出した花火の動画ですが、お時間のある方はご覧ください。2分半程度です)
はい、今日はなんだかありがとうございました。
散々おしゃべりに夢中になっていたご先祖様も、花火の後にまた違う人に会いに行ったようですね。
そうそう、すっかり忘れてお酒を出すのが遅くなりました。
今夜は「とりあえず生!」
BAR 物語詩
店主 翠
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