有彩色も捨て置けず
青はこの星のいのちの色だ。それが理由なわけじゃないけど、好きな有彩色は何かと尋ねられたらわたしは「青」と答えるだろう。
空について言葉を書くとき、あの色彩のあらわし方には気を遣う。“情景” として空を活用するのであれば、空はいつでも人の心とともに在る。それを繊細にえがくためには、小学校で習う1字じゃ物足りない。
だからといって「群青」だったり「瑠璃色」だったり、ちょっと綺麗な言葉ひとつで決めてしまうのも嫌だった。もっと違った、それそのものはカラーコードで表現できない間接的な比喩が良い。
人差し指を突き上げたなら、そのまま夏色を穿てそうな青天だ。
空の色は少しずつ青の彩度を落としはじめていて、わたしたちの間に生まれた空白を埋めるには、到底密度が足らなかった。
ふと立ち止まって対照的な頭上の闇を見上げれば、わたしの中の何もかもが瞳孔から吸いとられていくような不思議な感覚に襲われる。
そうはいっても色をあらわす単語は好きで、「青」に限らず本やサイトの色彩事典はしょっちゅう見る。
全部の色を比喩で書くのはあまりにまどろっこしくなるので、特に感情をのせない色なら目視でポポンと選んでしまう。
「伝統色のいろは」にはずいぶん前からずっとお世話になってきた。さまざまな色が和名で掲載されているので、着物の色とか古風なものを書きたい場合に重宝される。
“一重梅” や “花緑青” などの定番色。“聴色(ゆるしいろ)” とか “二人静(ふたりしずか)” の語感の良さも好きである。
オーバーシーズにいきたいときは「洋色大辞典」。“ローズダスト” に “サマーシャワー” 、“ホワイトリリー” に “ローアンバー” など、並べるだけでモダンな文ができあがる。
紙媒体だと『配色アイデア手帖』が良い。デザインとはまったく無縁なくせをしながら、鑑賞用にとわざわざ買った。
この本のすごいところは各テーマごとに9つの色が選ばれていて、独自の名前とその解釈が添えてある。字書き的にはもうただの読書。
ちなみに「伝統色のいろは」では、誕生色なる「誕辰和色」を占ってくれるみたいです。
わたしは “花紺青” でした。字面の時点ですでに良くて好き。しかも青。
引用元:誕辰和色 -たんしんわいろ-
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