第29回 柔道整復療養費検討専門委員会 議論まとめ(2024年4月26日開催)

第29回(2024年4月26日開催)
主な議題……
・柔道整復療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)について

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あくまで資料のみを確認しての料金改定の内容予測と所感です。

柔道整復療養費の令和6年改定の基本的な考え方(案)について

①改定率
②明細書交付義務化対象の拡大等について
③物価高騰、賃上げ、医療DXへの対応について
④長期・頻回受療に係る料金適正化について
⑤患者ごとに償還払いに変更できる事例の追加について
⑥引き続きの検討事項

①改定率

今回の改定率は+0.26%。これまで通り、医科の診療報酬の改定率+0.52%の半分となった。今回の料金改定では物価や人件費の高騰、医療DX対応が盛り込まれたため、慣例が破られることが期待されたがかなわなかった。
ただし改定率については柔整やはり・きゅう・あんまマッサージの料金改定が6月1日とするために議論が進んでいることから、医科の診療報酬の改定率の半分という慣例を破るのが難しいとされている。今回を例にすると2023年中には2024年度の厚生労働省の予算はほぼ決まっており、医科の診療報酬改定に向けての陳情等はここに向けて行われている。予算が決まっている中での料金改定議論のため、すでに改定率が大きく増えることはないからだ。
次回以降、改定率の慣例を破ろうと考えるのであれば、少なくとも医科と同様のスケジュール感で動くことが求められる。

②明細書交付義務化対象の拡大等について

1.明細書交付義務化対象施術所を明細書交付機能があるレセコンを設置している施術所にする。
→明細書交付義務化対象施術所を明細書交付機能があるレセコンを設置、かつ常勤職員3人以上の施術所から大幅に拡大
2.交付の回数は現行のまま。患者の意向により1か月単位でのまとめて交付も可。
3.算定額は月1回に限り10円算定可能。
→月1回に限り13円算定可能から減額
4.保険者ごとの償還払いへの変更は実施しない。
周知の必要があるがあるため10月1日からの施行

前回の会議の後、様々な情報が流れたが、結果的にはほぼ前回の案の通り改定となりそうだ。
まず、明細書交付義務化対象施術所は拡大されることとなった。常勤の定義がはっきりせず施術所では混乱を招いた「常勤職員3名以上」が外された。このため受領委任契約を結んでいる柔整の施術所の8割以上が義務化対象になる可能性がある。たとえ月1回に限った算定としても13円は保険者にとっての負担は大きい。そこで10円として負担に対するバランスを取った。なお、義務の有無にかかわらず明細書を無償で交付し明細書発行体制加算を算定する施術所は届け出る必要があったが、ほとんどの施術所が義務化となることから、10月以降は明細書交付義務のなく明細書発行体制加算を算定しない施術所の方が届け出ることとなる。
このままでは保険者側の意見ばかり聞くことになったととらえられそうなので、患者の意向により1か月単位でのまとめて交付、保険者ごとの償還払いへの変更を実施しないことで双方の意見を聞く形を取ったのだろう。厚生労働省の担当者の苦労が伺える内容だ。
明細書発行義務を免れる逃げ道がないことはない。すなわち要件である「明細書交付機能がある」レセコンを使わなければよいのだ。前回の令和4年の料金改定時に、義務化されている領収証の発行機能を残し、明細書発行機能を除いたレセコンソフトを売り出すメーカーが現れる可能性を考えていた。しかし、柔整のレセコンメーカーは多数に上るがそのようなメーカーが現れたことを聞くことはなかった。

