見出し画像

1月20日(金)制作のヒントたち

この日、野口さんは朝から白坂さんとともに庭師が主催する竹かご作りワークショップ@藤枝に出かけた。
あとで野口さんに話を聞いたところ、竹かごを作ることよりも「竹をうまく割く新しい技術習得を目指す」というスタンスで参加したそうだ。そのため、竹かごは作らず〈蛸みこし〉のプロトタイプを作ったのだとか。丸いかごになる途中の状態の、ちょっと〈蛸みこし〉に似た何かをおとなたちが被ってる様子が面白かったと言う。「宇宙と交信するものに見えてきちゃったんですよね」と写真を見せながら笑う野口さん。能で狂女が竹を振り神を招き寄せる、という話を思い出す。「アンテナとしての竹」というテーマはずっと何かにしたい模様。

〈蛸みこし〉に似た何かをおとなたちが被ってる様子(瀧瀬 画)

私は午後から吉原商店街のマルイチビル(田村の店が2階に、シェアオフィスが4階にある)で作業をしていた。このビルの大家さんで、祭りの時はこのあたりの氏子総代を務める佐野さんがやってくる。マルイチビルは「本町一丁目(通称(ほんいち)」という町の敷地内にあるのだが、佐野さんはほんいちの山車を保管する倉庫を自由に開け閉めできる立場の方だそうで、「野口さんきてるんだってね、山車を見せるよ」と言ってくださった。佐野さんの中学か高校の国語の先生が、なんと竹採公園の岡田さんだということがこの時判明。

吉原に帰ってきた野口さんと連絡をとり、18:30頃に佐野さんと引き合わせ、私は一旦zoom会議のためオフィスに戻る。20時過ぎに近隣のバーで2人と合流し、祭りのことなどを話す。途中、野口さんが地域に芸術家として関わることについて話している時だったか、佐野さんが「きみは、真摯な態度がいいよね!」と笑顔で言っていたのが印象的だった。

【バーでの佐野さんと野口さんのお話メモ】
・祇園太鼓には「長胴」と「小太鼓(きんだい・きんだち)」の2種類があり、叩いていくうちにどちらが主導権を握っているか分からなくなってくる。人間が蛸みこしを担いでいるのか、蛸みこしに人間が踊らされているのか分からなくなるのと似てる。
・町を超えて笛の名手に教えを乞うことがある。けっこう自由
・吉原に先祖代々いるような人ほどカジュアルで自由度高く関わっており、割合土地に新しく関わった人ほど「伝統」という言葉を用いることがある
・竹の笹がたくさん刺さった神輿は「ゆする」と表現する。実際上下に動かしており、この動作には厄除けの意味がある。
・祭りに参加する際に所属する「町」は、町の管轄にある居住地よりも学校や生業の場所ベースである
・吉原の人たちは、それぞれの尺度やモチーフの比喩で祭りを語る

バーではその後、野口さんと制作アイデアの途中経過を話した。1月16日(月)野口さん再訪・遭遇 ですでに「アジール」というキーワードが出ていたところから派生し、富士の心地よさは「無縁」状態だからなのでは、という仮説が出る。日本では江戸時代まで「無縁」という語彙は、西欧圏での「freedom(自由)」に近いニュアンスがあったらしい。

《神仙界(富士山)、俗世(竹が伸び出す地表、祭り)、そのあいだをつなぐかぐや姫》という仮説の構図ができる。3月12日の「おもしろい人に会いたい!!!2023」@グランシップでの展示プランや蛸みこし演出案についても話した。
でも野口さんの考えも、ものごとの捉え方も、形あるものも、全部どしんと質量を持ちながらもどんどん運ばれていく。蛸みこしセンターが日々変わっていくように。24時間カメラを置いてその過程を見ていたいほどのノリの良いバイブスな(野口語録)テンポ感だが、そのときどきに遭遇できるものに期待してこうと思う。

(YCCC瀧瀬 記)

【蛸みこし研究センター 吉原支部 INFO】
@ 橘香堂近藤薬局 / WORX Mt.fuji @kikkou2022
富士市吉原2-8-21-2
9-19時OPEN

開場時間中はどなたでも気軽にお立ち寄りいただけます。
野口竜平さん在所時間以外は、吉原商店街周辺及び富士市内各所でリサーチ/制作を実施しています。