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過去問チャレンジ事例Ⅲ(平成29年度)

概要編でお伝えしたコツとフレームワークを元に、過去問にチャレンジしていきます。二次試験は回答が公開されていませんが、正しい考え方で解くことが回答に結びつきますので、しっかりと思考の癖をつけていきましょう。

問題

平成29年度問題

超重要ポイント=★ 重要ポイント=太字

【C 社の概要】
C 社は、1947 年の創業で、産業機械やプラント機器のメーカーを顧客とし、金属部品の加工を行ってきた社長以下 24 名の中小企業である。受注のほとんどが顧客企業から材料や部品の支給を受けて加工を担う賃加工型の下請製造業で、年間売上高は約2億円である。
現在の社長は、創業者である先代社長から経営を引き継いだ。10 年前、CAD 等のIT の技能を備えた社長の長男A現在常務Bが入社し、設計の CAD 化や老朽化した設備の更新など、生産性向上に向けた活動を推進してきた。この常務は、高齢の現社長の後継者として社内で期待されている。
C 社の組織は、社長、常務の他、経理担当1名、設計担当1名、製造部 20 名で構成されている。顧客への営業は社長と常務が担当している。
近年、売り上げの中心となっている産業機械・プラント機器の部品加工では、受注量が減少し、加えて受注単価の値引き要請も厳しい状況が続いている。その対応として、現在 C 社では新規製品の事業化を進めている。
【生産概要】
製造部は機械加工班と製缶板金班で構成され、それぞれ10 名の作業者が加工に従事している。機械加工班は NC 旋盤、汎用旋盤、フライス盤などの加工機械を保有し、製缶板金班はレーザー加工機、シャーリング機、プレス機、ベンダー機、溶接機などの鋼板加工機械を保有している。
C 社では創業以来、顧客の要求する★加工精度を保つため機械の専任担当制をとっており、そのため担当している機械の他は操作ができない作業者が多い。また、各機械の操作方法や加工方法に関する★技術情報は各専任作業者それぞれが保有し、標準化やマニュアル化は進められていない
加工内容については、機械加工班はコンベアなどの搬送設備、食品加工機械、農業機械などに組み込まれる部品加工、鋳物部品の仕上げ加工など比較的小物でロットサイズが大きい機械加工であり、製缶板金班は農業機械のフレーム、建設用機械のバケット、各種産業機械の本体カバーなど大型で多品種少量の鋼材や鋼板の加工が中心であ顧客から注文が入ると、★受注窓口である社長と常務から、担当する製造部の作業者に直接生産指示が行われる。顧客は古くから取引関係がある企業が多く、受注品の多くは各顧客から繰り返し発注される部品である。そのため受注後の加工内容などの具体的な打ち合わせは、各機械を担当する作業者が顧客と直接行っている

【新規事業の概要】
新規事業は、3次元 CAD で作成した3次元データを用いて、3次元形状の加工ができる小型・精密木工加工機「CNC 木工加工機」の事業化である。この新規事業は、異業種交流の場で常務が耳にした木材加工企業の話がヒントになり進められた。「木工加工機は大型化、NC 化が進み、加工機導入の際には多額の投資を必要とするようになった。以前使っていたならい旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲しいが、見つからない」との情報であった。ならい旋盤とは、模型をなぞって刃物が移動し、模型と同じ形状の加工品を容易に再現できる旋盤である。常務と設計担当者が中心となり加工機の設計、開発を進め、外部の CNC 制御装置製作企業も加えて、試作機そして1号機の実現にこぎつけた。しかし、それまで木工加工関連企業とのつながりも情報もない C 社にとって、この新規事業の販路開拓をどのように進めるのか、製品開発当初から社内で大きな問題となっている。C 社は、特に新規顧客獲得のための営業活動を積極的に行った経験がない。また、販売やマーケティングに関するノウハウもなく、機械商社などの販売チャネルもない
そこで常務が中心となって、木工機械の展示会に出展することから始めた。展示会では、特徴である精密加工の内容を来展者に理解してもらうため、複雑な形状の加工を容易に行う CNC 木工加工機の実演を行ったが、それによって多くの来展者の注目を集めることができた。特に、NC 機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木工加工関係者から、★プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答えることで、CNC 木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から評価され、C 社内では大きな手応えを感じた。そして展示会後、来展者2社から注文が入り、本格的に生産がスタートしている。この CNC 木工加工機については、各方面から注目されており、今後改良や新機種の開発を進めていく予定である。この展示会での成功を参考に、現在は会社案内程度の掲載内容となっているホームページを活用して、インターネットで広く PR することを検討している。CNC 木工加工機の生産は、内部部品加工を機械加工班で、制御装置収納ケースなどの鋼板加工と本体塗装を製缶板金班でそれぞれ行い、それに外部調達した CNC制御装置を含めて組み立てる。★これまで製造部では専任担当制で作業者間の連携が少なかったが、この新規事業では、機械加工班と製缶板金班が同じ CNC 木工加工機の部品加工、組み立てに関わることとなる。なお、最終検査は設計担当者が行うこれまで加工賃収入が中心であった C 社にとって、付加価値の高い最終製品に育つものとして CNC 木工加工機は今後が期待されている。

