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【イラン3】検問で、銃口

朝バスターミナルへ。シーラーズ行きチケットはすぐに手に入った。

出発は2時間後だ。ペルシャ湾を眺めながら、ボーッと時間を潰す。

さてそろそろ出発かなとターミナルへ戻ってみると、バスはすでに出発してしまっていた。

ターミナルのオヤジに文句を言うと、「お前、1時間も遅れてきて何言ってやがんだ」と呆れられてしまった。

日本との時差は5時間半。調整の際、1時間も間違えていたのだ。仕方なく、追加の料金を払って、1時間後のバスに乗り込んだ。

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10時過ぎに走り出したバスは、砂漠の中を北西へと進む。途中の検問で停まる度、行きでは感じなかった緊迫感が漂う。

執拗に荷物を調べ、氷漬けの食品は氷を割ってまで中身を確認する。あの魚は目的地に着く頃にはダメになってしまうだろうな。

ライフルを抱えた軍人がバスに乗り込んできて、何か叫ぶ。

乗客が教えてくれたところでは、「男は全員降りろ」ということらしい。

席を立ち、前の人たちについていく。

と、眼光鋭い軍人と目が合った。その瞬間だった。

男は銃口をこちらに向け、「アフガニスターニャ! アフガニスターニャ!!」と大声で叫んだ。

え、何? 何? どういうこと? それ弾でるやつ?

思わず、ホールドアップし無抵抗をアピール! 一瞬、ポケットからパスポートを出そうかと思ったが、変に動いて反撃すると疑われたら撃たれるかもしれない。

両手を挙げたまま、「ノー! ノー! ジャパン! ジャパニーズ!」と連呼したが、軍人は向けた銃口を下ろさない。

慌てて周りの乗客たちが、ペルシャ語で、「彼は日本人だ! アフガン人じゃない!」とアピールしてくれたようで、ようやく軍人は銃口を下ろし、「パスポート!」と偉そうに吠えた。

パスポートを見せて、ようやく日本人と納得したようだ。他のイラン人たちと一緒にバスから降りる事ができた。

しばらく車内のチェックが続く。すごい念入りだ。

数年後、NGOに転職して分かったのだが、どうやらアフガニスタンには、ハザラ人という日本人とよく似た顔立ちの少数民族がいるそうだ。

テヘランから地方へ行く場合は大して問題ないのだが、逆に国境近くや海岸沿いから中央の都市へ向かっていくバスの場合は、密入国してくるアフガン難民や過激派なんかが紛れ込んでいるとも限らないので検問もかなり厳しいそうだ。

何はともあれ、無事でよかった。日本人だとアピールしてくれた乗客の方々は、まさに命の恩人だ。

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この検問の後、後ろの席のナウシカに出てきそうなおばちゃんたちが話しかけてきたのをきっかけに、周質問攻めが始まった。通訳の女の子も英語習いたての男の子も興味津々。

「これからどこへ行く?」というので、「ペルセポリスに行くよ」と答えると拍手喝采。多分ほとんどの旅行者は行くと思うが、彼らにとっては誇りなのだろう。

彼らから感じるのは、品の良さと素朴さ。丁寧に言葉を選びながら質問し、時折、疲れていませんかと気遣ってくれる。東京でストレスに押しつぶされそうになりながらギリギリ生きている中で、彼らの無垢な優しさに癒された。

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シーラーズの街はかなり都会だった。店も夜の11時過ぎまで賑わっている。イランの新年——ノウルーズというらしい——ということもあって、ホテルはどこもいっぱい。みんなペルセポリスに行くのだろう。

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ようやく「部屋はないが、寝るだけなら特別にいいぞ」というホテルを見つけた。

物置みたいな部屋を空けてくれたが、スペースは本当に寝るだけ。調子のいいオヤジで、「特別だぞ!」と何度も強調する値段は18ドル。ちょっと高いが清潔なのは助かる。

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