#095 ゲイだと会社の懇親会を楽しめないのか

数年ぶりに会社の懇親会に参加した。様々な部署の人が集まったイベントの後に夕食を兼ねた懇親会が開かれた。知らない人、知っていてもプライベートまでは知らない人が集まると、独身なのか既婚なのか子持ちなのかの話題になりがちだが、やっぱりその話題になった。

斜め前にいた40代男性の話の中で、「自分は独身」というキラーワードが出てきたことをきっかけにそれは始まった。正面にいた50代女性は僕を少し知る人物なので、「ここにも独身がいるわよ」と僕を指さした。以前なら、僕も独身だと言って会話を楽しむことができたのだが、去年パートナーシップ宣言を東京都に申請し、結婚指輪もしているので、「いえ、実は昨年結婚したんです」と言ってみた。そこから急に僕を中心とした会話に切り替わり、あれこれ聞かれたが、あまり話を広げたくないので気が乗らない感じの返事を繰り返した。特に困ったのが「どこで知りたったの?」という質問だ。一般社会では、学生時代の友人か、職場や取引先の人などが多いが、中年になると出会いは様々になってくるのでなおさら興味を持たれるのかもしれない。都市部のゲイの多くは、最近はアプリで出会う人が大半ではないかと思うが僕らもそのアプリで出会った。ノンケの男女もアプリで出会う人が増えてきたらしいが、結婚相手がそうだというと刺激が強い気がする。そこで、とっさに口に出た答えが「知り合いの仲間」だった。あながち嘘ではない。この世界は狭いので、どこかで繋がっている。インスタを開けば共通のフォロワーもいるし、年齢が近ければボトルを入れているゲイバーも同じってこともある。実際は今のところ繋がりはないのだが(繋がりを詮索し合うと気まずくなることもあるので慎重にしている)、そういうことにしてその場を乗り切った。

社会にカミングアウトして生きていれば、こんな場面で気を揉むこともなく会話を楽しめるが、ほとんどのゲイは結婚したとも言わないのではないだろうか。この先、噂が広がっていき、誰かと会うたびに聞かれると思うと気が重い。

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