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サイコパス男のその後/48歳バツイチだけど運命の人に出会った【19】

登場人物
私 48歳バツイチ、BAR経営者
たー君 58歳。私の彼氏。スマイル運転代行社社長
曽我 47歳 病的なサイコパス男。スマイル代行から人と金を盗んで自分の代行社を立ち上げた。
原口 42歳 勢いだけのバカ。曽我のS&H社の共同経営者。
坂田 50代後半 スマイルからS&Hに移ったがクセのある人。


「サイコパス」曽我は、従業員を四人連れて新会社を立ち上げました。
会社名はS&H代行、つまり「アバラ折られ男」原口と共同経営、という形をとっているのです。

なるほど、と思いました。

原口という男は、四十前半でろくな仕事もしてないくせにプライドだけは高いヤツです。共同経営者にすれば原口のプライドが保て、かつ給料という形で金を払わなくて良いからです。

起ち上げたばかりで仕事はそれほど入ってこないはずです。共同経営者にしてしまえば入った金を折半、もしくは歩合で払うんだったらマイナスにはならないですから。

代行業なんて、ホント儲からないですよ。
ガソリン代、保険代などけっこう出ていくお金が大きいんですよね。代行保険は二社しかないので、それをいいことに年々上がっていってますし、車が故障すればまた出費。車検もあるし。酷使するので車もしょっちゅう買い換えないといけません。
また、曽我のように新規参入するのも容易な上、タクシーのように料金の基準がない。だから新規の会社はみな料金を下げるため、古参の会社もそれに合わせないとお客さんを盗られてしまうんです。

それにこの業界、忙しい時期とヒマな時期の差が激しい。田舎だから農家が忙しい時期はヒマになるんです。
月によっては、この業界10年のたー君だって「儲けがない」などとこぼす時もあるというのに、起ち上げたばかりの代行社にそれほど仕事があるとは思えません。

起ち上げたばかりで三台あっても、仕事がなくてずっと待機してるのを見てますしね。ざまあみやがれ。

ヤツらが新会社を立ち上げたとき、たー君もただ手をこまねいて見ていたわけではありません。
弁護士へ相談に行き、警察へも何度も足を運び、さらには横領を認めた晴彦とは民事調停を起こしています。

ただ、警察では「黒に近いグレー」と言われたにも関わらず、それから何の進展もなく「民事でやってください」状態。


しかも曽我と原口は、さらにたー君の会社に追い打ちをかけるようなことをします。スマイル代行を昔から使ってくれているスナックのママが、曽我がスマイルとたー君の悪口を言っていると教えてくれたのです。

ママの店に来た曽我は、スマイルを辞めて自分の会社を興したが、スマイルはひどい会社だ、岡崎は給料は払わない、運転手の阿部は運転は荒いし、金はちょろまかす、と。
店の客の話ですから黙って聞いていたそうですが、実はそのママ、阿部君の同級生で、阿部君が金を盗むような人でないことを知っています。曽我の嘘がバレていたわけです。

そのママはよく行っている別のスナックのマスターに「S&H代行の曽我という人が来たけど、嘘ばっかり言ってった」と話しました。

そのマスターは実は原口の高校の後輩。以前、原口がマスターの店に飲みにきた時、クセの悪い酔っ払いな上、未だに先輩風を吹かせてくるのでムカついたとのこと。

「後輩のくせにナマイキだぞ!」

……と言われたらしいですが、四十も過ぎてそのセリフってどうなの? おバカな原口の言いそうなことです。

結局、マスターは原口を出禁にし、たまたまその場に居合わせたまた別のスナックのママはおしゃべりで有名な人。

私が仲良くしているスナックやBARは、皆「S&Hなんか使わない」と言ってくれているし、嘘ばっかりついていることや、酒癖が悪いことをおしゃべりママの口からあちこちに伝わっていっているようです。

しかも会社を立ち上げて何か月もたたないうちに曽我がお客様の車をぶつけた、という話も同業者から伝わってきました。それは病院の医師のBMW。

ぶつけられた先生には申し訳ないけど、笑いが止まんねぇぜ(笑)

