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花火とマッチとじいさんと

 花火大会の動画を投稿した後だから、というのもなんだが花火にまつわる忘れられない思い出を書いてみたい。花火?というよりは、そこにつける『火』の話だ。
 中学3年か高校1年の夏休みに、何人かの友達と近くの公園で花火をしようという話になり、思い付きだったので花火だけを買って公園にむかった。マッチが無い。いざ花火をしようという時になってそのことに気が付いた。
 その公園の向かい側に、じいさんとばあさんがふたりでやっているお店があった。駄菓子屋とは呼べない、ちょっとしたお茶うけになるようなお菓子や飲み物、そしてえんぴつやトイレットペーパー程度の消耗品が、少々売られている、何屋だかよくわからないお店だった。
 ちょっと聞いてみようよという話になり、その何屋だかよくわからない店に入って、店にいたじいさんに聞いてみた。

「マッチありますか?」

「なになに煎餅かい?」

「……」

「マッチありますか?」

「煎餅かい?」

イライラしてきた。三度目デカイ声で。

「マッチ、あ、り、ま、すか?マッチです!」

 友達は下を向いて肩を震わせながら、何かに耐えていた。みんな耐えていた。



「あぁ、マッチね…… はい、20円」

 売られているマッチの、その箱の絵柄はおなじみだ。だから一瞬止まった。でもね、しょうがないでしょ、マッチがなければ花火できないの。
 しょうがないしょうがない…… なんで20円なのか意味がわかんないけどね~~!!

 それにしてもすっとぼけたじいさんだ。煎餅の代わりに出てきたマッチ箱には『純喫茶 青い麦』と書かれていた。

 花火の季節になるとこのとぼけたじいさんと、得体のしれない20円のマッチを、わたしは思い出す。花火にまつわる夏の思い出。

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