坂井存Zon Sakai「三島発、背負う荷物は ちがえども 今も昔も おもい変わらじ」(7日目)
「ヴァンジ彫刻庭園美術館」訪問の翌日、「ベルナール・ビュフェ美術館」へ。学芸員の井島さんが出迎えてくださり、館内を案内していただく。
・美術館併設のカフェ&ショップ「TREEHOUSE」(静岡県長泉町)
美術館はなんと、開館50年目を迎えるそうだ。岡野さんの祖父にあたる岡野喜一郎氏が収集したビュフェのコレクション美術館で、約2000点を収蔵。初期作品から最晩年まで、ビュフェの画業や人となりを知ることができる貴重な美術館だ。心に残ったのは代表作よりも、晩年の「ドン・キホーテ」や「骸骨」をテーマとする作品だった。老年期にさしかかってなお力強いタッチに圧倒された。
・ベルナール・ビュフェ美術館(静岡県長泉市)
企画展では、古今東西の作家による「東海道」と「富士山」をテーマとする作品が見られた。
・日蓮正宗総本山 大石寺(静岡県富士宮市)
実に様々な作家が「東海道」を描いている。中でも水木しげる氏の「妖怪道五十三次」は1枚1枚の絵に違った妖怪が登場し、例えば大井川では、河童たちが旅人が乗った蓮台(れんだい)を担いで川を渡る姿など、隅々まで目を楽しませてくれる。
よく知られた歌川広重の浮世絵は、三島、宇津之山、岡部、嶋田は、パフォーマンスで訪れた場所だが、昔の人も同じ道を行き来したと思うと、感慨深い。
・歌川広重《東海道五十三次 三島 朝霧》
広重の三島の絵は、出立の場面だ。三嶋大社の鳥居が真ん中やや右寄りに描かれている。霧が立ち込める、まだ明けきらぬ時間。これから京都に向かうもの、江戸に向かうもの。旅人たちは先をいそぎ、すれちがう。
こうしてあらためて「東海道五十三次」を眺めてみると、距離が長い上、山あり川あり。名所も多いが、難所つづきだ。(静岡県は、「新幹線の駅が日本で最も多い県」だそうだ)
・三島広小路駅(静岡県三島市)
三島に到着した旅人たちは、箱根の山を越えて、何を思っただろう。湧き水で喉をうるおし、ほっと息をふきかえしただろうか。三嶋大社に参詣して、道中の無事に感謝したかもしれない。
誰もが長い距離を旅してきて、道中が難所だとわかっている。旅人だけでなく受け入れる側も。だからこそ、三島ならではの、行き交う人々を受け入れ、いたわり、歓待する文化が花開いたのかもしれない。
・中郷温水池(静岡県三島市)
今回このワーケーションに興味を持ったのは、無言館(長野県上田市)に叔父の作品が収蔵されていると知り、福岡から長野まで往復3,000kmの徘徊旅の途中、富士山と共に写真を撮ろうと思ったことがきっかけである。
・富士山(静岡県富士市)
その時はほんの短い滞在だったが、機会があればもっと長く滞在し、地元の方に直接話を伺ってみたいと願っていた。今回その思いが叶いMAWに参加することになった。三島を歩いて制作し、他の旅人とともに地域の方に受け入れられ、交流する中で、より深くこの土地を理解することができたと感じている。
さて、『わたしたちの東海道 富士山のある風景の魅力』展の最後に引いた「おみくじ」ならぬ、「おみふじ」の結果は...。(池ヶ谷知宏氏(goodbymarket)の参加型作品)
まだまだ、旅はつづく。
・富士山(静岡県富士市)