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Web or Live?

配信落語

このコロナ禍で、多くの落語会や寄席が、中止や延期を余儀なくされています。
それでも演芸の灯を消すまいと、噺家さんや関係者の皆様が尽力され、インターネットを利用した「配信落語」が生まれました。
今では過剰供給になっているくらい、たくさんの高座がネットで配信されています。

生まれた経緯が「禍」なので、こういうのも気が引けるのですが……
いやあ、ネットの時代で良かった。
もしもこのコロナ禍が、ネットのない時代に発生していたらと想像すると、ちょっとぞっとします。
目下の生きる楽しみがなくなってしまうではないですか。

私は配信落語を積極的に楽しんでいる方だと思いますが、落語ファンの中には、「絶対ライブ!」とおっしゃる方もおられるようです。

配信特有のアクシデント

先日見た配信の落語会。
配信サイドのWeb環境がイマイチだったらしく、冒頭、音が入ってなかったり、マイクがハウったりしちゃったんですね。
(2・3分後には解消し、落語本編はちゃんと聞けるようになりました)

それをご覧になったお客様が、動画の評価欄に「こんなん聞けるか―! こんなのにお金払えるか―! ライブじゃなきゃもう行かない! 落語はライブに限る!」(ざっくり要旨)と激おこぷんぷん丸な書き込みをされていました。

うーん、きっとそのお客様は、DVDのような美しい画質・音質で見られる・聞けると、期待して、楽しみにしておられたんでしょうねー。
「ライブに限る!」の理由が、「く~っ、やっぱライブってサイコー!」ではなく「配信なんか見ない! やっぱライブじゃないとだめだ!」なのが、いささか残念だなあ、と思いました。

配信には、Web特有のアクシデントが付き物です。
そこを理解したうえで視聴しないと、このような悲劇が起こります。
今回、配信サイドも初めての試みだったようで、不慣れなところもあったかもしれません(でもちゃんと復旧したし、アーカイブでは編集でお詫びのテロップを入れていました)。
が、配信を見る方にも〝慣れ〟は必要だな、と感じた次第です。

ライブだってアクシデントはある

でも考えてみたら、ライブ(生)の高座だって、マイクトラブルなどのアクシデントは起こりうるんですよねぇ。

ライブにせよ配信にせよ、演者さんやスタッフさんはリハーサルを行い、細心の注意を払っているはずです。
そのうえで仕方なく起こるハプニングは、ある程度大目に見て差し上げていいんじゃないでしょうか。(けが人出たとか、何か壊したとかは大問題ですけれど。今回はそうでないので。)

「ハプニングも、高座の楽しみのひとつ」と、心の余裕をもって臨みたいものです。

ライブと配信 イイところ/イマイチなところ

ライブにも配信にも、イイところ/イマイチなところがあります。思いつくところを、以下にまとめてみました。

禍が明けたら生の高座を見に行ってみたいな、これから配信で落語を見てみようかな、という方がいらしたら、ちょいと目を通していただけると幸いです。
「どちらが自分にフィットしそうかな」の目安にしていただけたら、先に申し上げたような悲劇は減るかと存じます。

ライブのイイところ
◇臨場感、会場の空気感
◇非日常感
◇高座に集中して見ることができる
◇アフターも楽しい(お友達と呑みに行って落語トークしたり!)

ライブのイマイチなところ
◇会によってはチケットが取りづらい
◇他のお客や席などに環境が左右される
 ・自分の席の前に大きい人が座ってしまう
  (誰のせいでもない。残念というしかない)
 ・このご時世でのマナーを守っていない人が少数いる
  (これで今まで行っていた会、1つやめました)
 ・スメハラなど(かなりしんどい)
◇遠方だと往復のアシが大変

配信のイイところ
◇チケットが取りづらい噺家さんの会でも、争奪戦なく見られる
◇ライブよりも視聴代金がお安い(会が多い)
◇交通費・時間の節約
 ・会場まで往復しなくていい
 ・地方在住でも見ることができる
 ・スタートぎりぎりまで他のことをしていられる
◇アーカイブがあれば、好きな時間に何回でも見ることができる
◇他のお客がいない=「〝他のお客要因〟の環境の悪さ」がない
◇飲んだり食べたりしながら見られる

配信のイマイチなところ
◇臨場感にやや欠ける
◇いつでも見られると思うと、集中できない
◇インターネット環境がないと見られない
◇Web環境(配信側も視聴者側も)によるアクシデントがある
◇噺家さん全員が配信をやってくれてるわけではない
 (推し噺家さんが配信やらない派だったら……仕方ないッスよね……)
◇スマホやパソコンの画面が小さい(笑)

おもしろさは、変わらない

私個人は、リアルと配信が選べる(いわゆるハイブリッド)のなら、配信で視聴します。
リアルしかなく、かつ、よっぽど行きたい会には、できるだけの対策を講じて出かけることにしています。

もちろん落語は生がベスト、とはわかってるんですよ。

でも正直に言えば、配信、すっごく助かってるんです! 
中途半端な地方住まい(笑)としては、このご時世、会場へ行く公共交通機関に乗るだけでも気を遣います。
配信なら、会場まで足を運ぶ必要はありませんし、ぎりぎりまで在宅の仕事をしていられます。
私にとっては、メリットの方が多いのです。

何より(その噺家さんが配信に慣れているかどうかは、多少影響するかもしれませんが)本当におもしろい落語家さんは、ライブだろうが配信だろうが、おもしろいんですよ! 
視聴方法でおもしろさやクオリティが変わることはないんですよ!
 
これは声を大にして、字を太くして、申し上げておきます!


続けてほしい配信落語

この禍で生まれた「配信落語」ですが、禍が明けてもぜひ続けていただきたいなーと、個人的には願っています。

せっかく整えた配信のプラットフォーム。
今後もフルに活用して、地方・海外住まいの方や、入院されてる方、ご高齢の方など、普段なかなか寄席や落語会へ足を運ぶことができない皆さんにも、落語を届けてほしい。
もちろんお若い方にも、配信という形で、気軽に落語に接してもらいたい。

一落語沼民として、落語に触れるきっかけ、楽しみ方の選択肢が増えるのは、単純にいいことなんじゃないかなー、と思うのです。


自分に一番フィットした方法で、好きな噺家さんの落語を見る、聴く、楽しむ、応援する。そのために尽力してくださる方々に感謝する。

心の片隅に……じゃなく、心のセンターにどっかと置いて(笑)、落語沼人生をエンジョイしてまいりましょう!
                 <2021年2月17日18:00一部加筆修正>


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