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一人暮らし実現までの ハシゴかけ

気づいていながら目をそむけてきた自分の願望と向き合い、前に進むのは、なかなか勇気がいることで、変化に対して億劫になりがちなわたしです。

そんなわたしでも「教育のためのTOC」のアンビシャス・ターゲット・ツリー(ATT)を使って、自分で決めて行動できたと思えた、大切な記憶について書いてみたいと思います。
同じような億劫さを抱えている方の参考になるといいなと思っています。

これを書いている今、一人暮らしを始めて、もうすぐ2年になります。
早いものです。

4人姉妹の長女。 の願望

親元を離れた大学生活のときからずっと、そしてその後社会人になってからも十数年、最初は2人、ときには4人で(!)、しばらく3人、、と変化はあれど、妹(たち)と長らく一緒に暮らしてきました。

そんな中で

「一人暮らしがしたいなあ」

という思いが、強弱の波はあれど10年以上頭の片隅でくすぶっていました。

じゃあしたらいいじゃないって思われるかもしれないけど、わたしにとっては腰が重く、簡単ではないことのように感じていたのです。
妹に申し訳ないなとか、金銭的な理由で嫌がられるかもなとか。

それでもここ最近は、さすがにそろそろ、、という気持ちが大きくなっていました。

2019/01 - フェーズ1: とりあえず書き出す

そこでTOC@HokurikuのATT勉強会で、AT(アンビシャス・ターゲット=達成したい目標)を「一人暮らしをする」に設定してATTを書きました。

ATの達成を阻む障害には、4つ挙げました。

1. 妹の反対にあう、妹が非協力的だ
2. 不動産に連絡するのが億劫で、部屋探しが進まない
3. 満足できる物件が見つからない
4. 生活費が足りないかもしれない

…なんとか書き出したぜ。

初めてちゃんと、言語化して書き出したかもしれない。

このときはまだワクワクしなく、むしろ書いたことで、動き出すことをいかに億劫に思っていたのかを自覚したというのが正直なところでした。

また、書いたATTをペアワークの相手に見せたときの「1番目を乗り越える中間目標がいちばんambitious(≒困難)なのですね」という共感のフィードバックが、わたしの気持ちを見事に言い当てていて、とても印象に残りました。ええ、そうなんですよね、、と。

2019/04 - フェーズ2: ATを見直す、見つめる

億劫だと自覚はした。
しかし結局その後何も行動していませんでした。

その自覚から、次に参加したFumiyaさんのATT講座で、もう一度「一人暮らしをする」という目標を書きました。

今思い出しても、このときのFumiyaさんのフィードバックから、すべてが始まったと思います。

「一人暮らしといっても何かないの?例えば、自由きままに暮らすとか。」

えっ、「自由気まま」・・・?
確かにそう訊き直したと思います。

わたしは一人暮らしを始めたら、そんなふうになれるの?

その投げかけをされた瞬間、まるでモノクロ写真みたいに生気のなかった自分の目標が、一瞬にして鮮やかなカラー写真に変わったかのように感じたのです。

「自由きまま」という表現も自分の辞書にはなく、その言葉が持つ大らかさやちょっとルーズな印象に、良い意味で面食らいました。(≒怠惰への憧れ笑)

このとき初めて、これを達成したら今までとは違う未来があるの…?じゃあやる価値があるかもしれないんだ…!というふうに感じられました。

この勉強会では、このATでATTをすべてつくる練習はやりませんでした。
それもあって、勉強会が終わってからしばらく「自由きまま…わたしにとっての "自由きままに暮らす" は何なのだろう」と考え続けました。(「自由きまま」という表現は自分の言葉ではないという自覚がありましたから。)

その後は、気づくと、ふらっと雑貨屋さんに行って「自分好みの食器をそろえたりしてもいいなあ」なんてイメージを膨らませるような行動を実際にやったりもしました。こうした、自分のためのちょっとした想像を、普段いかにしていなかったかにも気づきました。

