【パキスタン1】緊急着陸
「急病人が出たので、バンコクへ引き返します」
突然の機内放送に、どよめきが起きた。
理性的な航空会社の行動に拍手を送る人もいれば、予定が狂ってゲキ切れしている人もいる。
隣のパキスタン人はニヤニヤしながら、
「ハイジャックされて、カブールに連れていかれるよりもマシだよな」と軽口を叩く。
こいつが言うと、そんな悲劇がたまに起こってそうで、怖い。
バンコクを出発して、まだ1時間半。目的地のパキスタンのイスラマバードはまだまだ遠い。
今回の旅も時間がない。
目指すは、パキスタン最北部。桃源郷とも言われる風の谷「フンザ」だ。1週間の夏休みだが、それでもギリギリだろう。
隣のパキスタン人は、「カリマバード(フンザ地区の首都)? めちゃめちゃ遠いし、道もハードだからやめておけ」と笑う。
だから、バンコクリターンは、痛いタイムロスだ。
イスラマバードは、大雨だった。
しかも排水がぶっ壊れているのか、元々機能していないのか、雨水はあっという間にくるぶし辺りまで溜まった。
首都のインフラがこれなのかと驚いた。
タクシーは街まで値切って100パキスタンルピー(R)。R1≒¥0.5くらい。
安宿がなかなか見つからず、結局R1500と想定よりかなり高いホテルになった。ホットシャワーはぶっ壊れているが、時間も遅く仕方ない。
どうやら明日の8月14日は、1947年にパキスタンがイギリスから独立した記念日のようだ。
雨が止むと、パキスタンの旗を持った若者たちが爆音を轟かせながら、バイクで街中を走り始めた。
普通のじーさんに見える奴が、ライフルを持って歩いている。
2007年、夏。パキスタンのきな臭さは、まだプンプンだ。
フンザは平和だろうか。
早いところ出発した方が良さそうだ。
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