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【生徒指導提要#1】生徒指導の意義

 年度末にむけて忙しいことを言い訳になかなか進めなかった生徒指導提要を読み進めてみたいと思います。あまりのボリュームに心がおれそうですが、一緒に勉強に付き合ってくれるとありがたいです。

生徒指導の定義と目的

 前回#0でお伝えした通り、生徒指導の定義は以下の通りです。

生徒指導とは、児童生徒が、社会の中で自分らしく生きることができる存在へと、 自発的・主体的に成長や発達する過程を支える教育活動のことである。なお、生徒指導上の課題に対応するために、必要に応じて指導や援助を行う。

生徒指導提要:https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf

 目的については以下のように書かれています。

生徒指導は、児童生徒一人一人の個性の発見とよさや可能性の伸長と社会的資質・ 能力の発達を支えると同時に、自己の幸福追求と社会に受け入れられる自己実現を支えることを目的とする。

生徒指導提要:https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf

 ここから、前回もお話ししたように、教員は生徒を支える存在であり、助言や援助をする存在であるということが分かります。いわゆる「伴走者」というやつですね。この支えるものは生徒の学習面から精神的なものにわたるまで多岐にわたるようです。また、その達成のためには生徒自身の自己理解と「自己指導力」が必要とされています。この生徒が自ら学びに向かう態度は新学習指導要領の評価や個別最適な学びと協働的な学びにつながる表現でもあります。
 VUCAの時代と言われる現在では、そういう力がつくことが大切なのは理解できますが、生徒にそれを求めるのはかなり酷なことであるように現場としては感じます。自分自身に厳しい目を向けなくてはなりませんし、ある程度の客観性(メタ認知)が必要ですから、発達段階も考えなくてはなりません。

生徒指導実践上の視点

 生徒指導提要では実践上の視点として4点挙げられています。

(1)自己存在感の感受
(2)共感的な人間関係の育成
(3)自己決定の場の提供
(4)安心・安全な風土の醸成

 ここでは、授業または学級経営の中で、生徒指導がなされることを示していました。また、学級という集団で「個」が埋もれないような工夫も必要であるとのことです。授業に関してのことは学習指導要領で、学級経営に関しては、また違う章があるので、そこで詳しく見ていくことにしましょう。

生徒指導の関連性

 生徒指導とキャリア教育に関して以下のように書かれています。

生徒指導と同様に、児童生徒の社会的自己実現を支える教育活動としてキャリア教育があります。生徒指導を進める上で、両者の相互作用を理解して、一体となった取組を行うことが大切です。

生徒指導提要:https://www.mext.go.jp/content/20230220-mxt_jidou01-000024699-201-1.pdf

 自己実現という目的の中で、キャリア教育とのかかわりも深いと書かれていました。小中高のつながりも大事です。自らを振り返り、自己理解を深め、自己調整を行うことが大切だということでしょう。ここでキャリアパスポートなんていうツールが出てくるわけですね。

 また、教育相談は生徒指導の一環として位置づけられています。それは旧生徒指導提要と若干の齟齬があるようですが、今回はあまり関係ないので省略します。
 教育相談に関しては、① 個別性・多様性・複雑性に対応する教育相談と② 生徒指導と教育相談が一体となったチーム支援が示されています。
 多様な生徒に合わせた生徒指導と問題行動の未然防止などにつながる支援が必要であるということでした。

1章1節を読んで

 ここまで読んでみて、今の教育に合う形に作られたものであることが、よくわかりました。生徒指導提要のみが独立して存在するわけでなく、今の学習指導要領や教育の方向性まで上手く組み込まれていて、勉強になるとともに、他との関連性も気になってきました。
 しかしながら、今の時代は「多様性」と言いつつ、自由なのにかなり制限のある生きにくい世の中になっている気がします。なにか意見を言うと「不謹慎だ」「差別的だ」などと正義(と思っている)ものに叩かれます。そのなかで、「自己実現」や「個性」を求められる生徒は苦しくないのかな、とふと考えてしまいました。光村図書中3の教科書に鷲田清一さんの「誰かの代わりに」という文章を思い出す内容です。もちろん、目指すべきところは理解した上で、生徒が苦しくないように寄り添うことを忘れたくないと思ったのでした。

では、また。