【南アジア28】朝焼けのヒマラヤ
まだ暗い夜明けの前の朝5時。
ヨーク君のカンテラを頼りに、1時間ほど登ると山頂が見えてきた。といっても、周りを遥かに高い山々に囲まれているので、窪地のようにすら見える。
「あそこ山頂、プーンヒルね〜」
ヨーク君が教えてくれたが、体はもう限界寸前だった。
標高は3000メートルを超えた。こんな高いところは人生初だ。
頂上まで、あと数十メートル。
足が急停止し、何かがこみ上げてきた。
「レロレロレロレロ〜」
ヒマラヤにこだまする嘔吐の叫び。
ヒマラヤの大自然の片隅で、昨晩のマカロニを一気にぶちまけてしまった。
ヨーク君が慌ててかけより、両手でこめかみを強く押した。これ中学の頃は、罰ゲームで梅干しって言ってたな。でも、少し楽になった。
ついに吐いてしまった。高山病もここで極めたりというところか。
でも、ここまできたら山頂まで行こう。
虫の息で、なんとか登りついた。
朝焼けに染まるアンナプルナとダウラギリ。
あれが8000メートの世界か。
苦労した分を上乗せしなくても、ダントツでこの旅一番の朝日だ。
気持ちは最悪だが、気分は最高だった。
この二人と一緒じゃなきゃここまで来られなかっただろう。感謝。
たぶん、8167メートル、世界第7位のダウラギリ1峰かな?
3200メートルの高地にいるはずなので、周りを完全に山々に囲まれている。手の届きそうな距離にそびえる山々は、6000メートル、7000メートル、8000メートル級。
すごい。
さしずめ壁だ。何をも跳ね返すような威圧感。嫌でも人間の小ささを感じる。
当たり前だがこんなに巨大なものを見るのは、生まれて初めてだった。
自然から離れて生きるから、人間は謙虚さを忘れてしまったんだろう。そのうち破壊した自然から、しっぺ返しをくらうんだろうな。
下山。
標高が低くなるにつれ、息切れもおさまり、足取りも軽くなった。完全に高山病だったのだろう。5000メートルとかの世界でかかるものだと思っていた。最後は無理をしてしまったが、何とか無事でよかった。
Hくんは、ほとんどポーター状態。最後にはバテたヨーク君の荷物まで3人分を抱えていた。本当にすごいな。
下山はハイスピードで、夕方前にはポカラの街に帰ってきた。
夕飯は体力をつけようと、奮発してNRs200もするチキンを食べたが、逆に気持ち悪くなってしまった。
疲れた。でも、登ってよかった。
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