③物価高騰、賃上げ、医療DXへの対応について

1.電療料を1回につき33円とする。
→3円増
2.初検料は1回につき1,550円とする。
→30円増
6月1日からの施行

物価高騰や人件費の高騰は、業種によっては価格を上げることで対応できるが、保健医療は金額が決まっているため勝手に値上げすることはできない。柔道整復の療養費も同様である。柔整の施術所の物価高騰や燃料費の高騰対策は、都道府県や市町村単位で補助金などが交付されてきた。しかし全ての自治体で実施されていたわけではなかった。そこで今回は電気代の高騰に対応して電療料が上がることとなった。
さらに医療DXとして令和6年4月からは施術所でもオンライン資格確認がスタート。12月には義務化されることとなっている。これと賃上げに対応するため初検料が上がることとなった。
4月の診療報酬改定では、医療機関で働く柔道整復師などの報酬を上げることが盛り込まれており、開業するより医療機関で働いた方が魅力的に映る可能性もあった。このため、物価高騰や人件費、医療DXへの対応が盛り込まれたことは大歓迎だ。
ただし、この対応は改定率0.26%の範囲内であることは忘れてはならない。0.26%の中で帳尻合わせをする必要があるということだ。

④長期・頻回受療に係る料金適正化について

1.いわゆる長期施術は所定料金の100分の75、長期頻回施術は所定料金の100分の50に相当する額を算定できる。
→長期施術は100分の80から減額。長期頻回はさらに厳しい対応に
2.長期頻回施術で100分の50しか徴収できなかった患者には、説明のうえ、100分の75との差額を実費で徴収できる。
周知の必要があるがあるため10月1日からの施行

2月の委員会の中で発表された調査結果が大きく反映された。調査結果では3か月以内で施術が終わる患者が約8割。4か月以上施術が続く患者は大幅に減少している。これはもちろん3か月以上となると長期施術継続理由書を記載しなければならないからだが、本当に施術を続ける必要があれば記載して継続すればいい、ということだ。また1か月の施術回数でも3回以下が約5割、4~10回が約4割となっており、11回以上が約1割となっている。これにも理由があり、頻回の場合は月10~15回がいわゆる保険者等による患者調査の基準になっており、多くの保険者等は月10回以上を調査するからだ。
長期かつ頻回施術の場合、実際に施術した分を算定できないことになることから、差額を実費で徴収できるとしているのだが、果たしてこれをきちんと説明したうえで徴収できる施術管理者がどれだけいるだろうか。また、実費徴収するということは、領収証や明細書に項目を作る必要がある。徴収する可能性がある限りレセコンメーカーは対応しなければならない。

⑤患者ごとに償還払いに変更できる事例の追加について

1.長期かつ頻回な施術を継続して受けている患者(初検日から5ヶ月 を超えて、かつ、1月あたり10回以上の施術を継続して受けている患者)を事例に追加。
周知の必要があるがあるため10月1日からの施行

長期・頻回の料金適正化と合わせて、施術者側にとっては厳しい内容となった。令和4年の改定時には、柔道整復の施術は人の自然治癒力を高めるためのものであり人やケガによって施術期間や回数は変わること。一概に線引きできるものではない。この主張が通る形で、長期頻回は事例から外れた。こちらも調査の結果、該当する患者がほとんどいないことから盛り込んでも問題はないという判断だろう。施術者側としては受け入れがたい結果だろうと想像する。
そしてここにも影響が出そうな変更点がある。いわゆる頻回施術の定義が月10回以上となった。これまで月10~15回となっていた線引きが明確になった。施術者側には15回と主張してきたところもあったので、対応を変える必要が出てきそうだ。

引き続きの検討事項

1.明細書交付の状況、保険者単位の償還払い移行
2.物価高騰、賃上げの影響調査
3.長期頻回施術や部位転がしを調査検討

令和6年の料金改定では明細書交付の状況が大きく変わる。明細書交付は、自分が受けている施術や支払った金額を把握するためのものである。特に健保連はこれをきちんとできないようであれば、療養費の原則である償還払いに戻したいという主張をしている。今回これも継続することとなった。
また、引き続きいわゆる長期頻回施術の調査は行われるが、今回は「部位転がし」という文言が出てきている。厚生労働省の調査結果は、料金改定に如実に反映されることがわかったため、施術者団体には「部位転がし」への注意喚起などの対応が求められる。

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