【南アジア22】プリクラで国境越え
朝バラナシを出発し、バスはネパールとの国境スナウリを目指す。
ローカルバスらしく席は狭いが、特に異常なし。
他の旅行者は、隣の日本人だけ。話してみると、なんと同じ大学で体育会野球部のキャッチャーだという。奇遇だ。カトマンドゥに行くという。ものすごい実直そうな男だった。
ドンブラコドンブラコと進み、ネパール国境まできた。
ここで問題発生。
ビザ用の写真がない。
金とパスポートだけで簡単にネパールビザを取得できると思っていたのだが、小さな顔写真が必要だという。困った。しかしないものはない。もちろん写真撮影BOXなんてものもない。
財布やらをゴソゴソさがし、唯一見つかったのが「プリクラ」だった。しかも友人のだ。自分の顔ですらない。
無理だろうか。他の選択肢はないので、ダメ元でアタックしてみた。
ペラペラの申請用紙に必要事項を書き込み、本人写真欄にプリクラを貼り付ける。もはやサイズもへったくりもない。
受け取った係の男はさすがに「こりゃ小さすぎんぞ」と怪訝そうに写真を眺める。
ただ申請するからには、こちらも堂々としなければならない。彼らからすれば、日本人の顔など見分けられないだろう。
「ミー、ミー、ミー。オーケー、オーケー。ノープロブレム」とアピール。もはやこちらがインド人のような強引さだ。
日もだいぶ落ちてきていた。
ダメだと言ったところで、どうしようもない。それに10日間ほどしかネパールに滞在しない学生旅行者だ。外貨を落とすだけで、無害だ。
「オーケー」
男はニヤッと笑って、申請書を受け取り、パスポートにネパールビザを貼り付けてくれた。
ダメ元でもやってみるものだ。
しかし、まさかプリクラの、しかも本人でもない他人の写真で、国境を越えられるとは、そのゆるゆる加減に驚いた。
とはいえ、数年後中東を旅した時に知り合ったスコットランドの男は、ずっと兄貴のパスポートで旅していた。平然とそのパスポートでシリアーヨルダンの国境も越えていた。
日本はきっちりしているから驚くが、案外世界はそんなものなのかもしれない。
無事ネパール側に入ったが、もうあたりは暗くなり始めていた。今日はここまで。近くのドミトリーで寝ることに。明日は朝からポカラを目指す。
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