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はじまりのうた

 久しぶりの雨模様となった日、宇都宮ブレックスのシーズンは幕切れとなりました。

 レギュラーシーズン最高勝率、全体一位で臨んだチャンピオンシップ。その頂きへ駆け上っていくと信じていましたが、因縁の相手であり好敵手でもある千葉ジェッツとの激闘の果てに敗退することとなりました。悔しいとか悲しいとか色んな感情に襲われた後に残ったのは「今日で今シーズンが終わったんだ」という喪失感でした。
 Bリーグはシーズンオフの選手の移籍がとても活発で、たとえ前のシーズンで好成績を残してもメンバーが変わらずに次のシーズンを迎える保障はありません。優勝したシーズンの後であってもです。

 W杯で比江島さんを知り、そこから宇都宮ブレックスのファンになり、Bリーグに関する情報を頭に詰め込んでいる時に知った「シーズンオフの移籍事情」。最初は「へえ、そうなんだ」くらいの感情でしたが、ブレックスを応援しているうちに「今のブレックスを見られるのは今シーズンしかないかもしれない」ということに気づきました。今シーズンからブレックスファンになった私にとっての「宇都宮ブレックス」は23-24シーズンのメンバーです。

 #0、ブレックスの心臓で仙人の域に達しているキャプテンの田臥勇太選手。
 #4、かわいい見た目に反して骨太精神全開な四家魁人選手。
 #6、誰もが認めるブレックスの大エースでありながらほわほわしているスーパー人見知りな比江島慎選手。
 #7、そんな比江島選手への憧れを全く隠さずブレックスに加入してきた大型PGの小川敦也選手。
 #9、ブレックスのディフェンス魂を体現するオシャレ番長の遠藤祐亮選手。
 #10、ゴール下を賢く守り日本人ビッグマンの存在意義をリーグ全体に再確認させた竹内公輔選手。
 #12、ルーキーとは思えない太々しさとディフェンス力を見せつけた高島紳司選手。
 #13、ここぞという時にスリーポイントを決めてくれるバイスキャプテンで太陽のような渡邉裕規選手。
 #14、超絶マジメで超絶良い子なんだろうなとわかる努力家の村岸航選手。
 #18、バスケIQの高さと外国籍選手にも当たり負けない体の強さが魅力の鵤誠司選手。
 #25、お茶目な神でありチームの闘争心を掻き立てるもう一人のエースD.J・ニュービル選手。
 #33、走れるビッグマンで若手選手と比江島さんの保護者を担っているギャビン・エドワーズ選手。
 #34、チームに勢いをもたらす豪快なダンクと紳士な立ち振る舞いでファンをメロメロにするグラント・ジェレット選手。
 #42、チームのためにゴール下で体を張り続けフワフワおだんごを結わせたらリーグNo.1なアイザック・フォトゥ選手。
 いつも熱くベンチで指示を出し(厳つい見た目と裏腹に)穏やかな性格の選手達に代わって吠えてくれる佐々宣央HC。
 そして、ブレックスを支える多くのコーチ陣やスタッフ。
 そんな今シーズンのメンバーが、私が最初に知った「宇都宮ブレックス」なのです。叶うなら来シーズンも同じメンバーで、今年の忘れ物を奪いにいってほしいのですが、それは難しいともわかっています。
 W杯後の特番で、JBAの三屋裕子会長は「組織は入れ替わって強くなっていく」と話しました。その通りですよね。そうじゃなければ、組織の成長は止まってしまうと思います。それを十分わかったうえで、来シーズンも同じメンバーのブレックスが見たいと願ってしまうくらい、私にとって今シーズンのブレックスのメンバーは特別でした。
 そうか、だから、私はチャンピオンシップで敗退したあの日、あんなにも悔しかったんだな。負けたら、もうこのメンバーで戦う姿が見られないと頭のどこかでわかっていたからこそ、このメンバーで戦う試合を一試合でも多く見ていたかったんだな..。そう気づきました。

 5月17日、ブレックスの自由交渉リストへの公示一人が発表になりました。この後も契約継続か終了か続々と発表になっていくのでしょう。その度に嬉しさと寂しさを感じながら「24-25シーズンの宇都宮ブレックス」というチームへの愛情を育てていくのかな。こういう思いを毎年経験して、それでもチームを、選手を応援しているブレックスネーションの皆さんは本当に強くて素敵な集まりです。そして、ブレックスメンタリティを受け継いだ新しい宇都宮ブレックスというチームは地域とファンとともに、また来シーズンも頂きを目指して戦いに挑んでいくのだと思います。

 私が好きな歌の一つに「はじまりのうた」という歌があります。この歌は「はじまり」を歌っていながらも「生き急がなくていい」とか「ため息ついてもいいんじゃない?」とか「悩んで凹んで何かと大変なんだよね」とネガティブな部分にも寄り添ってくれて、最後にこう締めくくります。

 明日が今日よりも
 ちょっとだけHappyになれたらいいよね

 明日を来シーズン、今日を今シーズンとするならば、苦しい時があってもそこにはなにか意味があるはずだから、それを越えて来シーズンは今シーズンよりもHappyな結末を迎えよう!
 今、そう思っています。あの雨の日から数日経ち、チームからの寂しい発表を見て、不思議なことにようやく気持ちを完全に切り替えることができました。チームはもう顔を上げて走り始めているからです。
 
 選手との契約終了のお知らせが寂しくないと言ったら嘘になりますが、それでも、声高らかに「はじまり」を歌い出した宇都宮ブレックスをこれからも応援したい、来シーズンが待ち遠しい、そう思える五月晴れの日です。

#宇都宮ブレックス

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