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Coyote Milk Storeというバンドの話

 日本のロック界の片隅にCoyote Milk Storeというバンドがいる。片隅というのはあくまで現状をそのまま言い表しているだけで、悪い意味ではなく僕自身快進撃が始まるのを待っている。

 このバンドに関しては結成当時から知っている。というのも、フロントマンであるギターボーカルのshion氏とドラマーのkousuke氏が、このバンドの結成前に活動していたpsysalia psysalis psyche(サイサリアサイサリスサイケ)というバンドが大好きだったからだ。しかし、このバンドは「#7」という大傑作アルバムを完成させたリリースツアーの最終公演で突然解散してしまった。才能と可能性が詰め込まれた大傑作だったが、そんな作品を完成させた反動だったのだろうか。解散後、メンバーが散り散りになっていく中、ギターボーカルを担っていたshion氏が中心となって結成されたのがこのCoyote Milk Storeというバンドだった。ベースのHALUNA氏もスコット&リバースをはじめとする彼女が参加するバンドのライブを見たことがあり、関係性を全く知らない身からすると、このメンバーが繋がっていることが面白かった。因みにCoyote Milk Storeというバンド名の由来は知らないが、psysalia psysalis psyche時代にシングル「THE UNITED STATES OF PSYSALIA」という作品のカップリングで「in the Airplane Over the Sea」という楽曲のカバーを収録しており、この楽曲のバンドNeutral Milk Hotelを彷彿とさせる。

 さて、そうして結成のアナウンスはあったものの、その後しばらくは音源のリリースは無かった。配信でセルフタイトルの1st EPのリリースが決まり、トレイラーが公開された時は待ちわびていたのでとても嬉しかったのを覚えている。

 ファズのギターと縦ノリのサウンド、shion氏のボーカルのかっこよさが弾けるサビが印象的な1曲目「ghost ship」から印象的だったし、ラストを飾るキャッチーな歌モノでありながら早くも彼らのバンドサウンドが確立されている「Aoite」も本当に良い曲だ。このEP時代は4ピースバンドで、今はもう脱退してしまった元Veni Vidi Viciousの入江氏が参加しており、彼のギターサウンドが色濃く入り込んでいる作品になっている。このEPはサブスクリプションでは配信されておらず、良い作品だけに広く聴いてもらえないのが残念でならない。

 そこからまた彼らの活動はライブこそあれど、リリースはパタリと止まる。EP発売から約3年経って、ついにFull Album「GAZE in a DAZE」リリースが通知された。因みにここまでにギターの入江氏の脱退の正式アナウンスはなく、リリースされるまで当然4人の作品だと思っていた。

 アルバムの1曲目を飾るのはオーバードライブなリフが印象的なキラーチューン「EVIL LUCK」。続く2曲目もまたリフが印象的なキラーチューンと言わざるをえない「RISE ABOVE」。グランジロック全開な曲にはshion氏のボーカルはバッチリとハマる。かっこいい。

 グランジロック全開で一貫した世界観で進みながらも、ストリングスがはいるエモーショナルな楽曲のグラーデーションもあるアルバムだ。EPの歌モノよりの邦楽ロックな雰囲気からガラリと印象が変わってしまい、少し寂しい気もしていたが、インタビューを見てみるとまさに同じ話をしてくれていた。読んで納得、あえて一貫した世界観を出すためにメロディアスの無い作品にしたとのことだし、今作以降にまたメロディアスな楽曲も発表される可能性も言及している。EPに関しては入江氏の功績も多かった様に聞こえるが、本アルバムを聴くとソングライターのshion氏のメロディセンスが放つ光は感じるし、今後の楽曲にも期待が抑えられない。とはいっても、EPから3年でalbumがリリースされ、そのalbumからも既に3年経ってしまっている。現状は未だに次回作のアナウンスは無いが、もうそろそろリリースされてもいい頃では無いかと思いつつ気長に待とうと思う。

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