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ミスタードーナツのある日

突然だが、私はオールドファッションが好きだ。

…一体何を言い出すんだと思われる方もいるだろう。オールドファッションが好きだと突然宣言するのは私を除いて、人質を解放する代わりにオールドファッションを要求するカスのバスジャックくらいしかいないだろう。そんなカスのバスジャックが現れたらダスキンの株価は下がるかもしれない。
火曜日のことである。私はある用事で外に出かけていた。帰り際に、ふと私は「オールドファッションが食べたい」ことに気づいた。
その時私はあるショッピングモールにいた。幸いなことにこのショッピングモールにはミスタードーナツが入っている。いや、このショッピングモールにミスタードーナツが入ってるから、オールドファッションが食べたくなったのかもしれない。卵が先か、鶏が先か。
そうと決まれば善は急げである。私の足は自然とミスタードーナツへと向かっていた。
ミスタードーナツには高校生らしき男女の客がいた。「何食べたい?」などと抜かしている。俺が食べたいのはオールドファッションじゃい!はやる気持ちを抑えながら、私はオールドファッションを探し…探して、ん?
オールドファッション、ないじゃん。
まって?そんなことある?
オールドファッション、ないじゃん。
無かった…そこに私の愛すべき、サクサク食感のオールドファッションは無かったのである。横では男女がトレーにドーナツを取り始めている。私は愕然している。向こうが天まで昇りそうなら、こっちは地の果てまで走れそうだ。ちなみにこの場合の地は、地獄の地である。
陳列棚をよく見ると、そこには「抹茶がけオールドファッション」みたいな期間限定商品があった。違うんだ、その、抹茶をかける前の奴があるだろう。それをよこせ。私は激怒した。
一度発生したオールドファッション欲が冷めることはない。オールドファッション好きのカスバスジャックならわかると思うが、私はとにかくその溜飲を下げることに必死であった。
仕方ない、何か別のドーナツでも買おう。私の目に止まったのはエンゼルフレンチであった。
エンゼルフレンチ、なくはない。むしろアリ。オールドファッションが一軍だとしたら二軍には収まる。可もなく不可もない優等生。私にとってのエンゼルフレンチはそんなイメージであった。
私はエンゼルフレンチを一つトレーに取り、レジまで持っていった。
昔のミスドのCMで「この笑顔、100円」なんてフレーズがあったが、このエンゼルフレンチは私を笑顔にするためのものではない。私の溜飲を下げるためのものでしか無かった。というか151円だったし。140円+消費税11円。
え?151円?

なんかエンゼルフレンチ、割高らしい。

なんかもう色々嫌になってきた。でも、エンゼルフレンチは手に入れられた。さぁ、貪り食うぞ。

可もなく不可もなくな味でした。エンゼルフレンチ。普通にうまい。
でもやっぱりオールドファッションが食べたかった。

たまにはエンゼルフレンチを食べる日があってもいい。

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