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【シリア3】ラピュタ城のモデル

明け方前の午前3時。凄まじい音量のコーランが寝静まる街に轟いた。夜明けの礼拝に向けた準備の時間なのだろうか。毎朝ならすんごいな。

6時頃シャワーを浴びる。ホットシャワーのはずだが、かなりぬるい。風邪をひかぬよう、すぐに暖房をつけた。

食堂で日記をつけていたが誰も起きてこない。1階に降りて、スタッフを起こし、朝食を用意してもらう。薄いパン3枚、チーズがやたらうまい。

腹も満たされ、ミニバスでホムスへ向かう。朝は相当冷える。砂漠を走っているとベドウィンの人たちが次々乗ってきた。

不毛な砂漠の中をひた走る。車内に流れるアラブのサウンドがマッチする。

2時間余りでホムスへ。

シリア第3の都市だけあって、かなり都会だ。バスでターミナルへ。10シリアポンド。15円くらいか。

ターミナルにはセルビスだけで100台以上はありそうだ。「クラック・デ・シュヴァリエ」行きのセルビスに乗り込む。

発車直前、白人の男がザックを抱えて乗り込んできた。車内にもう一人ツーリストを見つけて嬉しかったのか、「アッサラーム!!」と大声でハイタッチしてきた。

クラック・デ・シュヴァリエは、十字軍時代の代表的な城。アラビアのローレンスが、この城を世界で最も素晴しい城といったとかいわないとか。

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標高650メートルと高地にあり、さほど大きくない田舎町を抜けると突然現れた。ぐるぐると丘を登って頂上までいく。

石を積み上げた城壁には蔦や苔のような緑が生え、確かに噂の「天空の城ラピュタ」のようだ。このイメージの一致は偶然では難しいだろう。

セルビスを下り、入口に向かうとさっきの白人が「ハロー」と飛び出してきた。ハイテンションのアイルランド人・Jくん。彼に押し切られるように一緒に見て回ることに。

クラック・デ・シュヴァリエは、城内にも緑があふれていた。植木という感じではなく、まさにラピュタのように勝手に生えている。城と緑が同居しているような雰囲気。これまで訪れた城のいずれとも異なっていた。自然との調和が美しい。

当時の築城技術の最高峰というだけあって、素人目にも堅牢さがうかがえた。最上段まで登り、城下町を見下ろす。丘の上の狭いスペースに鎮座するこの城を攻め込むのは当時は大変だったろう。存在感も素敵だが、どこか怖さも感じた。

写真がないのは本当に残念だが、動画データが1本だけ残っていた!

城を一通り見たので、Jくんと帰ることに。

だが、ホムスまでのセルビスは2時間後という。

ここでJくんが動きまくる。

やってくるミニバスに交渉しまくり、スペイン人ツアーバスにも乗り込んで交渉。

ただ威勢はいいが、どれも交渉は不成立。結局、ハイウェイまで行けば、ダマスカスまでのダイレクトバスがあるかもしれないと、二人してとぼとぼ下山することに。


城下町は静かで、人も素朴だ。軽トラがゆっくり走ってきたので、手をあげると、気の優しそうなおじさんが笑顔で止めてくれた。英語はダメだが、乗せてくれるようだ。

ザックを荷台に投げ込み、助手席へ。

ゆっくり進む間も、町人が3人ほど荷台へ乗り込んできた。そういう風習なのだろう。

後ろからセルビスが走ってきたので、Jくんと二人して叫ぶ。

セルビスが停まってくれたので、軽トラのおじさんにお礼を言って、セルビスへ。

「ホムス?」

「イエス」

という会話と同時に2人とも車内に目を奪われた。ハリウッド女優ペネロペクルスかと見紛うような美女。

車内に乗り込むやJくんが興奮気味に話しかけまくる。十字架のネックレスをしていて、どうやらムスリムではなく、クリスチャンのようだ。Jくんの馬鹿話もそれなりのウケていたみたいだった。

ホムスへ到着し、美女と別れるやJくんは「ビューティフル! ビューティフル」と連呼していた。

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