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吉﨑裕哉「龍山という音楽」龍山町2日目

昨日の移動と初日のnoteをこだわりすぎてかなり夜更かしをしてしまったので今日はゆっくり起床し、ホストの鈴木のぞみさんとの約束の時間まで宿の裏山を散策する。龍山はどこもかしこも杉と檜が生い茂っており、その雄大な立ち姿には毎度心を奪われ、ただボーッと上を眺める時間が増えてしまう。

宿泊先の裏山には八朔の木が植っているだけの、まだ何もない斜面がありこれからそこに桜の木を植える予定だそうで、MAWの滞在者も1本ずつ植えさせてくださるらしい。ただこの大自然なので野生動物も多く、鹿、猪、猿、最近は熊の目撃情報もあったようで、特に鹿が桜の木を食い荒らしてしまうのがホストの鈴木さんを悩ませているらしい。
そういえば裏山でボーッとしているときに上の方でパキッと何かが枝を踏みおる音が聞こえ、今自分は自然の中に身を置いているんだと改めて感じさせられた。

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集合時間になり、今日も車で龍山の色々なところに連れていっていただく。
始めはなんと鈴木さんが所有しているという茶畑に行くことに。その前にご実家へ寄りお母様に挨拶をさせていただき、庭になっている柚子を毟り、茶畑で食べるお母様手作りのおはぎをいただきいざ茶畑へ。
普通の道の途中で止まり、何かと思っていると「あれに乗り換えます」と鈴木さん。

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なんとも言えない渋いモノラック!!(というらしい)
これに乗って急斜面を進み目的の茶畑まで行くという。
前部に座りモノラックを操縦する鈴木さんの後ろ姿のなんと勇ましいこと。(手には鎌を握りしめている)

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5分くらいのドキドキ初モノラック体験を経て、目的の茶畑に到着するとグッと標高も上がり、遠くに竜頭山を臨む。龍山町を真ん中で分つ天竜川は、この竜頭山を竜の頭部分とし尾曲や瀬尻という地区を尾と尻としていており、あまり他の地域では耳慣れない地名や頻繁に使われる竜の字の所以の一端を知れた気がした。

最高の絶景を前にして宿に生えている八朔と、お母様にいただいたおはぎを食べゆったりと最高の時間。ここら辺の土地は鈴木さんの持ち物らしく、この斜面にテラスを作りたいと語っていた、はい大賛成です!!

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↑あの握りしめていた鎌は八朔の皮むきに使われていた

ここ数日、龍山は珍しく寒く高確率で雪もチラついており日も出ていなかったのであまりの寒さに茶畑を退散することに。
斜面を降りている時にふと立ち止まり、「この雪は竜頭山の方から吹いてきた風に乗ってきてますね」と鈴木さん。竜の頭から尾の方に吹く風は冷たく吹き付けてきたが、生まれ育った土地の風を感じる鈴木さんの一言に都会暮らしの僕は少しの嫉妬と温かい憧れを抱いた。

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モノラックで斜面を降りた後も、ここら辺に群生している裏白を使い、子供の頃よく遊んでいたという遊びを教えてくださった。一つはそのまま紙飛行機のように風に乗せ飛ばし、もう一つは枝を短くし三叉のバッタのように地面から跳ばして遊ぶ。

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そこから瀬尻不動の滝に寄り、鈴木さんのお父様が設計したという橋を渡り天竜川の反対側へ渡る。「自分が作ったものがこうして世の中に残り続けるっていいですよね」という鈴木さんの言葉に自分が芸術をやっていることの根源を思い出した気がした。

今日はこれから秋葉神社へ向かう。秋葉神社は正式名称を秋葉山本宮秋葉神社と言い、全国に点在する秋葉神社の総本山であり、昨日瀬尻白山神社を案内してくださった佐奈要介さんが権禰宜を務めている。

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秋葉神社・・・東海随一の霊山との呼び声も名高い秋葉山を神体山と仰ぎ、創建は和銅2(西暦709)年とされる。中世には「秋葉大権現」と称して、その御神徳は国中に知れわたり、朝廷からは正一位の神階を賜り、著名な武将からも数多くの名刀が寄進される。更に江戸時代には全国に秋葉講が結成され、街道は参詣者で賑わい、今なお古式の祭儀がそのままに営まれ、全国津々浦々より崇敬されている。(秋葉山本宮秋葉神社HPより)

付属する施設でお食事をいただき(とても美味!!)、参拝を済ませた後、秋葉神社権禰宜である佐奈さんと再会。今日は秋葉神社についてお話をしていただいたり、秋葉神社にまつわる宝物を見せていただいた。錚々たる戦国武将達から寄進された刀の数々や、火防の神を祭る秋葉神社らしく地域から納められた纏、江戸時代に描かれた秋葉神社境内を描いた絵図など貴重な品々に、1300年以上前から続く秋葉神社総本山としての歴史を感じた。
2日連続で案内をしてくださった佐奈さん、ありがとうございました!!

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↑秋葉神社名物(?)天狗の皿投げ。500円でおみくじとお皿に願掛けを書き、山に吊るされた輪っかに願いを込めながら投げるというプチ面白体験ができます

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↑お皿に願掛けをして....

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↑投げる。木と木の間に吊るされた輪が小さく、遠く、なかなか難しい。野球部出身の僕でも輪を通すことはできず...

もうぼちぼち日も暮れてくるので宿に戻ることに。
道中は鈴木さんとお互いの仕事の話や日本における芸術のあり方と課題について話す。鈴木さんは海外でバリバリ働きながら龍山で音楽活動をしている、GLOCALを地で行く人で、ここ2日間車でお世話になっているのだが急に車を止めることが多々あった。
昨日は「クレソンが採れるから停まりまーす!」綺麗な水が流れる沢でクレソンを晩飯用に採ってくれた。
今日は「私ここの景色、天竜川に日が当たってキラキラしてるのを見るのが好きなんです。」そして「ちょっとツララ遊びして行きません?」だった。
ツララ遊びとはなんだ?さっきの裏白みたいに投げて遊ぶのかな?とか思っていると、近くの枝を拾ってツララを叩き即席ツララハープとでも言おうか、叩く箇所によって、水の含み具合によって異なる音色を叩き分け、そこにツララから滴る水の音が重なり音楽が生み出されていた。またそこに冷たい風が吹き、細い雪が降り、木の葉を踏む音々が重なり自然による音楽会が始まる。楽器を引かずともただ周りにあるものに耳を傾けるだけでそれは音楽になるということを教えてもらった。
またそこに鈴木さんが今作っている音楽の原点があるのだと感じた。

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コロナ禍で僕の考え方は大きく変わってきた。
何がどう変わったかはうまく伝えづらいが、「記憶」というものについて強く惹かれるようになった。それは「人の記憶」であったり「土地の記憶」であったりするのだが、形のある命が失われても決して失われない、失われてほしくないものがそれだと気付いた。
人はそれぞれ人の数だけ違う記憶があり歴史があり、魅力的なストーリーがある。それは土地もまた然りで、それらを芸術家として残していくことがこんな自分にできる使命なのではないかと感じ始めていた。
そして生まれ故郷の龍山を音として感じ、曲として残していく鈴木さんの姿は都会の喧騒の中に身を置いている僕にとって憧れであり希望であり、龍山という土地そのものだと思った。

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