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ラーメンVS虎

ラーメンが!!


ついに!あの因縁の相手!!!

泳ぐトラ

と激突!!!その勝負の行方は果たして!?

ルール


・ルールなど無用。これは漢と漢の本気の戦闘い(たたかい)である。

バトルスタート!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 まず、虎がその爪を持ってラーメンの丼鉢(俗に言うラーメン鉢)に傷をつける!雷紋があしらわれたその陶磁器の表面に!傷をつける!つける!!つける!!!!!!!!!!!!!!!!
 素体となる丼鉢に傷をつけられちゃあラーメンもひとたまりもない!この勝負、やはり虎が優勢か!?虎がそのまま勝ってしまうのか!?勝っちゃうのか!?!?流石にラーメンに虎は…

お〜っと!?

 ラーメンが!麺を!そのコシの効いた麺を!虎の首に巻き付ける!!虎の気道を塞ぎ!活動の源である酸素の供給を停止せんと!麺を巻き付ける!!!

─窒息しちゃうとね、ま、結局酸素が無くなると。
で、酸素が無くなるとね、どんな動物でも無理なんです。死ですよ。

芦田愛菜「子を演じると言うこと」より

 もがき苦しむ虎!絡みつくラー麺!虎は!虎は!!死んでしまうのか!?自然界で生き延びて来た虎も!数々の弱き者たちの命を喰らい!ここまで生きてきた虎も!十数年の修行を経た店主が!丹精込めて効かせたその麺のコシには!敵わねぇっつ〜のかぁよぉ〜!?!?!?!?!?!?!?!?
そのときだった

???「争いはやめなさい…」

誰?誰だ?
虎「か…かあさん…?」
なんと!?その声の主は虎の母さん!?
ラーメン「て…店主…?」
店主?店主ってあの、ラーメンを作った?いわばラーメンの母親ってこと!?
つまりなんと!声の主は!虎の母とラーメン屋の店主!虎とラーメン、それぞれの母だった!!
でも、どうしてここに…?
虎の母「争いはやめるのです」
ラーメン屋の店主「争いはなにも生みません 生まれるのは深い悲しみだけ」
虎の母「虎には虎の」
ラーメン屋の店主「ラーメンにはラーメンの」
虎の母とラーメン屋の店主『それぞれの生きる道 それぞれの優れたところがあるのです 勝負なんて必要ないのです…』
 あ、そうか…そもそも、虎とラーメンを戦闘わせる(たたかわせる)なんてのが間違ってたんだな…そうだ、それぞれにはそれぞれの生き方ってもんがあるんだ…それを忘れて、目の前の物質的な現実のみに囚われ、それぞれの魂のぶつかり合いを、単純な視覚情報として、エンターテインメントととして、消費しようとしていた私は、なんて愚かだったんだろう…

 全て馬鹿馬鹿しくなった私は、虎を野に放ち、ラーメンをラーメン屋の前にそっと置いた。
 それぞれの生き方。それぞれの道。
 私の生きる道はどんなんなんだろう。風が吹いた。
 ふと。
 風下の方に目をやると、いつもと変わらない街が広がっていた。通りがかる車のうち何台かがつけていたヘッドライトが、道を照らしている。ちらほら家々の窓に灯りが見えた。もう夕暮れ時か。私は歩き出した。


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