【東南アジア14】メコンデルタと爆買い日本人
真夜中過ぎ、ベニア板で仕切られた壁を巨大なゴキブリが這っていた。
僕は飛び起きて、手元にあったティッシュケースで思い切りベニア板を叩いた。
「ドーン!」
激しく揺れるベニアの壁。ドデカい衝撃音が安宿に響いた。
ティッシュケースの裏を確認するが、Gがいない。どこにいったのか。
夢だったのだろうか。寝ぼけたようだ。
今日はメコンデルタツアーに参加した。
他の参加者は白人の老夫婦みたいな人ばかりだったが、コンパクトにまとまっていて楽しめた。
最初はクチトンネル。
ベトナム戦争中、南ベトナム解放民族戦線によってゲリラ戦の根拠地として作られた全長200kmにもなる地下トンネルネットワークらしい。
そのトンネルの一部分だけを拝めさせてもらったが、かなりしっかりした作りで、子どもの落とし穴みたいな雑なトンネルを想像していたから驚いた。
これがカンボジアとの国境付近まで張り巡らされていたというからすごい。
昼ごはんは、象の耳という淡水魚の丸揚げが名物というので食べたがあまり印象に残っていない。
午後は、ミトーという街をおとずれ、小舟に乗ってのんびりメコン川を巡った。
夕方、宿に帰宅すると日本人が3人増えていた。彼らと宿先で話していたら通りすがりの日本人が、「ここ安いですか?」とのってきて、一気に5人も増えた。
この中の2人がすごかった。
4ヶ月ほど旅を続けているそうなのだが、訪れる国ごとに女を買い、薬をやりまくっていた。
僕が泣きながら移動したカンボジアでも、タイ国境近くに売春で有名な村があるそうで、その村はとある国際機関の調査によると7割以上がHIV感染者だという。
そんな村でも、もちろん女を買っていた。
「たぶんもう俺エイズだと思うんだけどねー」という言葉に悲壮感はまったくなく、これからも女を買い続けるとうそぶいていた。
そして、この日の夜もまた、僕がそろそろ寝ようと部屋でひとりゴロゴロしていたら、夜の街へ繰り出す2人の大声が聞こえてきた。
さて。
ここまで旅してきて振り返ると、びっくりするほど写真を撮っていない。当時はギリギリまだフィルム写真だったからかもしれないが、観光名所に行くでもなければ1日1、2枚。ゼロという日もあるほどだ。
象の耳の写真くらい撮ればいいのにとも思うのだが、スマホ登場前というのは、飯をいちいち撮る習慣、これ映えそうだから撮ろうみたいな感覚がなかったのだろう。
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