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恥かかされたわ(汗 ①

🐣「どんな?」

乗り合わせた2人組マダムらの、巧妙な手口によって、わたしの善意はもてあそばれた。赤面するほどの情に沁み入る恥をかかされた訳ではない。マダムに対する恨みはない。実を言うと、恥じらいを覚えていない。

🐣「?」

善意を弄ばれた自覚も、当時は無かった。

小生、廉恥なこころが薄く、身悶えるほどの羞恥を感じることが生活の中でほとんどない。マダムらによって生じさせられた「恥」も、一時の感情にあたまを支配されて恥をかかされたこと以外考えられないといった類いの恥ではなく、その出来事が起こった瞬間に「これは、恥をかかされたんだな」と、いわば、自らの体験を語る他人を冷ややかな調子を帯びた眼でみつめるように、恬として簡粗に分析したまでで、情動があるか無いかの2択で言うならば、無かったと言う方が正しいだろう。これはなにも、私が非情な人間で不感症でサイコパスで最低で最高な世界を邁進したいと言っているのではない。マダムらと電車で初対面したのは、わたしの1日の終わりに近い23時前後であり、疲労が溜まっていた事由にこころが動かなかったというだけである。

まあ何が言いたいかというと、言いたいことなんて何もなくて、ここまで書いてきた内容は全て、レトリック文字数稼ぎ以外の何物でもないということです。本題に入るまでの前戯です。どんなことが起きたか即物的に伝えるだけならば、300字でこと足りてしまうので。

道草をしよう。

🐣「情に沁み入る恥」

情に沁み入る恥、と先ほどわたしは言いました。言葉の意味がちょっとよく分からないですよね。どんなシチュエーションにて起こり得るのか、まわりくどく解説したいと思います。たぶん、説明にならないと思います。

Listen,

深く、暗く、光の届かない海の底には、やわらかい泥が沈澱している。あなたは、船のいかりとなって、ゆっくりと、ゆっくりと、海の底へと沈んでいく。冷たいぶよぶよとしたものが、左肩に触れる。あなたは、申し訳なさそうに、右の手を握ったり開いたりする。あなたは、ゆっくりと、沈んでいく。潮の流れに、身をまかせる。あなたには、わからない。どれほどの時間を経て海底に降ろされたのか。やわらかい泥を、てのひらですくう。ざらざらとしたものも、中には含まれている。手と手の隙間から、やわらかい泥が抜け落ちていく。暗い海に、忽然と色彩豊かな星が浮かぶ。光り輝いているように感じる。はなから何もなかったかのように思える。光り輝いている。消え失せる。そしてあなたは、情に沁み入る恥を覚える。

🐣「ね?」

ね?

イライラしないでね。


本題に入ります!!

👊

🐣「何故殴られてるんだ」

恥を、かかされました。高校時代の友人と、地元のプールランドで日がな一日遊泳し、遊び尽くした帰りのことです。家に帰るため、電車に乗りました。うっすらと夜の香りがする、空席の多い号車でした。時刻は22時を過ぎていたと記憶しています。帰路の方面を同じくする友人2人と、同じ車両に乗り、隣り合って座席につきました。わたしは、すぐにでも眠りに落ちそうなほど、疲れていました。遊び疲れて、ぐったりとしていました。その時のわたしの眠気を飛ばし意識を保たせる要因は、2つありました。同じ時間同じ熱量で遊泳したにも関わらずなぜだか溌剌はつらつとしている隣の友人と、日射により負った肌の日焼けの、ひりひりとした痛感です。

プールランドでは、いろいろな楽しいことが起きました。日焼け止めを持参し忘れたわたしは、友人のものをちょびっと拝借し日焼け対策を講じたものの、背中や二の腕、足の甲など塗り損ねが多く、遊び終えて17時には、めちゃくちゃに日焼けしてました。肌と衣類が少しでも触れ合うと、ひりひりと、超低温のバーナーで炙られるような痛みを覚えます。日焼けを負ってから2.3日は衣服の着脱にさえ苦労するほどの、ひどい有り様でした。良い教訓を得ました。日焼け止めは、持っていくべきです。

あとこれは、とても面白いなので又の機会に別枠で語ろうと思っていたのですが、良心の呵責感じなき何者かによって、友人が持ち込んだスイカボールが盗まれるという事件もありました。スイカボールとは、いわゆるビーチボールが、擬態してスイカ柄になったものを指します。

おっと、電車に同乗していた友人らが下車するようだ。さよならを告げる。そして私はひとりぽつんと、自宅最寄りの駅に到着するまで、居座り続ける。リュックサックを胸に抱え、目をつむる。溌剌とした友人らがいなくなってから、日焼けの痛感が一層、勢力を増したように思えた。眠りの底には落ちなかった。

ここでマダムの登場。友人らと入れ替わるかたちで、2人組のマダムらが、空いている私の右隣の席に座した。なぜだか分からないが、そのマダムらも、友人と質を同じくして、溌剌としていた。嬉々としてスマホの画面をタップし、乗り換え案内を調べる様相も全く同じなことに今気がついた。ちょっと、気味が悪いな。

そんなマダムらの会話が、聞こうとする意思があろうともなかろうとも、否応なく耳に入ってきてしまう。わたしは、目をつむったまま、鼓膜で感受した波の解読を試みる。



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