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1月22日(日)街の人と出会う

この日は昼過ぎからアーツカウンシルしずおかの若菜さんが蛸みこし研究センターに来る予定。私は14時から野口くんが作業している横のあたりで、YCCCとして開催している地元アーティスト2名のポートフォリオレビュー会を実施する予定でいた。
タコセンに到着したら野口さんはいなかったが、小学生の男の子2人とお母さんがふらっと入ってきた。気になって入ってきたと言う。机に並んだ「蛸」とタイトルについた本や、風刺画、春画、挿絵などの図版、床に並べられた竹について軽く説明した。お兄ちゃんはじっとタコの絵を見て、今自分がいる場所がなんなのか理解しようとしているようだった。もう少ししたら本人が来ると思いますと伝えたが、親子は待たずにその場を去った。

しばらくすると竹を組んだ物体を引きずる野口くんと若菜さんが入ってきた。ここまでの経緯を野口くんに聞くと、こんな感じだった。

・一昨日藤枝の庭師のワークショップで試作した竹を滞在先から引きずってタコセンに向かう
・途中で若菜さんが吉原本町駅まできていることが判明し、タコセンを通り過ぎ駅まで竹と走る
・駅からちょっと歩いた先にある交差点で合流
・たこせんに向かう途中にそば屋で昼ごはんを食べる
・竹を店に入れることはできないので店の前に置いていたら、先ほどタコセンに入ってきた親子と出会う
・親子はそば屋を後にしてタコセンに向かう

というわけで、親子はもう野口くんに会っていたわけだ。

笹の向こう側に若菜さん
竹林の中で野口くんの日記を読むような展示レイアウトに
金曜日の夜に話し合った内容が清書されたドローイング

しばらく若菜さんと打ち合わせした後に居酒屋に寄り、アーツカウンシルしずおかのユニークさ、野口くんが富士に来て感じたこと、YCCCの活動の趣旨などについて話す。三者がざっくばらんと「仕事関係」を超えて話し合える状況がありがたく、仲間としてこのプロジェクトをやっていることを改めて認識できる楽しい時間だった。

なんとなくタコっぽい紅生姜のかき揚げ。吉原の居酒屋「えみや」にて

その後、若菜さんを駅へ送る途中にふたりが昼ごはんを食べたそば屋の横を通ると田村が仲間と食事をしていたので挨拶をし、若菜さんだけ帰路につき、野口くんと私は横にいた知り合いの席へ。野口くんと初対面だった知人に、「タコみこしんぶん」を渡して自分の活動、富士吉原で発見したこと、タコを中心にいろんなものごとが繋がっていく、といったことについてゆるく話し始める。

ふだん消防士として働いている彼は地元出身でアウトドアが好き、程度の情報しか知らず、特に文化芸術的な話はしたことがなかったのだが、「これ、とにかく美しいものっていうのはわかる」「知らないことがあるってワクワクするよね、人って三大欲求以外に知識欲って絶対にあると思うんだ」と目を輝かせて話し始めた。「未知との遭遇」という野口くんの活動キーワードのひとつそのものだと感じたし、やはり「芸術」という言葉を使わなくても互いの視点や表現を分かり合える時間は豊かだと、ちょっとうっとりするくらい嬉しい気持ちでそのやりとりを眺めていた。

蛸みこしを富士の山のほうで担ぎたい、という話をしたら(富士宮市にはなるが)朝霧高原をお勧めしてくれた。「星が見えすぎて目がバグる」らしい。とりあえずタイミングとバイブスで!といつもの野口語録とともに連絡先を交換してその日は別れた。

(YCCC 瀧瀬記)