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早飯早グソは三文の得

ちょっと品のないタイトルで昼時から申し訳ない。しかしこれは今回の話の根幹にまつわる単語なのでどうしても使わざるをえなかった。ご容赦いただきたい。

筆者がシリコンバレーで働いてた頃、日本側がBoxを入れたいというのでBox社との打ち合わせに参加していた。その時、「せっかくシリコンバレーに住んでるなら一度本社に来なよ」とお誘いをいただいたので、お言葉に甘えてひょこひょこと見物に出かけた。完全なおのぼりさんムーブである。

わざわざガイドの人がついて、色々と社内を見せてもらった。当時撮った写真をいくつか発掘したのでご紹介したい。

ビールサーバー

会社でアルコールを提供しているのかと驚くかもしれないが、実は米国では業中にアルコールを飲む人が一定数いる(もちろん通勤で運転をする人は飲まない)。個室を持っている人は自分で酒瓶を持ち込んでいることもある。テレワークが進んで一層その傾向には拍車がかかっているのではないかと思う。

休憩スペース

南国のビーチを意識したという休憩スペース。ツアーの最中にもここでゴロゴロしている社員が結構いた。アメリカ人は机に向かって仕事をするのが嫌いな人は多く、こういうチェアや地べたに座ってPCカタカタ捜査している人も少なくない。

瞑想部屋

西海岸は60年代のヒッピームーブメントのころに東洋的なものにかぶれた伝統があり、瞑想とかヨガとか禅とかが大好きである。ジョブズもそうだったのは有名な話だし、Oracleのエリソンも日本文化が好きだと広言している。たぶんそんなに思想的に深く追求するつもりはないのだが、まあこういうのがクールに見えるのだ。ただツアーガイドの人は「ぶっちゃけ昼寝部屋になっている」と笑っていた。

しかし筆者が最も感心したのは、こういういろいろな趣向を凝らした施設ではなく、玄関にさりげなく掲げてあるモットーだった。

GSDってなんだ?

「リスクを取れ、速く失敗しろ」までは分かる。最後のGSDは何の略だろう? これは「Get Shit Done」というスラングである。「さっさとクソを終わらせろ」ということで、転じて早く仕事を片付けてしまえ、という意味で使われる。なぜこの標語が玄関に掲示されているのか

シリコンバレーのスタートアップは、そもそも成功率が低いことをやろうとしている。それはもうみんな分かっている。成功率を上げる方法が分かれば苦労はないのだが、そのような体系的な方法論は見つかっていない。そこで彼らが考えたのが、試行回数を増やすことである。よく野球に例えて打席数を増やすとも言う。何回三振してもいい、一発でもホームランが出ればそれで勝ちなのだ。そういうゲームを彼らはしている。そのためには、速く失敗して、ダメならすぐに次のチャンスに行けるようにしなければならない。ダラダラいつまでも続けるのが一番悪い。

これは、減点法式では人を評価しないという文化とセットになっている。もし減点法式で人を評価していたらシリコンバレーからは早晩誰もいなくなってしまう。失敗したということは、うまく行かない方法を一つ発見したということなのだ。その経験は次に活かせばよい。実際、最初のチャレンジでは一敗地にまみれても、二度目三度目のチャンスで成功する人も多い。言い換えると、シリコンバレーの世界は多産多死のエコシステムなのである。一発必中を狙う必要はない。好きなだけ三振をしていい。その代わり失敗から学ぶ自分に厳しい姿勢が求められる。

GSDは、そんなシリコンバレーの矜持ともとれるスローガンなのだ。

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