結局しばらくたってもしっくりくるATの表現は出てこなかったのですが、

今もう一度考え直してみると、姉ぶらず、妹のせいにもせず、自分のペースで自分の人生を生きる。だったのかなあ。
なんて思います。

寄り道や朝寝坊、友人との電話。
そんなささやかなことを、妹たちに気兼ねせずに楽しんでみたかったのです。そのための、一人暮らし。

2019/05 - フェーズ3: もう一度ATTを書く

4月の講座ではATTを一通り書かなかったので、5月のTOC@Hokurikuの勉強会で、もう一度最初から書きました。

結局しっくりくるATの表現はこのときも中途半端なものしか書けませんでしたし、目標達成を阻む障害も1月のときとほぼ変わりませんでしたが、

1月に書いたATTと比べて、障害を乗り越えるための行動をかなり具体的に書けたと感じられました。きっとATを現実的に考え始めたからでしょう。

AT

今年中に一人暮らしを始めて、穏やかで充実した生活を始める

AT達成を阻む障害

1. 妹の反対にあう、妹が非協力的だ
2. 満足できる物件が見つからない
3. 生活費が足りないかもしれない
4. 不動産に連絡するのが億劫で、部屋探しが進まない

障害が、本当はどうだといいのか

1. 妹が賛成してくれる
2. 満足できる物件が見つかる。そのためには、好みの部屋がイメージできている
3. 生活費が足りるとわかる
4. 不動産に連絡しなくても部屋を探せる、電話以外の連絡方法がある


そうなるための行動は?

1. このATTを妹に見せる。2人で各々の家計をシミュレーションする
2. どんな部屋がいいかの条件をリストアップする。賃貸ポータルサイトを見て間取りや金額のイメージを膨らませる
3. 今の家計簿を見返して減らせる固定費があるか確認する。その上で支払可能な家賃の上限をはっきりさせる
4. 散歩がてら、2で調べた物件の外観を実際に見に行く。Webフォームで不動産に連絡できるかを調べる


このとき印象的だったのは、このATTをファシリテータに見せたときに、ファシリテータが「この行動は、妹さんも一緒にやったほうがいいのかもしれないね」と、行動のひとつの付箋紙を指差して、フィードバックしてくれたことでした。

それは、あっ、そうだ!と、わたしの中で「妹 vs わたし」だった課題が、「妹とわたし vs 課題」になった瞬間でした。(「ザ・ゴール2 コミック版」から引用。だいすきなコマです。まさにこれを体感しました)

目標に向かう道中で他の人と一緒にやるといいことがあったり、その行動の途中で、あるいは目標を達成したときには、他の人にも影響を及ぼしたりする
わたしの目標はわたしだけのものではないんだと、改めて気づかされました。

そしてその夜、ついに妹にこのATTを見せました。
それは1月のときも、このときのATTにも、最初(1番目の)行動として書いたことでした。

そのときの妹の表情は、できれば見たくなかったものでした。困惑したような、わたしに否定されたと感じていそうな表情。それを見るのはやっぱりつらかったです。今の生活はATで書いたような暮らしとは違うのだと捉えたのかもしれません。悪いことをした気持ちになりました。

わたしはこれをずっと避けてきたんだ。

それでも、わたしは、このとき確実に、一歩前に進んだのです。

2019/06 - フェーズ4: どちらの物件にするかのクラウド

その後は、ATTのハシゴをひとつずつ上りました。

物件の要件をリストアップしたら12項目になり(会社の先輩に話したら多すぎ!と言われた)、賃貸のポータルサイトで条件に合う物件を探しました。
生活費も2人で各々シミュレーションし、削れる固定費を決め、家賃の上限を設定しました。ATTに書いた行動をふりかえり、ひとつずつクリアできていることがわかって嬉しかったです。

