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『らあらあらあ』より 表題作のご紹介

新刊『らあらあらあ 雲の教室』は、『イーム ・ノームと森の仲間たち』から数えて7冊目の岩田道夫さんの本になります。是非、岩田道夫さんの世界にたくさんの方に触れていただきたく、表題作のみ公開することに致しました。短いお話ですが傑作です。是非ご一読ください。好評発売中、ご注文絶賛受付中です。

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らあらあらあ

給食のおばさんは
フンフンフン
と、鼻唄を歌いながら
トントントン
と、だいこんを輪切りにしました。
こつこつこつ
と、給食のおばさんは靴も鳴らしました。
ふつふつふつ
と、おなべは煮えました。
だあだあだあ
と、給食係の生徒がやって来て
カチカチカチ
と、みんなのスプーンやらお皿やら、シチューの大きなバケツやらを持って行きました。
カラカラカラ
と、戸を開けると、お腹の空いたみんなは
らあらあらあ
と、笑いながら、めいめいの皿に
とふとふとふ
と、だいこんやら、にんじんやら、じゃがいもやらを
入れてもらい
あふあふあふ
と、息をふきながら食べました。
すると、知らず知らず、みんなのつま先は
こつこつこつ
と、床を鳴らし始めるのでした。
手に持ったスプーンは
たくたくたく
と、机を鳴らし、みんなの口は
あわあわあわ
と笑い出し、あちらでも、こちらでも
てったてったてった
足を上げ、手を打ち鳴らし
先生までも踊り出すのでした。
てったてったてった かっこかっこかっこ
だれも止まることも、止めることも出来ません。
かっこかっこかっこ はっしはっしはっし
生徒も先生も校長先生も用務のおじさんも
スプーンもフォークもナベもしゃくしも
ほうきもモップもバケツもチリトリもハタキも
黒板消しも机も椅子も鉛筆も
かっこかっこかっこ はっしはっしはっし
みんなで踊り続けるのでした、いつまでも、
いつまでも、床が抜けるくらいに。
くたびれて、みんな居眠りしても
かっこかっこかっこ はっしはっしはっし
だれも踊りを止められません。
と、その時
給食室で
給食のおばさんが
ふと
鼻唄を止めました。
とたんに ぱったり。
学校中が
しいん
となりました。
そして、すぐに
リリリリリーン
午後の授業の始まりです。
みんな、はっと目を覚まし、あわてて席につき
先生も、あわてて教科書を持って授業に向かいました。
だあれも、あんなに床が抜ける程踊っていたことなど、
ちっとも覚えていません。
いつものように
午後の授業が始まります。
でも、先生も生徒も
あふあふあふ
と、あくびばかりして
今日は何だってこんなにくたびれたのだろう
と思いながら、残りの授業をしていました。

(岩田道夫『らあらあらあ 雲の教室』192頁/本体2000円)より

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