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産業廃棄物を適正に処理していますか? 法律を知らないで処理するととんでもないことが起こります。

産業廃棄物は、処理の仕方を誤ると、企業にとって非常に大きな損害となります。

罰金だけではなく、担当取締役が懲役に及んだり、さらには、不法投棄の原状回復のために多額の費用の支払いを命じられたり、企業名を公表されたりする場合もあります。

産業廃棄物の処理は、誤ると企業の名前にも傷が付くことにもなるため、担当者だけでなく、組織的に産業廃棄物の理解をし、適正処理ができる仕組みを作る必要があります。

本投稿だけでは、産業廃棄物の処理について、語り切れないので、今回は導入部分のお話をさせて頂きます。


1.廃棄物処理法を知っていますか

産業廃棄物の処理は、廃棄物処理法に則って行わなければなりません。

この廃棄物処理法の正式名称は「廃棄物の処理および清掃に関する法律」です(以下、廃掃法)。

廃掃法は、もともと公害対策法令のひとつとして制定されましたが、現在は廃棄物を適正処理するとともに資源の有効利用推進の役割もあります。

廃掃法の目的は、以下の3つです。

❶生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全および公衆衛生の向上を図ること
❷廃棄物の排出を抑制すること
❸廃棄物の適正な「分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」の処理をすること

❶がもともとの目的でしたが、1991年の法改正時に「持続可能は発展」に向けた措置の一環として、❷の「排出の抑制」と❸の「再生」が目的に加えられたようです。

食品リサイクル法もそうですが、最近のゴミ処理の考え方は、まず「ゴミは極力減らす(Reduce)」、もしくは「再利用する(Reuse)」、万が一出ても「リサイクルする(Recycle)」という3Rの流れです。


2.廃掃法の原則:排出事業者責任

廃掃法では、「産業廃棄物は、排出事業者が自ら処理しなければならない」ということを原則として明記しています。

例外として産業廃棄物の処理を他社に委託することも認めていますが、実際は、ほとんどの企業(排出事業者)は、委託しています。

本来ならば、企業(排出事業者)自身が法令に則って処理すべきものなので、委託する場合についても、廃掃法では、最終処分を見届ける仕組みを持っています。

ですから、廃掃法は、委託した場合でも、自ら処理した時と同様に「いつ処理したか」「どのように処理したか」「最終処分を完了したか」ということを見届ける必要があります。

具体的には、下図に示すように、

【契約締結】
廃棄物処理業者に関しては(中間)処理業者と収集運搬業者のそれぞれと処理を委託する前に契約を結ばなければなりません。

契約を締結する際は、業者が「都道府県知事や政令市の許可を得ているか」、廃棄対象品目、処理方法・能力を確認しておかなければなりません。


【マニフェストによる確認】
廃棄物を委託する度にマニフェストを交付するとともに、業者から運搬・中間処理・最終処分終了の報告を受けることで、最終処分終了の確認をしなければいけません。

これら一連のオペレーションは、非常に複雑なので、廃棄物を委託する企業(排出事業者)は、担当者を置き、対応できるように教育しなければいけません。

ここは、本当にきっちり対応しないと、法令違反になる可能性があります。


3.廃掃法違反の罰則(排出事業者の場合)

先程の目的のところでお話ししましたが、廃掃法は、
『❸廃棄物の適正な「分別、保管、収集、運搬、再生、処分等」の処理をすること』を目的としている
ため、以下のような罰則が設けられています。

【不法投棄をした場合】
5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金
(法人に対しては最大3億円の罰金が課されます)

【許可のない処理業者に委託した場合】
5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金

【契約書を締結せずに委託した場合】
3年以下の懲役または300万円以下の罰金

【マニフェストを交付せず委託した場合】
1年以下の懲役または100万円以下の罰金

不法投棄の場合は、これ以外にも現状回復のための費用が請求される場合があります。

また、自社が不法投棄していなくても、委託した業者との契約に不備があったり、マニフェストをルール通り発行していなかったりしていた場合、原状回復費用の一部支払いを要求される場合もあります。


4.まとめ

まとめでお話ししたいのは、産業廃棄物(企業が排出するゴミ)を処理する場合は、社内で廃掃法を理解している担当者と相談した上で、対応しましょうということです。

なぜならば、法令が非常に複雑なため、法令を理解していない者が対応すると、法令違反になっている可能性が極めて高いからです。

そして、法令違反の状態のまま、廃棄を委託した処理業者が不法投棄で捕まったりすると、会社の名前が公表されたり、原状回復費を支払わなければならなくなったりします。

本投稿では、廃掃法のほんのさわりだけご紹介しましたが、企業が対応を誤ると、とんでもないことになるだろうことを理解して頂けましたでしょうか。

私も前職の時は、ISO14001の事務局として、本社や営業メンバーが最も気を付けなければならない法令として廃掃法を上げ、部門長やマネージャー、担当者に徹底的に教育を行いました。

特に、自社が出した廃棄物は、自社で処分するか業者に委託して処理してもらわなければならないということを徹底的に教宣しました。

例えば、委託工場にある自社所有の原材料がいらなくなり廃棄する場合、その委託工場に依頼して廃棄してもらってはいけません。廃掃法違反になります。

これは、原材料として自社が引き取り、自社で委託した収集運搬業者と処理業者で処理する必要があります。

このように、廃掃法を知らないと、担当者が自社の廃棄物を外部の業者に任せて捨ててしまうというケースが数多く出て来る可能性があります。


今後の投稿では、この非常に複雑で分かりにくい廃掃法について、少しづつ実例を交えて解説していきたいと考えています。



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