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ホームベーカリーが三日で壊れたので無理矢理パンを作ってみた話

タイトル通りである。

もともと、「家でパン焼いて弁当にできたらいいな〜」ぐらいの淡い思いで、それならばととりあえずメルカリで中古品のホームベーカリーを探すことにした。

私は単純なので機械を探しているうちにどんどんそれが欲しくなった。同居の彼にも相談したところ二つ返事で「いいんじゃない?」と言われた。

よくよく考えたら私よりも一つに凝ると長い彼のことなので、彼も、私もパン作りという新たな趣味の幅が広がるきっかけになれば、と思ったのが、購入までの経緯である。

そんなこんなで半ば勢いでホームベーカリーを
メルカリでちょうどいい機種、ちょうどいい値段で購入したつもりだった。「通電、動作確認済み」の表記も読んでいたし、2回目までは問題なく食パンが綺麗に焼けた。
美味しかったし、焼き立てが食べられるし、捏ねている様子や発酵してふくふく膨らんでいく様子も見られて「これはいい買い物をした!」と私も彼も大変喜んでいた。

が、悲劇は3回目のパン作りで訪れる。

今日は仕事も早く終わったし、生地だけコースにしてウインナーでも挟んじゃおうかな?!と意気揚々とレシピ通りに粉やら水やらをパンケースにぶち込み、本体にセット。

スタートボタンを押して、しばらく小窓から中を覗いてみる。


…おかしい。
中で混ぜるための羽根が動いていない。

しっかりはまっていなかったか?と思い
パンケースに指を突っ込み調整を図る。
何度かやってみても、様子は変わらない。

パンケースを外してみると、そもそもその下の
軸?のような部分すら回っていなかった。

故障を疑い始める。


メーカーのざっくりとした修理費を調べてみる。
5000円程度。そしたら購入代と合わせても
新品買えたじゃ〜〜〜んとひっくり返る。

「ホームベーカリー 羽根 回らない」で検索。
同じ機種を自分の手で修理している人がいた!
どうやらモーター部分にあるベルトの部分が
経年劣化してしまったがために起きたことらしい。

一度コンセントを抜き、ホームベーカリーを置いていた台から
移動させようと持ち上げた。


バラバラバラッと音がした。


ホームベーカリーが元あった場所を見てみると、
切り昆布をもっと細切れにしたような見た目の
ゴムのクズのようなものが大量に落ちていた。


完全にこれじゃ〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

絶対故障じゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。


その修理した人とまさしく同じ現象だった。
本体底のシールをみると、製造年は2011年。
そら10年も経ってりゃゴム劣化もするわ。

自力でバラせるものか?と思ってとりあえず
プラスドライバーを手にネジを緩めてみようとする。
しかし、あまりに貧弱すぎて自分の力では一本しか
外すことができなかった。


こんなもの(と言ってしまったら物にも失礼だが)に
それなりにもお金をかけてしまったことと、
一回分の材料と、この時間が無駄になってしまったこと、
自分の貧弱さがどうにも悔しく少し涙が出た。

出先だった彼にはもちろん連絡していたが、
たまらず電話をした。
「バラしてみようと思ったけど私じゃあかない」
そんなことを言うためだけに電話をしたのか。
まじでめんどくせえ女である。


どうにもならず途方に暮れた。
まだ自分の夕飯も作ってないのにどうすんだこれ。


ふと、機械いじりの好きな父の存在を思い出す。
いろんなものを分解しては直し、分解しては壊しをした(はずの)父なら何かヒントを与えてくれるかもしれない。

とりあえず電話をしてみた。
写真を見てもらったら、なんとなくここがこういう風に
パーツがはまってるんだろうとやはり多少なりとも
ヒントを与えてくれた。助かる。

電話の奥から母が「何が壊れたって?」と言ってるのが聞こえたので、代わってもらって事の経緯を話した。

「まあ、今回はたっかいパン買ったと思って、続けたいなら新品でもう少しいいの買ってみたら?」と言われた。ごもっともである。

「とりあえず今回無駄になっちゃいそうな材料は、適当に捏ねて発行させて焼いちゃえばいいじゃん。食べれるもんはできると思うよ。」と、母。
パンケースの中身の処理が憂鬱ということしか頭になかった私だったので、その発想に驚かされた。

とりあえず適当に発酵できればなんとかなるだろうとのこと。
勿体無いので、どうやって発酵させるのかとりあえず調べてみた。
室温でも発酵させられないことはないが、冬の気温では厳しいらしい。
エアコンをつけてもたかがしれているし、湯煎に置いておくのも手間である。


そこで、ホットカーペットの上に置いてみることにした。

そのまま置いておいても下側しか温まらんか…と思い、
ブランケットを上から被せてそのまま置いてみる。
その間に自分の夕飯を作った。

なんか膨らんでんじゃん。

温度がある程度ちょうどよかったらしい。
フィンガーテストなるものをしてみたら、
発酵具合も案外良さそうだ。

均一に作るとこなどこの際どうでも良いので、
とりあえずちぎって丸めて成形してみる。
大きさがかなり不揃いだが、急拵えなのでまあ良しとする。

この後二次発酵なるものをさせるらしい。
クッキングシートをひいた天板の上に並べ、
ラップをかけてまたブランケットをかけてホットカーペットの上へ。
放っておく間にシャワーを浴びた。


めっちゃ膨らんでんじゃん。

良さそうだ。なんかよくわかんないけど、
とりあえず食えるもんは作れる兆しがある。

気持ち程度に上に卵黄を塗りつけて照りを出し、
180℃に予熱したオーブンの中へ。
どんな焼き上がりになるだろう。
ちょっと楽しみになった。


ホームベーカリーがあれば全自動で焼けるから最高だけど、
こうして全部手で作ることだってできるんだもんなあと、
初歩的なことを思い出す。
家にパンのいい匂いが広がるのも幸せだし、
焼き立てが食べられる喜びは何物にも変え難いし、
明日とりあえずダメ元で修理をしてみて、
ダメなら新しいちゃんとしたものを購入してもいいかもしれない。

そんなことをぼんやり思い、夕飯を食べながら焼き上がりを待つ。


チーン!とオーブンの甲高い音が響いた。

恐る恐る開けると…




できた!


なんかちぎりパンみたい!
たまごと小麦のいい匂いがする。
見た目はかなり不揃いだしめちゃめちゃだけど、
なんかめちゃめちゃ美味しそうな匂いはする。

せっかくなので焼き立てを食べてみる。
意外にもふっくらふわふわとして美味しい。
たまごの香りもするし、凡人にはそこそこ美味しいパンに焼けた。

こういうのも案外悪くないぞ、と思い直す。
「楽しんで。」と先程のLINEで最後に一言添えてくれた父を思い出す。アクシデントありきだったけど、けっこう楽しいよ。

それにしてもパンを作るというのは新たな趣味になりそうなので、本格的に新品のホームベーカリーを買うことを検討したい。
自分の手で捏ねて作るのも良いけど、
やはり手は汚れず作れた方が、いいよな〜と思うのであった。

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