律令編纂の意義について、大津透『律令国家と隋唐文明』(岩波新書、2020)はこう述べる。
帝国構造と蝦夷
帝国構造と蝦夷の関係については、東京大学2017年第1問Aが参考になる。解答すべき内容として、律令国家が蝦夷を「異民族」として位置づけ、服属させようとしたことは見やすい。では、その逆ベクトルの内容、すなわち蝦夷から律令国家に対して何が行われていたかを指摘できるだろうか。
(4)の砂金・昆布・馬などの東北の物産が貴族に珍重されたことから、これらが「異民族」たる蝦夷からの朝貢品として扱われていたと読める。たとえば、岩波講座日本歴史には以下の記述がある。
帝国構造と帰化人・渡来人
周辺諸国を諸蕃とみる帝国構造において、外国からやってきた技術者の扱いはどうなっていたのか。大宝令には外国人が帰化した時の規定があるが、唐令にはない独自の規定として、「もし才技有らば、奏聞して勅を聴け」というものがある。これは帰化人の中に特殊技術を持つ人がいれば、天皇に奏上して勅の処分を待てという意味である。帰化人・渡来人が様々な技術を伝えたことは周知のことだが、この規定は養老令では削除されてしまう。
削除の理由について、大津氏はこう説明する。
帝国構造が元々実態と乖離したフィクションを伴うものであった点は、問題を解く際に注意したい。