そんな中で最後、2つの物件で迷いました。どちらにするか決め手に欠けます。

12の条件に○✗をつけて比較もしましたが、比較では心は決まらず気持ちも沈みました。比較だと、互いの物件の欠点探しのような気持ちになったからです。

そこで、今度はクラウドを書いてみました。
クラウドの最終ゴールである解決策を出すためというよりは、自分は何を望んでいるのかを知りたいと思いました。欠点探しでは決めたくなかった。

よく書けたクラウドとは言えないけれど、このクラウドを書いて感じたのは、以下のようなことでした。
それまで思っていた前提を疑うことができたのだと思います。

・物件BはDKは確かに広めだけど、6畳2部屋は広いと言えるのだろうか?2部屋とはいえひとつひとつは今の部屋より狭いかもしれない。
・キッチンが広ければそれでいいのか?
・物件Bの方に類似した間取りの別の物件があったから、そこを見て物件Bと同じ気持ちになるかどうかを確認してみよう

そしてこのクラウドは、わたしにとっては以下のように抽象化できそうだとも感じました。

どちらの要望も叶うに越したことはありませんが、予算等の制約もあります。
このクラウドを書いたことで未知の新しい価値を取ってみようと思え、物件Aに決めました。

2019/09 - フェーズ5: 引っ越し完了

10年以上わたしの頭の片隅でくすぶっていた目標が、現実になった日の写真です。

4月に、ATの表現を見直すきっかけをもらったことから始まって、この写真が撮れたと思っています。

引っ越しの作業をスムーズに進めるために書いた別のATTや、振り返りに書いたロジックブランチもあります。でもここで提示するのは、もうやめておきましょう(笑)

目標や障害を明瞭にすると、前進できる

ATの表現が変わったとき、まるでモノクロ写真みたいな自分の目標が、突然鮮やかに色づいたように感じました。そんなちょっとしたことがきっかけで、自分で決めて、行動できました。

このことを振り返ってみると、ATへの行動を起こせたのは、見直した後のAT(と言っても実際にはわたしが見直したわけじゃないけど)が、見直す前と比べて自分が望む状態のイメージがありありと思い浮かぶ表現になったからだと思います。
目標を明瞭にするというのは、単に数字目標だけではなく、そういったことも含むのかもしれません。

目標を阻む障害にしてもそうです。
頭の中でグルグル考えている不安を書き出して見てみることで、自分にとって明らかになり、対処するかどうか等次に進められます。

ただ、奥底に閉じ込めている願望やそれをぴったり示す表現にたどり着くのは、わたしの場合ひとりで考えているだけではとても苦労します。わたしは人と話すのは苦手ですが、人に見せて話すことは良い手段なんだなと思えた経験にもなりました。

実際、一人暮らしという一見簡単に実現できそうなささやかな目標でも、身動きが取れなくなっているなら本人にとっては困難なのです。こうして書いて人に見せることでいろんな人から声をかけてもらえて、ようやく実現できました。かけられた一言一言が本当に印象的でした。感謝の気持ちでいっぱいです。

参考までに、ATTの直接の説明ではないですが、目標と行動の関係はこの本を読むと頷けます。象(感情)が怖がらない大きさにまで行動計画を小さく砕きましょう。そして象使い(理性)には迷わなくて済む素敵な地図(目的地)を。

こちらはまだ読みかけですが、タイトルに惹かれて。独りで暮らすことになってからのご自身を客観的にふりかえり、とても読みやすく優しい言葉で紡いでいるエッセイ。わたしもこんなふうに暮らし、書けたらいいなあ。

最後に、文中引用させていただいた「ザ・ゴール2コミック版」はこちらです。原作で伝えていることを忠実に再現していて、何度も読み返しています。

余談

この記事は、「教育のためのTOC シンポジウム 2020」に応募したテーマで書いたものです。
当時、シンポジウムに応募する際に、付箋紙を使ってふりかえりをしたのが懐かしいです。

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