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高野ゆらこ「9月4日晴れ2477文字(3日目)」

寝起きがいい。
認めたくないけど、やっぱり飲酒してないと身体はだいぶ楽だと思う。
いや、「してない」は嘘だ。
白ワインに炭酸を混ぜて、1杯だけ飲んだ。


朝イチで峰温泉の大噴湯を見に行く。


噴き上がりまであと5分。売店のおばちゃんが色々教えてくれる。
100度の源泉が噴き上がると温度が下がって雨みたいに降ってくること、1分間で600リットル噴き上がること。

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結果、びしょ濡れになる。
晴れてて良かった。風上にいくと免れるらしい。
すごくキレイなお着物を着てる方がいて、ちゃんと風上に避難していた。
足湯に入りながら服を乾かす。

谷水屋酒店へ。
旅先に酒屋があれば入る、とても自然なこと。
店先に興味深いポスター発見。旅酒…?

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もちろん購入。スタンプも押してもらった。
これからの旅の楽しみがまた一つ増えました。
「ネットで調べてみたら谷水屋っていう名前、世界でウチだけだったの」と言う社長。

「昨日イノシシのカツ揚げたんだけど、食べる?」

話の流れからそんなこんなでカツをいただく、美味しい。
知り合いが持ってきたんだよ、だから夜9時すぎから揚げたんだよ、昨日はもっと美味しかったんだよ、あそうそう、

「イノシシの肉あるけどいる?」

お酒を買いにきたらイノシシ肉もらいました。

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旅酒と、谷水屋さんオリジナルの芋焼酎を購入して、脂のしっかり乗ったイノシシ肉をお土産にいただく。
わらしべ長者ならぬ、わら持たぬ長者だ。


井原さん柴田さんが滞在しているお試し移住施設『なごみの里』へイノシシ肉を持っていく。
明日みんなでなごみの里で食事会の約束しているので、メインは決まった。
「詳しいことは後で話すけど、今イノシシの肉をもらって近くにいるから持っていってもいいですか?」
滞在3日目でこんなセリフ言うとは思わなかった。
これが脚本だとしたら、少し展開が早すぎる(し謎すぎる)とおもう。

河津観光協会で電動自転車(Eバイク)をお借りする。
ここからが今日のメイン。
河津からちょこっと出て、稲梓や蓮台寺の方をぐるりと回るのだ。
観光協会の方に「どこまでいくの?」と言われて、稲梓から蓮台寺…というと皆さん「えー!」と。

河津町は83%が山なんです、とホストの和田さんが言っていた通り、坂が多い。
平地にぎゅっと家や店が密集してあとはほぼ山。
レンタサイクルで街を走ることはあっても、山を走るのは初めて。気持ちいい。

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下田市に入る。
休憩した小さな直売所のようなお店で下田産の塩とオレンジピールを買う。
「この塩、今日入ってきたのよ!良かったわね」と店員のおばちゃん。
なんと、ラッキーですね!と返す。嬉しい。

そして大好きな『おふくろまんじゅう』へ。
河津に来たら絶対行く場所。マストです。
「おふくろまんじゅう」食べないなんてありえない。

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「お姉さんステキね〜〜〜」
あなたこそ、と言いたくなるようなファンキーなおばちゃんが話しかけてくる。
「自転車かっこいいじゃーん」
自然にまたがり始めるおばちゃん。
「ほい、これ」
いきなり草餅渡してくるおじちゃん。
あれ?さっきの売店にいた人だ!
爆笑!なんなのこの状況!

(わたしは毎日noteに日誌を書いていて、あまりにカオスな振る舞いをされると文字数いくらあっても足りないので、面白いけど面白すぎるの禁止!てこのときばかりは思いました。)

「おふくろまんじゅう」の店のすぐ横にある蔵?のような小さなお店。ここが実は今日の1番の目的。

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ここは障害を持った方が作られた作品を販売しているお店で、わたしはここで以前購入したお皿を大変気に入っているのですが…

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可愛くないですか?
ぽってりとした形に、シンプルな絵。
ただ、どうしてもわからないのが右下の絵のモチーフ。
これ、一体、なんなん…?の疑問を解消するためにここまでやってきたのです。

「はいはいいらっしゃい〜〜」
さっきのファンキーおばちゃんがついてくる。
え?こっちの店員さんだったの!!??
えーと実は、と写真を見せて説明する。
「ああこれはキクチくんの作品ね」
キクチくん!そうなんですね、これはなんなんでしょう?

「うーん、本人も覚えてないんじゃないかなあ」

それは、どうなんだ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないし、キクチくんのことはおばちゃんの方がよく知ってるかもしれないし、でも、グムム、となっていると

「キクチくん、朝5時ごろ毎日下田の海の方歩いてるわよ!」

待って待って、下田の海までわたし朝5時にキクチくんを探しに行かないといけないの!?
詰んだ、となったわたしを見かねたのか写真もっかい見せて、と言ってメモ帳に絵をトレースし始める。
「電話番号教えて?」
あえっと、090の…と答えると、

「よし!キクチくんにこれ見せて聞いてみる。わかったら連絡する!」

と力強く言ってくれた。
おばちゃんありがとう。キクチくん、覚えてくれてるといいな。

その後は蓮台寺を回って、金谷旅館で温泉入ったり、駅近くの小さな花屋さん「ART.flower shop」さんでドライフラワーを買ったり。
「横浜まできれいに持って帰れるかな…」と言ったらこれは絶対大丈夫です、東京で買ったら2,000円くらいしますよこれ、と言われて即決。600円でした。肝心の花の名前失念。
葉っぱの部分がなんとなくまだ緑っぽくて、ドライも若い時期から成長過程を楽しんだりするんですよ、と教えてもらった。
店長さん(なのかな?)、27歳、現場監督から花屋へ転身とのこと。
「自分でなんかやってみたかったんです」
そう言っていた彼は、わたしから見ると『なんかこの人と一緒にやりたくなる』感じの人だった。
自分の周りにパッと思い浮かぶ何人かがいるけど、同じような明るさがあった。

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最後は河津の海を眺めながらおふくろまんじゅうタイム。
美味〜〜〜〜〜!半日自転車漕ぎ続けて足ガクガクお尻も痛い。

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人が出会って、例え一瞬だとしても、例えその人の一面だとしても、気持ちよく過ごせる時間はやっぱりとてもいいものだと思う。
今回、意識的にたくさん笑うようにしていて、そうすると出会った方の緊張がほどけていくのがよくわかる。

今日も『笑う門には福来る』な1日でした。

明日も楽しみ。