見出し画像

3年ぶりの桂文珍さんの大東京独演会

 東京で開催する桂文珍さんの「大東京独演会」は3年ぶりだそうです。
 今回はお客さんのリクエストをアンケートで募り、噺を高座にかけるということでしたが……そこは、文珍さん。ストレートに話が進むわけではありません。
 
 前回、文珍さんの独演会を訪れたのは2020年3月20日。国立劇場を訪れたのはコロナ禍の真っ最中でした。噺家生活50周年の記念として、日替わりゲストを招いた20日間の興行でした。会場も国立劇場の大劇場という、途方もない試みをされたのですが、舵取りは難しかったようです。
 幸い、私が聴きに行ったときは、前日まで休演だったのが無事に再開したときでした。このときのゲストは、桃月庵白酒さんで、演目は「替り目」。相変わらずの面白さは言うまでもありません。
 余談ですが、この二日後のゲストが講談師の神田伯山さんでした。襲名したばかりの時期でもありまして大人気。完売だったそうです(しかしながら、コロナの影響で中止になっていました)。


2020年3月。コロナ禍で休演を余儀なくされながら、幸い再開された日の落語会でした。このときは開演当初、白衣姿で高座に上がられてコロナを話題に。

 本日のお客さんからのリクエストには「地獄八景亡者戯」や「算段の平兵衛」などに票が集まっていたのですが、文珍さんは「昨日、『算段の平兵衛』をやったので……」と説明し、結果的には会場の中からジェスチャーで高座にかけてほしい演目を募るということに。結果、「三十石」が選ばれました。
 ほかには、「コロナでなかなかやれなくて、『くっしゃみ講釈』をやりたいんですけどね~」と、にっこり微笑み、最終的には「平林(デジタル版)」「くっしゃみ講釈」「三十石」という演目になりました。

 ご本人が選んだにもかかわらず、「前座噺をすることになるとは……」とおっしゃっていた「平林」。最後の方に節つきで「タイラバヤシに、いちはちじゅうのもーくもく、ひとつとやっつでとっきっき~」と唄う箇所でデジタル要素を用いるのですが、この令和の今、敢えてオーソドックスに古典をしたほうがいいのではないかなというのが個人的な感想でした。

 「三十石」は、初代桂文枝が前座噺を大ネタにまで仕上げたということで、ナマでは聴いたことがないのですが、3代目桂米朝さんが得意とされており、CDでこちらを聴き慣れていたものですから、文珍さんの噺は初代に近いものだったのだろうなあとふと思ってみたり。米朝さんの場合、もっと華やかだったような。

お客さんから寄せられたアンケートによるリクエストは結局のところ、使われず。
「平林」をやめて、一席を減らしてでもいいので、過去に米朝師匠に稽古をつけてもらったという大ネタ「地獄八景亡者戯」を聴きたかったです。

 収穫は、初めて聴いた桂二葉(かつら・によう)さん。
2021年に「令和3年度NHK新人落語大賞」で、女性として初めて大賞を受賞した注目の噺家さん。「女性自身」の「シリーズ・人間」というドキュメントの記事をたまたま読んで気になっていたのでラッキーでした。
 高座に上がった開口一番、声の高さに驚きました。「上方落語界の白木みのる」と説明していましたが、そのたとえがわかるのは、ご年配のお客さんが多いとはいえ、かなり限られていると思うので再考した方がいいのでは、などと心の中でツッコんでしまいましたが。

 スピード感あふれる、テンポの良い、聴きやすい落語でした。
 間の取り方もうまく、お客さんが一体感を持って笑える空気を生み出しておられました。今後のさらなるご活躍が楽しみです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?