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今日は自転車の日。ホストの荒武さんが運営するEAST DOCKで電動自転車を借りた。海沿いの二つのルートをオススメしてくれたので、黒根岬のある北方面へ向かってみた。ひたすらまっすぐだということだったのでぐんぐん進んでいたら、知らないうちに目的地を通り過ぎ、かなり遠くまで来てしまっていた。地獄のような坂を上ったり下ったりたりしながら軌道修正をしてなんとなくそれっぽいところに辿りついたので、気が済むまで海を眺めてから来た道を戻った。

お昼ご飯が食べられそうなところを探してうろついていたら、目の前の坂道が二手に分かれた。どちらに行こうか迷ってると、住民らしきお婆さんがやって来て「あなた自転車で、こんなところに。若いね。この道はどっちもつらいよ。こっちへ行ってもあっちへ行っても坂がつらい。でもどっちかっていうとこっちの方がつらくない。」と教えてくれた。
私はどっちかっていうというとつらくない方へ行こうと思ったのだが、お婆さんがそのどっちかっていうとつらくない方の道を進み始めた(しかも手を振っている)ので、なんとなく気まずくて、私はお婆さんと反対の、どっちかっていうとつらい方の道を行くことにした。
進んですぐに後悔したが、この坂の先のあたりにウニのクリームパスタが食べられるカフェがあるとグーグルマップが言っているので、頑張ることにした。

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無事おいしいパスタにありつくことができたのでよかった。臨時休業とかじゃなくてよかった。

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来た道を戻っていると、ふわふわで長い尻尾をした子猫のペアに遭遇した。
通りすがりのお婆さんと、このニ匹の猫の性格の違いについて話したり、黒い方の猫と枯れ葉で遊んだりしていたら1時間くらい経っていた。

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そういえば今日はなんだか朝から2という数字が多いなあ、二択だったり二匹だったり...とぼんやり眠くなりながら港の方へ戻っていると、東京のアートギャラリーから連絡が入って目が覚めた。作品が売れたらしい。昨日行った蛇寺の大吉さんのおかげかもしれない。

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薄々感づいてはいたがやはりこの町は猫がたくさんいる。

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みんなのんびりしている。午後はみかん狩りにでも行こうかなと思っていたがもうすでに筋肉痛なので例の本屋さんへ行くことにした。

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山田書店、今日のお店番は優しい御婦人で、店の前に停めてあるわたしの自転車を指さして「電動かしら、そう、アシストがついているなら安心だわ、よかった」と言って笑っていた。
さんざん悩んだ挙げ句、角幡唯介(新著『狩りの思考法』が素晴らしかったです)の文庫本『漂流』と、帯の文言に誘われて手に取った川上弘美の長篇小説『森へ行きましょう』を購入した。赤瀬川原平の『世の中は偶然に満ちている』や黒田泰蔵(昨日会った深澤さんの師匠)の『黒田泰蔵 白磁へ』も欲しかったが、鞄が限界だったので今日は諦めた。 ここにも1時間くらい居たのだろうか。小さいお店なのだけど、ラインナップは然り、本の配置もとても素敵で、少年少女漫画のコーナーに社会学の本とかがポンと置いてあったりして、なんだかワクワクする。私は特に本の虫というわけではないのだが、かなり長居してしまった。いいお店だ。

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その後、近くの足湯で筋肉痛の足を温めてからEAST DOCKへ戻った。
荒武さんたちが待っていてくれて、稲取が一望できる展望台へ向かった。車はすごい坂道をどんどんのぼっていく。夕焼け空の変化と街の明かりの変化の両方が楽しめるというちょうどいい時間帯にバッチリ合わせてアテンドしてくれた。

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視界の端から端まで空と海が広がっていて、色もどんどん変わっていくので、一つの風景として捉えることがぜんぜんできない。今思い出してみても、ひつとなぎだったはずの風景は映像的というよりももっと断片的に分割されて記憶されている気がする。自分の眼や脳が持っている画角の限界を思い知らされた。こういうのを毎日見ていたら、見え方や記憶のされ方も変わるんだろうか。展望台のすぐ下を二匹の鹿が駆けていった。鳥だと思っていた音は鹿の鳴声だった。頻繁に山に来るようになれば、こういう音も聴き分けられるようになるんだろうか。

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今回ホスト役を務めてくれている彼らは、大学や行政と連携して、この展望台のすぐ近くにもまた一つ拠点をつくるらしい。キャンプや焚き火なんかもできるようにしたいと言っていた。絶賛施工中の現場も少し見せてもらったが、とてもいい感じだった。子どもたちがここであそびまわる風景を想像する。幼い頃に自然の中でたくさん遊ばせてもらった記憶、森の中の朝のにおいみたいなものが突然一瞬だけ蘇った。

ちょっと指先が悴んだが、せっかくなので夕方色の採取作業も行った。山の上で触るiPadの画面はなかなか冷たかったし、ミスマッチだった。

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