<設問>
第1問(配点 30 点)
CNC 木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策を 140 字以内で述べよ。

第2問(配点 20 点)
C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力を CNC 木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題とその対応策について 120 字以内で述べよ。

第3問(配点 20 点)
C 社では、ホームページを活用した CNC 木工加工機の受注拡大を考えている。展示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧客を受注に結び付けるための社内対応策を 160 字以内で述べよ。

第4問(配点 30 点)
C 社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な CNC 木工加工機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか、140 字以内で述べよ

事例Ⅲのコツ

1.問題点を適切に抽出する
2.キーワード(問題点)と設問を紐づける
3.一次試験の知識を使う
4.あるべき姿、問題点、課題を整理する
5.全体の構成を意識する
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

フレームワーク

こちらのオリジナルフレームワークを元に考えていきましょう。
■作成方法
・強みを記載
・問題点をQCD、生産計画、生産工程の観点でキーワードを分類
・同様に、あるべき姿、対策・改善策(課題)を記入
※課題=あるべき姿と問題点のGAPに対しての行動すべきこと

■強み
・設計のCAD化、老朽化した設備の更新等生産性向上に向けた活動が評価
・CNC木工加工機の加工精度と操作性、メンテナンスの容易性が評判

①問題点×全体・QCD

・加工賃収入が中心で、付加価値の高い最終製品がない
・受注量が減少、受注単価値引き要請も厳しい
問題点×生産計画
・受注窓口の社長と常務から直接生産指示が行われる
・各機会を担当する作業者が顧客と直接加工内容などの具体的な打ち合わせをしている
・新規事業の販路確保がでいていない、営業活動のノウハウがない
③問題点×生産工程
・機械の専任担当制のため、他の機械を操作できない
・各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各作業者がそれぞれ保有し、標準化やマニュアル化されていない
・受注窓口の社長と常務から直接生産指示が行われる
・新規事業の最終検査は設計担当者が実施
④あるべき姿×全体・QCD
・高付加価値商品による売上の拡大
⑤あるべき姿×生産計画
・属人的ではなく、全社的な計画の共有と対応
⑥あるべき姿×生産工程
・機械加工班と製缶板金班の作業者間連携
・多能工化
・マニュアル化、標準化
⑦対策・改善点(課題)×全体・QCD
・作業者間の連携強化
⑧対策・改善点(課題)×生産計画
・社長、常務からの直接指示ではなく、全社統一した受注管理
・受注仕様書等の作成
⑨対策・改善点(課題)×生産工程
・作業者間の連携強化
・OJTによる教育
・多能工化
・マニュアル化、標準化

■一次試験の知識の応用
・情報共有の必要性
・計画の全体管理による生産統制
・OJTによる教育の重要性
・多能工化の重要性
・マニュアル化、標準化の重要性

■おおまかな事例の内容と方向性
・売上減少のため、高付加価値な新事業に向かいたい状況。機械ごとに専門の作業員がおり、技術等の共有が図れていないなど、作業上の問題点が存在している。多能工化や標準化、情報共有などを行い改善を図りつつ、余力や強みを新事業に投入していきたい。

