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「機会」の平等と「結果」の平等に思う

 衆議院議員選挙が近づいてきました。テレビやインターネットでは、各党の党首が政策論争をしていて、マスコミ各社による事前予想によれば、多くの小選挙区で自民党の候補者が苦戦を強いられるとのこと。自民党の党首が岸田さんに決まったとき、その不透明な選び方に不満を持った市民が多かったと思います。私も残念な気持ちになった一人です。

 ずっと自民党の候補者に投票してきた私自身、今回の衆議院議員選挙では、他党の候補者に投票するつもりですから、全国的に“荒れそうな”選挙になることは予想できます。

 ただ、これが米国と大きく異なるのですが、日本は二大政党制にほど遠い状況です。ですから私も、どの党の候補者に投票すればいいのか、非常に悩ましい問題を抱えているんです。ほとんどの野党は左翼的な思想をもっているように見えるため、日本維新の会くらいしか、投票する先がないことは国民にとって不幸だと思います。

 それはそうと、各政党の政策に大きな違いがないように感じるのは、私だけではないでしょう。ある官僚が「バラマキ合戦だ」と非難したようですが、うなづける点も多いです。
 たしかに、生活保護とか福祉という観点での弱者を助けるという考えは、間違っていないとは思います。しかし、誰をもって「弱者」とするかは、政府が完全に判断・把握することができないと思うんです。

 例えば、母子家庭を弱者とする考えがあります。
 ところが、同じ母子家庭であっても、資産家の親元に同居する親子と、財産もなく離婚した元亭主から養育費も払ってもらえない親子では、必ずしも同じ扱いはできないはずです。

 あるいは、世帯年収1,000万円の家庭でも、すべてが強者かというわけではありません。
 たしかに、親からの援助を得て、何不自由なくタワーマンションを購入できる富裕層はいるかも知れません。しかし一方で、財産も身寄りもない地方に住む親が認知症になり、介護費用に四苦八苦している方。あるいは難病の妻を抱え、生活費が足りずに借金をしている方もいるはずですが、これらを強者として扱えるものでしょうか。

 各政党の主張を聞いていると、ほとんどが「結果」の平等を求めているように見えます。しかし、先に話したように、「一見、立場が弱く見える弱者」だけを救済すると、むしろ不公平な政策になってしまいます。いま、日本に足りないのは「機会」の平等だと思うんです。その理由を述べましょう。

 以前、高卒者を新卒で採用しようと考えたことがあります。こんな記事を読んだことがきっかけでした。

いまや、日本では、奨学金をもらってでも、大学に進学したいという学生ばかり。ところが、大学に進学しても、勉強もせず、なんとなく就活して、なんとなく社会人になる若者が多い。
一方、貧困が問題になっているように、片親など家庭の問題で、成績もよく頭脳明晰であるにもかかわらず、大学に進学できない子どもがいっぱいいる。だから、中小企業は大卒ではなく、高卒を採用すべきだ。

 こんな主張でしたが、思わず「これだ!」と思い、さっそく高校生の新卒採用を検討し始めました。インターネットで調べ、ハローワークにも相談に行きました。ところが、その結果は……

 専門学校や大学を卒業した学生は、通常、リクナビやマイナビなど就活サイトにエントリーし、複数の会社説明会へ行き、複数の企業を検討して入社試験や面接に臨みます。
 ところが高校生の場合、基本的には学校の就職課を通して就活をしなければなりません。学校へ寄せられた求人情報から、先生と相談して、はじめて企業との接点ができるというのです。初めて知りました。

 これでは、本人にとっては、自分の将来を左右する大事な就職先にもかかわらず、仕事や企業の将来性で比較検討ができません。同じく、企業にとっても複数の高校生の面接をして採用したい人材を検討することができず、採用リスクが高まります。これは、非常に「狭い視点」でのマッチングになります。こんな理由から、私は高卒採用を見送ることにしました。

 おそらく、管轄の省庁としては、「高校生はまだ子どもだし、自分で判断はできないはずだ。しかも、公序良俗に反した企業に、自由に高卒採用をさせるわけにはいかない。ましてや、何かトラブルが起きたら、自分の責任になるじゃないか。そんなことはできない」ということでしょう。

 しかし、今のままでは、母子家庭などを理由に、地元の工場や飲食店からの求人しか当てにできない高卒者は、ほとんど就職先の選択肢がありません。特に、考える仕事に向く人は、収入を高めるチャンスを得られないため、結果として「貧困の連鎖」が続いてしまいます。

 バラマキは、短絡的で浅薄な考え方だと思います。中長期的に考えると、抜本的な解決策にはなってなくて、いずれはまた、貧困がやって来ます。そのとき、再びバラマキをするのでしょうか。

 本当に国民の未来を考える政治家であれば、「結果」の平等ではなく、「機会」の平等を生み出す政策を考えてもらいたい。
 前途ある若者には、貧しい環境から脱出できるきっかけになるし、ガッツがあり優秀な人材を採用したい中小企業にも、こんな求人ニーズがあることを理解してもらいたいと思います。

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