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おきなお子 第3日目 地球の造形、人類の絵画と彫刻

伊豆半島3日目は、アートな旅です。
いつも作品を観るとき、できたらアーティストの創造過程、作品への動機、表現へのモチベーションを知りたいなと思います。

本日の行先、ひとつ目は『池田20世紀美術館』
ピカソ、ミロ、ダリ、シャガール、マティス、ウォーホル等、20世紀を代表する外国巨匠の作品が並ぶ見応え満点の美術館。

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ここは私立美術館。こんな作品を買い揃えられただなんて信じられない!!
所蔵は、ニチレキの創業者の池田氏とのこと。なるほど。

これまで観てきた美術展は、作家まとめが多かったので、20世紀の100年単位で、戦争があったり、キュビスムやポップアートなど美術運動があったりと、同時代作品が横並びになることで、作家の個性と共通の傾向などが観らるのが魅力でした。
戦争期は、何人もの作家の絵画に、不穏な影を落とさせていた。明るいモチーフなのに、動きが止まり、空間も暗い。白い壁に飾られているけれど、何か行き場がないような空虚感が漂っていました。
また、印象的なダリの初期の作品「ヴィーナスと水夫」この二人の人物は別の技法で描かれていて、一方のヴィーナスを見ると、ピカソの「浜辺を走る二人の女」の女を見た気がしました。
そして、次のダリの作品はもう成熟期に入ったようなキリンをモチーフにした一連の作品で、キュビスムからシュールレアリスムへ移行していますし(「キリンI〜VI」)、対してピカソは自由の向こう側にいったかのような晩年88歳の作品で(「近衛兵と鳩」)、近衛兵の口の部分には、ニコチャンマークのような笑った顔あります。何かしら?? なんでもよし。

ちなみにピカソは、わたし自身が魂をわし掴みにされた画家です。
日本で、フランスで、イタリアで、本物を見てその絵の前から動けなくなった経験が何度もあります。
一体、どんな風に描いていたのか。
そのプロセスが『ミステリアス・ピカソ』というフィルムに残っています。
(youtubeで始めの数分が公開されています↓↓↓)


この映像ですと、これで描き終わったのかな?  というところで止まりますが、確かこの後、何かに具体的にまとまろうとすると、別の想像を足し、どんどん絵が変化して、最後は塗りつぶして別の絵になるところまでいったと記憶しています。
「絵は決して完成することはない。面白そうなところで立ち止まっているだけだ」
そう語る作家がいました。
そして絵本画家の荒井良二さんの創作過程も、ピカソのようにまとまろうとすると逃げていく、そんな風でした。
確かに、作品をまとめたい、整えたい、完成させたい、と結果からのコントロールに誘惑されて、作品からの躍動や衝動を、都合悪いものと周縁化してしまうことがあります。
気をつけないと!!
わたしは、演劇化するときのプロセスが即興演劇(インプロ)ですが(わたしの劇作より先に、インプロで俳優と共同創作をします)、例えば、前のシーンとの繋がりや、ラストシーンへの流れなどに“従わせよう”として、今目の前で起きているリアルなシーンに心が閉じてしまうと、止まるべき“面白そうなところ”がキャッチできなくなります。
アートって創作している側にとっても謎が多いですが、でも、ジャンルを超えて、感動する作品から目指すべき光についての導きが得られることが多いなと思います。
その意味で、この『池田20世紀美術館』に感謝。

午後は、大室山へ。
この創り手は、地球、動力的には4000年前の火山の噴火。
まるで砂場でバケツを逆さまにして山をつくったみたいに、キレイなプリン型がぽこんと伊豆半島に乗っかっているのが、下から見ても不思議。

リフトでまっすぐ頂上部分へ上がり、噴火口跡のお鉢めぐり(1周が1キロ)は180度パノラマ眺めながら、コンクリート舗装の小道を歩いて味わえる、ちっても気軽なお散歩コースになっていて、犬連れで歩く人もいました。とても580メートルの高さにいるとは思えない楽チンなギャップに、地球サイズの山の恵みを、地元の方が丁寧に観光地にしてくれているんだな〜と感動します。杖をついたおばあちゃんも息子さんと来ていました。こんな風に登りやすくなければ、きっと来られないと思う。身近な感動って、素晴らしい。

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大室山を堪能したあとは、なぎさ公園へ。
ここは、同じエリア・同じホストさんのもう一人の旅人である新堂さんの旅の舞台です。なぎさ公園に何日も通い、ここの彫刻に魅せられ、最後は彫刻家ご本人・重岡健治氏に出会う。帰るときには流木を拾い、今度はご自身で作品にするだろう…という、その旅自体がまっすぐな一つの物語となっています。noteで読み、びっくりしました。

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海辺の彫刻は、時間や空の色によって、その存在が変わりました。
また観る角度によっても、印象が異なり、ずっとぐるぐる見ていられる。

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同じ作家のモニュメントを、この場でまとめて味わえる贅沢さ。
と、同時に、こんな素晴らしい風景の中に、彫刻を置くことができる重岡氏が、羨ましいとも思いました。

後ろを振り返ると、夕日の中に小さくぽこりと大室山が顔を出しています。
体験的にも回想的にも、有意義な1日でした。
ここ3日間、伊豆半島の旅を車で一緒に回ってくれたSさんに手を振り別れ、本日はおしまいです。また、明日。

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