それから爆サイの書き込みに、曽我の悪事を暴露するような書き込みが増えました。それは、文章の書き方からいって、ウチの身内のようです。
ていうか阿部君のことも書かれていたので、私が「多分曽我が書いてる」と教えたのです。それから泥沼化していますが、こちらは全部事実ですから。
曽我が会社の金を盗んだことも、従業員の悪口を言いふらして客を盗っていったことも。

爆サイに曽我からの反論のような書き込みがありました。

「新規参入でも安くすれば勝てる」

新規参入でも、まともなことをやってない人間が勝てるわけがありません。
それに、曽我としか思えない書き込みがあったことでハッキリしました。
たー君が車を蹴った、などと書き込んだのは曽我だということです。

結局、悪事が知れ渡ってしまい、あちこちの飲み屋からそっぽ向かれています。よっぽど代行が混む時間にならない限り、頼む人はいません。

安いからといって使っている人がいても、病的な嘘つきなこと、金を盗んでいること、回数こなそうとしてスピード上げるから事故が多いこと、などを話すと「じゃあ辞めるわ」と使わなくなったお客様も多いです。

その後、原口がどこかのスナックで、曽我の悪口を言っていることを聞きました。すでに仲間割れしているようです。
共同経営者だ、なんてうまいことを言っても、入るものは入ってこない。計算できない原口は「曽我が金を独り占めしている」と疑心暗鬼になっているのでしょう。

そういえば、ある時爆サイにこんな書き込みがありました。

S&H代行の曽我を始め、原口やスマイルから移った従業員一人一人の詳細な個人情報や揶揄するような書き込みがあったのです。
それは、スマイル代行の従業員が知らないような情報も含まれていました。

どう考えてもS&H代行の身内でないと知りえない情報です。
一体誰が?

すると、その書き込みがされた日、店にいた私にたー君から電話がありました。またしても事務所に殴りこんできた人間がいる、とのこと。今度はスマイルから曽我のS&H代行に移った坂田というおっさんです。

このおっさん、元々は自分で商売をやっていたせいかプライドが高く、スマイルに居た時も自分が乗っていた車のタイヤにおしっこをひっかけて帰るようなクセのある人です。

この人は、 たー君が爆サイに自分の悪口を書き込んだ、と怒鳴りこみにきたというのです。
たー君は警察を呼びましたが、警官は両方の言い分を聞いたうえ、たー君のスマホを調べました。
まあ、二人とも60前のおっさんですからね。爆サイもよく知らないし、SNSもまったくわかってないんですよ。
当然、たー君のスマホに履歴があるわけもなく、「岡崎さんは書き込みしてません」とお墨付きをもらったそうな。

納得いってない坂田にたー君はこう言ったそうです。

「坂田。お前の悪口が書かれてる、って誰から聞いた? 曽我だろ」

坂田は「曽我じゃなく晴彦から聞いた。携帯の画面を見せられた」と言ったそうです。

さすが悪賢い曽我です。

ヤツは自分を含め全員の悪口を書いた。
そして、自分ではなく手下の晴彦にこう言わせたのです。「こんな悪口を書くのはスマイル代行の岡崎にちがいない」と。

なぜ坂田なのか。

書き込みは坂田のことを一番悪く書いていました。運転が遅いくせに事故ばっかり起こしている年寄り、と。
多分、会社を立ち上げたばかりで仕事が少なかった曽我にとって、一番面倒なのがこの坂田だったんです。
仕事はないが給料は払わなくてはならない、しかも運転が遅い坂田のことを邪魔にしていた。それなら、問題を起こさせてクビにしてしまえ、と。

まったく、どこまで腐ったヤツなのか。
まあ、せっかくたー君の会社から金と人と従業員を盗んでも、内輪もめしてるくらいですからね。
そして昨年、曽我はこの坂田に手痛いしっぺ返しを食らいました。
坂田がS&Hとスマイルから従業員を引き抜いて自分の代行社を興したからです。
しかし現在の新型コロナ禍で、この新しい代行社も上手くはいってないみたいですね。因果応報ってヤツ?

つづく






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