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征服ちゅうずでぃにおける岡田彩夢の自炊論について

1.はじめに

「自炊」とは、一般的に「自分で食事をつくること」を意味し、「外食をせずに自炊する」「自炊生活」のように使われる言葉である(注1)。
従来は、そのままでは食事に適さない食料(食材)を調理することでしか、食事を作ることができなかったため、「自炊」の定義について、議論はなかった。
しかしながら、調理と呼べるか疑問が出るような高度化した調理器具の一般家庭への普及や食の外部化(注2)により一定程度調理工程が進んだ食事を購入することが一般化する中で、「『自分で』『食事を』つくる」という定義に対して、具体的な食事に関するどの行為が自炊に含まれるか、議論が行われているところである(注3)。
本稿においては、近年、独自の自炊論をラジオ番組において主張する岡田彩夢氏(2000 - )(以下、敬称略。)の主張をまとめることにより、在野の自炊論者の議論がさらに活発に行われ、自炊論研究の発展に寄与することを目的とする。

農作業は自炊か研究室メンバーと議論を交わす岡田氏

農作業が自炊に含まれるか、議論を重ねる岡田(2020)

2.岡田彩夢について

岡田は、2000年8月8日、熊本県に生まれ、2017年1月からアイドルグループ『虹のコンキスタドール』(注4)のメンバーとして活動している。
2018年1月から、ラジオ番組『虹コンの征服ちゅうずでぃ』(注5。以下、単に「征服ちゅうずでぃ」という。)へのレギュラー出演を開始した。
2020年7月、岡田は突如、征服ちゅうずでぃにおいて、自炊論を披露し、その後、3週連続で言及し、現在も独自の自炊論を進化させている。

キャベツの収穫は自炊か確かめる岡田氏

キャベツを実際に収穫して、自炊に含まれるか確かめる岡田(2020)

3.征服ちゅうずでぃにおける岡田の発言

(文中、敬称略。「的場」は、的場華鈴(2000 - )。「清水」は、清水理子(1997 - )(注6))

2020年7月28日放送回

「(ファミリーマートのお母さん食堂の牛カルビチャーハンは、)熱を加えないと食べれないから。熱加えてるのは調理。そう、自炊」
「(清水の『それじゃあカップラーメンも自炊になっちゃうよ』という発言を受けて)自炊よ」
「母の作り置きを電子レンジでチンするのは自炊じゃないですか?」
「自炊の線引きってむずいですね、わかんないや」
「コンビニでさ、チンするおかずとごはんバラバラに買って、チンしてよそって食べるのは自炊?」
「(的場の『米炊くのは自炊?』という質問を受けて)自炊」
「(自炊の炊は、炊飯の炊であるものの)実は米に判断権はない。ただ、米炊くのは、自炊」

岡田氏が自炊を主張するもの

岡田が自炊に含まれると主張するファミリーマート『お母さん食堂 甘口たれの牛カルビごはん』(注7)

2020年8月4日放送回

「(今週料理したか聞かれ、)すごい料理したんですよぉ。あの、コンビニの牛丼をチンして、卵とチーズ乗せた。だって食材だよ。スライスチーズと卵乗せてるのは。加熱してるし。」
「電子レンジで加熱するじゃないですか。手料理だって。これは自炊」
「(スタッフさんからいただいたうどんは)多分鍋からそのまま食べる」
「(すき家の牛丼に紅生姜を乗せると、その瞬間から自炊になるかというリスナーからのメールに対して)いや、天才か。いいねえ。乗せないという選択をすることもできるんですよ。そんな中、乗せるという選択をした。これは自炊。乗せなかったら自炊じゃない。なんもしてないもん」
「(清水の『とろろ乗せるのは?』との質問に対して)それは自炊」
「(的場の『そんなこと言ったら、蓋を開けるだけでも自炊じゃない?』との質問に対して)料理に手を加えてない(から自炊ではない)」
「(的場の『牛丼が冷めました。レンチンしますは?』との質問に対して)それは自炊じゃない」
「(リスナーからの『ひもを引っ張ると蒸気で温かくなる牛タン弁当のひもを引っ張る作業は自炊に入りますか?』との質問に対して)難しい。半自炊。(的場の『どちらかと言うと?』という質問に対して)自炊かなあ。引かなかったら食べれないもん、あれ。(ひもを引っ張るのは)特別な技術。電子レンジでチンとは一味違う。私的には迷う。これを自炊と呼べるのか。それを研究するため、私はアマゾンの奥地へと」

岡田氏が自炊を主張するもの2

岡田が自炊に含まれると主張する茹でたうどん(注8)

2020年8月11日放送回

「(リスナーからの『冷凍食品は自炊だと思う』とのメールに対して)だね。冷凍食品は自炊だよ。いいこと言うねえ。(工場で作られた冷凍食品を)美味しく食べられるように自分で手を加えてるのは自炊。人の愛を受けて、自分のものに変えていく、これは自炊」
「(清水の『1番作るのが楽な料理はなんですか?』との質問に対して)卵かけご飯。(清水の『卵かけご飯はちょっと違うじゃないですか』とのコメントに対して)なんで、自炊だよ!」
「卵かけご飯は、焼いたらチャーハンじゃん」

4.岡田の自炊論に対する考察

岡田の自炊論をまとめるとこうなる。

① 食事に熱を加える行為は自炊である。ただし、冷えてしまった一度完成した料理に単に再び熱を加える行為は自炊ではない。
(例:電子レンジによる加熱、カップラーメンにお湯を注ぐ、炊飯器による炊飯、牛タン弁当のひもを引っ張って温める行為)
② 完成された料理に食材を追加する行為は自炊である。
(例:牛丼に紅生姜やとろろを乗せる、白米に卵を乗せる(卵かけご飯))
③ 蓋を開ける行為は自炊ではない。

