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中国、滅びゆく客家土楼

貯まったマイルで初めて中国を訪れ、友人の暮らす廈門で遊んだ後、せっかくなので、客家土楼を見に行った。

客家土楼には、ちょっとした縁がある。

知人の写真家・中村治さんが、以前、客家土楼の写真展を開いた時にダイレクトメールやチラシに載せるちょっとした文言を頼まれて書いた。

故郷を失うことは、自分を失うことなのだろうか。 中国南東の山間部に異様な建物が点在するエリアがある。外界を拒絶するようにそびえる土壁。 一歩足を踏み入れれば、100 部屋はあろうかというほどの猥雑な集合住宅があらわれる。黄河中下流域から戦乱を逃れてきた「客家人」たちのこの住処は、客家土楼と呼ばれ、世界遺産にも登録される歴史的建造物だ。1700 年もの歴史を刻むこの建築群には、老人の姿が目立つ。中国の発展は人里はなれたこの山間にとっても他人事ではない。都市部へと出稼ぎに行き、都会の生活に浸った若者たちは、もう客家土楼に戻ってこない。主をなくした住処は中国の成長と反比例するように急速に荒廃しはじめている。 経済の発展には、時に様々な犠牲を伴う。しかし、歴史が年輪に刻まれるように、受け継がれなければならないものもあるはずだ。それこそが、今の自分自身を形づくるものなのだから。

写真展の開催直前に東日本大震災が起きて、肝心の写真展を観ることはできなかったのだが、せっかく近くまできたので本物の土楼を見ようと思ったのだ。

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バスで4時間ほどドンブラコと揺られて、永定区まで行く。そこからはバイクタクシーで山に少し入ってもらったら、あるわあるわ、大小様々な土楼が現れた。

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世界遺産だけあって、中国人観光客もかなり訪れていた。

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今も土楼に住んでいる人たちがいて、お願いしたら泊まることもできた。

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トイレとシャワーは住民の皆さんと一緒なので、結構な現地具合だったが部屋は普通の安宿並みで居心地も悪くなかった。

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ただ、実際はほとんど観光用で、家主をなくした土楼は猛スピードで朽ち始めている。歴史ある貴重な建造物だが、これも時代の流れで仕方ないことなのだろう。

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中国は、兎にも角にもお茶が美味しかった。この土楼でもお茶を飲んだが、本場の烏龍茶は、香りも味も日本のとは別物だった。もちろん食事も美味しい。

日本人を嫌いな人もいるんだろうが、さほど嫌な思いもしなかった。バスのチケットを買う時に中国語がわからないと激怒されたくらいだ。

土楼の周りで食事していたら、お茶をご馳走になったりもした。客人をもてなす文化は相手が日本人でも同じなんだろう。

ちなみに中村さんは、その後も中国に通い、先日、客家をテーマにした『HOME』という素晴らしい写真集を作られた。その写真集の宣伝文にも写真展の言葉を使ってくださり、この上なく光栄だ。

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