ショートストーリー①誤解を解いて、共通意見を持って

どうしてこの世界は争いで満ち満ちているんだ?どこもかしこも、誰も彼もが争っている。まさに、万人の万人に対する闘争の状態だ。

人々は、それぞれ孤立していた。そして、自分以外は全員敵、という、極めて戦闘的な状態に置かれていた。人々には、味方とか仲間とか言うものはなかった。

人類は、全員、全世界を相手に戦っていたのである。人々の心はすさんでいた。

竹本安亨(たけもとやすあき)は、この世界に疑問を抱いていた。争いに次ぐ争いの日々に、疲れ果てていた。何とかして、他人と争わなくて済む方法はないものか?安亨は、本能的に、平和を求めていた。

世界を平和にできないものか?安亨は考えるのであった。どうすれば、世界を平和にできるだろうか?世界が平和になるためには、何が必要だろうか?

世界を平和にする方法を考えるためには、現在の世界の様相を詳細に分析する必要があった。人々は、お互いに敵対している。それぞれの人は、自分の正義を持ち、他人はみんな悪だと考えている。自分の意見だけが正しく、他人の意見は全て間違っていると思い込んでいる。そのため、人々は、自らの正義を示し、悪を滅ぼすために、積極的に他人に対して戦いを挑んでいた。

安亨は、世界を平和にするためには、まず、人々の敵対関係を解消することが必要だと考えた。自分が正義で、他人は全て悪だと思っていては、悪を倒して正義を示すための戦いを止めるわけにはいかないからである。

安亨は、人々が、お互いにお互いのことを誤解し合っていると分析した。人々は、自分の意見は唯一で、他人の意見は絶対に自分の意見とは同じにならないと思い込んでいた。安亨は、この点に、誤解を解く鍵があると考えた。

さて、いざ世界を平和にする活動をしようとすると、どこから手をつければ良いか、考え込むものである。安亨は、考えた結果、身近な人との関係から着手しようと考えた。

安亨がふと周りを見渡すと、近くに佐藤志帆(さとうしほ)がいた。今現在、安亨と志帆は、敵対関係にある。安亨は、志帆に接近するのはリスクを伴うことだと理解していたが、世界を平和にしたいという思いが恐怖に勝った。

「志帆さん、お話があります。」

安亨は、話を切り出した。

「何よ?」

志帆は、声をこわばらせ言った。

「私は、志帆さんの私に対する誤解を解きたいのです。私と志帆さんは、意見の一致を見ることができるはずです。いつも必ず異なる意見になるわけではありません。意見が一致したときくらい、仲良くできませんか?」

安亨は、志帆との敵対関係を解消するために、誤解を解き、意見の一致を見ることができることを伝えた。

「そんなわけないでしょう?いつ、私とあなたが同じ意見になったというの?私の考えは私の物よ。他の誰も私と同じ意見になるなんてあり得ない。」

志帆は、自分の信じるところを告げた。

「例えば、志帆さんも、食事は美味しいものを食べたいと思うでしょう?」

安亨は、人は美味しいものを食べたがるものだという意見で、志帆と意見の一致を見ることを試みた。

「それはそうよ。ご飯は美味しいものを食べるに限るわ。」

志帆は答えた。

「私も同じです。私も、食事は美味しいものを食べたいと思います。志帆さん、同じ意見ですね。」

安亨は、志帆と同意見であることを告げた。

「確かに同じ意見ね。あなた、なかなか良いヤツじゃない。」

いつの間にか、敵対関係は解消していた。そして、食事は美味しいものを食べるに限るという共通意見から、仲間意識が芽生えていた。

安亨と志帆にとって、仲間意識を持つことは初めての経験であった。今まで、誰も仲間だとは思ってこなかったからである。2人は、心に、温かいものを感じていた。

2人は、食事は美味しいものを食べたいと考えるという共通意見で、仲間になった。安亨と志帆との間には、争いは起きない。安亨は、志帆との関係の中に、平和を見出だした。

安亨は、他人と共通意見を持ち、それをもとに仲間意識を育めば、その人と仲間になれて、その人との間の関係に平和を見出だすことができることに気づいた。安亨と志帆が仲間になったように、別の他人とも、共通意見を持てば、仲間になれるはずである。仲間になれば、平和な関係を築ける。争わなくて良い。

安亨は、他人との間の誤解を解き、共通意見を持つことにより、世界を平和にすることができると直感した。そして、安亨は、全世界を平和にするべく、全人類と仲間になることを決意した。

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