特に②の判断に当たっては、食材を追加せずとも食事を取れるにも関わらず、食材を追加するという選択を行っていることを重くとらえ、食文化の多様化に伴う「自分でつくる」という定義を再定義することに成功しており、岡田の食事に対する柔軟性を垣間見ることができる。
また、岡田は明確に言及していないものの、自炊であると主張する牛カルビごはんを皿などに移さずに食しているとともに、単に蓋を開ける行為を自炊ではないと明確に否定していることから、「自炊」とはあくまで食材に関する行為であるという立場を明確にしている。(注9)

5.まとめ

今後も調理器具の発展や食文化の多様化により、現在では考えられない食事の作り方や食事そのものが登場することになるだろう。
一方、人間が食事をとることにより栄養を補給する限り、「自炊」という行為がなくなることはなく、「自炊」の定義についても、一見抽象化した定義ができても、何が自炊に該当するかという問いは永遠に続くものと考えられる。
このとき、岡田の主張する「他者の愛を受けて用意されたものに、自らの手を加えて食事を完成させる行為は『自炊』である」という考え方は示唆に富んでいる。
この主張に沿えば、今後の技術の発展により現在とは異なる食事が行われる場合、例えば、3Dプリンタを利用した遠隔地からの操作により作られた食事についても、遠隔地の者が愛をこめるとともに、最後に調味料を自らの手で振りかけるような場合は、自炊に該当することとなり、一定の普遍性を持った判断が可能となる。
岡田の主張を端的に言えば、自炊とは、キミ(他者)と私の共同作業により完成するものである。
すなわち、本稿が書かれている2020年夏においては、「サマーとはキミと私なりっ!!」ということになる
2020年9月16日に発売が予定されている虹のコンキスタドールニューシングル『サマーとはキミと私なりっ!!』は、現在、絶賛販売予約受付中であり、発売記念インターネットサイン会が開催されている。
虹のコンキスタドールが愛をこめて作ったCDを自らの手で購入する行為、これはまさしく自炊である

古代ギリシアの哲学者ソクラテスは、哲学者として対話を続けることにより真理に到達していったとされている。
同じように、岡田は、的場、清水、蛭田という哲学者と対話を続けることにより、より高次の自炊論に到達することが可能である。
今後も、岡田の自炊論の発展を願ってやまない。

(注1)デジタル大辞泉(小学館)
(注2)共働き世帯や単身世帯の増加、高齢化の進行、生活スタイルの多様化等を背景に、家庭内で行われていた調理や食事を家庭外に依存する状況が見られる。これに伴い、食品産業においても、食料消費形態の変化に対応した調理食品、総菜、弁当といった「中食」の提供や市場開拓等に進展が見られている。こういった動向を総称して「食の外部化」という。(令和元年度食料・農業・農村白書)
(注3)検索サイトGoogleにおいて「自炊 定義」で検索すると、約40万件の検索結果がヒットする。
(注4)虹のコンキスタドールは、2014年に結成された日本の女性アイドルグループ。自分たちが思う「かわいい!」や「好き!」を追い求めるインドア系・正統派アイドルグループ。通称“虹コン”。自称アイドル界イチ夏曲の多さを誇るも、実は直射日光が苦手な室内派……でも本当はやればできる子。虹コンなりのアツいライブでみんなの心を征服ちゅう!(虹のコンキスタドール公式HP)
(注5)正式な番組タイトルは「GIRLS♥GIRLS♥GIRLS =FULL BOOST= 虹コンの征服ちゅうずでぃ」。毎週火曜日20:00~20:56にFM-FUJIにおいて放送している(2017年4月4日に放送を開始)。
(注6)なお、同番組に出演している蛭田愛梨(2004 - )は、自炊論に対する態度をあまり明確にしていない。これは、蛭田が高校2年生であり、自炊に馴染みがないため判断が難しいことと同時に、元軍人という経歴のために、ある行為が自炊に含まれるかどうかという実益のない文民的な論争にあまり興味がないことによるものと推察される。しかしながら、今後の岡田の自炊論の発展には、蛭田のようなアウトサイダー自炊論者との対話が必要不可欠なものである。
(注7)2020年7月26日15:22岡田彩夢公式ツイッターにおいて、下記の文章とともに投稿。「UMA」
(注8)2020年8月4日22:18岡田彩夢公式ツイッターにおいて、下記の文章とともに投稿。「うどん茹でた 言い逃れようのない自炊 #征服ちゅうずでぃ
(注9)なお、岡田は、2019年2月6日12:28岡田彩夢公式ツイッターにおいて、「周りの子がお弁当とか食べてるなかお馴染みのコンビニのおにぎり食べてるの最高に人生って感じがする。自炊、するかぁ」と述べており、おにぎりについては自炊に該当しないことを明確する一方、コンビニのお弁当については、自炊に該当するかどうか明確にしておらず、当時から電子レンジで温める弁当を自炊に含めようとする自炊論者としての萌芽が垣間見える。

(参考:エアでうどんを食べる行為は自炊に該当するか議論する岡田と哲学者たち(2020))

エアでご飯を食べることが自炊か確かめる岡田氏と研究室メンバー

(参考:新しい漢字を考案する哲学者的場(2020))

新しい感じを考案する的場氏

(参考:岡田の自炊論を高度化するため岡田の自炊論に異を唱える哲学者清水(2020))

清水2

(参考:自炊論にあまり興味のない哲学者蛭田(2020))

蛭田氏


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