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東大日本史(古代)

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#東大日本史

2022年東京大学日本史第1問

リード文の分析 (1)文書には「正文」(しょうもん。原本のこと)と「案文」(あんもん。原本と同じ効力を持つ写しのこと。)がある。律令制の文書行政では、中央の指示を正確に地方に伝えることが重要であるから、京で作成された原本が放射状に地方へ送られ、各国の国司が写しを作成して国内で施行した。
たとえば、『江家次第』の改元の項目に、改元詔書の諸国への送達について、「給諸国八枚者謄詔書」(「謄」は「写す」の

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律令制と帝国構造

 律令編纂の意義について、大津透『律令国家と隋唐文明』(岩波新書、2020)はこう述べる。

帝国構造と蝦夷

 帝国構造と蝦夷の関係については、東京大学2017年第1問Aが参考になる。解答すべき内容として、律令国家が蝦夷を「異民族」として位置づけ、服属させようとしたことは見やすい。では、その逆ベクトルの内容、すなわち蝦夷から律令国家に対して何が行われていたかを指摘できるだろうか。
 (4)の砂金

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2007年東京大学第1問(古代の銭貨政策)

【資料文の整理】

(1) 
a.711.銭による価格の公定:人々に銭と穀の交換を強制(交換価値の確保)
b.712.庸調の銭納許可:国家が人々から銭を回収するルートの確保
(2)
c.711.官人給与の一部を銭建て給与で支払い
d.711.蓄銭叙位令:人々に銭利用を促進
(3)
e.地方での銭利用促進
(4)
f.造東大寺司・平城京の市の商人間で銭・物品の交換←aの実現
g.造東大寺司、労働者に

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