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【ヨルダン7】死海で、命びろい

今日が最終日だ。明日、日本へ帰る。

湯量も抜群のホットシャワーを浴びて、いざ死海へ。結局参加者が増えなかったので自力で行くことにしたが、果たして行けるのだろうか。

フセインモスクから、ローカルバス250F(フィルス)。ターミナルからセルビス500Fでマダカまで。マダカまで750F。1JDも使わずに来られた。

マダカはモザイクシティとして有名らしいが、ツーリストはゼロ。ただ街は土産物屋も多く、活気もある。コーヒーを買ったら、お店のオヤジが「御馳走するよ!」と奢ってくれた。久々のツーリストだったのかもしれない。自然な親切が嬉しい。

この辺りはキリスト教も混在していて教会もある。宗教の重要な場所になっているみたいだ。

モーゼ終焉の地として知られるネボ山を目指す。

セルビスが来そうもないので、タクシーに交渉。3JD。20分ほどで山へ。

モーゼが「約束の地」宣言をした場所だ。

大きな十字架が立っていて、エルサレムと死海を見渡せる。ここで十戒を唱えたとか。真偽はわからないが、約束の地を指し示すにはいい場所だ。なんとなく荘厳な雰囲気もあるし、キリスト教徒にとっては聖地みたいな場所なのだろう。

白人のツーリストに混じって、韓国人ツーリスト3人に遭遇。すれ違い様、会釈する。この3人が命の恩人になる。

タクシーで死海まで連れてってと言ったら、なんと片道15JD。それじゃあツアーの倍の金額だ。チャーターとはいえ足元を見られているのがシャクで、「ここまででいい!」と啖呵を切ってしまった。

さて、どうするか。他のタクシーに5JDではどう? と交渉してみるが、「ヒッチハイクでもしろ」と相手にもされない。遥か遠くだが、死海も見える。歩いて行くかと、軽い気持ちで山を降り始めた。

途中、羊の群れに遭遇。なんか長閑だなーと自分の置かれている状況を理解しないまま、さらに歩き続ける。30分ほど歩いただろうか。さっきの韓国人グループの車に抜かれた。

と、車が停まり、バックしてきた。

「どこに行くんだい?」

「死海です」

「歩いて?」

「ええ、そのつもりです」

しばし顔を見合わせる3人。頭を振りながら、ドライバーの男性が、

「そりゃ無理だよ。乗りなさい」

韓国人3人はキリスト教徒で、こちらのこともクリスチャンだと思ったそうだ。

「すみません。せっかく助けていただいたのですが無宗教です」と詫びた。


死海までは、車でゆうに30分はかかった。しかも坂が急だからスピードを出せない。歩いていたら、5時間以上かかっていただろう。

死海には、人っ子ひとりいなかった。シーズンオフ。これではツアーも催行されないわけだ。

死海は谷底、山間の底、盆地のような場所にある湖だった。だから海抜マイナス410メートルなんてことになるのだろう。

湖水を舐めてみた。塩辛いを通り越して、苦い。海水の7800倍。水温は生温かいが、泳ぐ気にはなれない。

韓国人が言うのは、ここは車で来る場所だから、ローカルバスもない。1人じゃ帰れないぞと言う。確かにそんな雰囲気だ。5時間かけて歩いてきていたら、ヤバかったかもしれない。浮かれて水着なんて持ってきていた自分が馬鹿みたいだ。

韓国人たちの車でアンマンまで乗せてもらい、さらに食事までご馳走になってしまった。

食事前にお祈り。形だけ一緒に手を合わせた。

「しかし、君は本当にラッキーだったね」

「はい、本当にありがとうございます」

「歩いて行くと聞いた時は、死ぬ気なのかと思ったよ」

「はい、馬鹿でした」

「でも、神はあなたを見ていた。そして私に声をかけさせたんだ」

「神、ですか」

「そう。神だ。だからぜひ教会に行って欲しい」

流石に助けてもらって、「神? そんなのいねーよ」などとはいえず、「はい、日本に帰ったら、必ず」と答えた。

宿でひと寝して、夕方4時、タクシーでヨルダン随一のカフェ「Book@cafe」へ。レインボー通りは、ちょうどダウンタウンの山の手という感じ。街並みも瀟洒で、ひらけた雰囲気。道も石畳でヨーロッパのようだ。

カフェは噂通りのハイセンス。東京でもめちゃくちゃおしゃれな部類のカフェだろう。店内の音楽もアラブ風ではなく、完全に欧米。客層も半分以上が白人だ。店員にも金髪がいるくらいだし。違うのは、水タバコをやっていることくらい。思わずビールを頼んで、1人で最後の夜を満喫。

シリアとヨルダンの人たちは、イスラムの教えもあるのだろうが、本当にみんな親切だった。お節介なくらい助けてくれる。ジョークが大好き。男子は下ネタ大好きで、女子もめちゃくちゃ外向的。閉鎖された印象は全くなかった。国としてもペトラはじめ見るべきものも多く、歴史も恐ろしく深い。なかでもダマスカスの街並みの美しさには心が震えた。だからこそ、1日も早く平和になってほしいな。

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