第1問(配点 30 点)
CNC 木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対応策を 140 字以内で述べよ。

<ポイント>
問題文に、”問題点”(⇒問題点を解決するための行動=課題)が書いてありますので、丁寧に抽出しましょう。作業観点、計画観点で考えましょう。

③問題点×生産工程
・機械の専任担当制のため、他の機械を操作できない
・各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各作業者がそれぞれ保有し、標準化やマニュアル化されていない
・受注窓口の社長と常務から直接生産指示が行われる
・新規事業の最終検査は設計担当者が実施

⑨対策・改善点(課題)×生産工程

・作業者間の連携強化
・OJTによる教育
・多能工化
・マニュアル化、標準化

<解答例>
課題は、作業者間の連携を強化し、CNC加工組み立てを行うこと。対応策は、①作業員個々が保有する技術情報を標準化し、共有すること、②製造部全体の生産統制を行うため、生産計画を立てることである。

第2問(配点 20 点)
C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる余力を CNC 木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題とその対応策について 120 字以内で述べよ。

<ポイント>
問題文に、”問題点”が書いてありますので、その改善が対応策となります。

問題点×生産計画
・受注窓口の社長と常務から直接生産指示が行われる
・各機会を担当する作業者が顧客と直接加工内容などの具体的な打ち合わせをしている
・新規事業の販路確保がでいていない、営業活動のノウハウがない
③問題点×生産工程

・機械の専任担当制のため、他の機械を操作できない
・各機械の操作方法や加工方法に関する技術情報は各作業者がそれぞれ保有し、標準化やマニュアル化されていない
・受注窓口の社長と常務から直接生産指示が行われる
・新規事業の最終検査は設計担当者が実施
⑧対策・改善点(課題)×生産計画
・社長、常務からの直接指示ではなく、全社統一した受注管理
・受注仕様書等の作成
⑨対策・改善点(課題)×生産工程
・作業者間の連携強化
・OJTによる教育
・多能工化
・マニュアル化、標準化

<解答例>
生産能力向上の課題は、①専門以外の機械操作が可能な体制、②機械操作等の技術情報の共有、③顧客と作業者の情報共有化で、対策は、①OJTの導入等で多能工化の推進、②標準化・マニュアル化の導入、③受注仕様書等で文章化、等で余力を作る

第3問(配点 20 点)
C 社では、ホームページを活用した CNC 木工加工機の受注拡大を考えている。展示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧客を受注に結び付けるための社内対応策を 160 字以内で述べよ。

<ポイント>
展示会での成功ポイント、強みなどを中心に回答を考えましょう。

■強み
・設計のCAD化、老朽化した設備の更新等生産性向上に向けた活動が評価
・CNC木工加工機の加工精度と操作性、メンテナンスの容易性が評判

<解答例>
ホームページ活用方法は、実演の動画とプログラムの作成方法、稼働部等のメンテナンス方法、加工可能な材質など展示会での質問内容を掲載し、加工精度や操作性、メンテナンス容易性を訴求することである。社内対応策は、ホームページでの顧客からの問い合わせに迅速に対応できるように、担当者と対応方法を定めて、営業体制を強化すること。

第4問(配点 30 点)
C 社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な CNC 木工加工機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについてどのような方策が考えられるか、140 字以内で述べよ

<ポイント>
難しい設問、解答に困った場合は、強みや顧客から評価が高い点を中心に回答を考えてみましょう。

■強み
・設計のCAD化、老朽化した設備の更新等生産性向上に向けた活動が評価
・CNC木工加工機の加工精度と操作性、メンテナンスの容易性が評判

<解答例>
製品の方策は、CNC木工加工機のような操作の容易性・汎用性や加工対象の多様性を持たせ、顧客要望をトータルで解決する新機種を開発する。サービスの方策は、①プログラム作成を代行し提供するサービス②メンテナンスを代行するアフターサービスを行う。これらの方策で、事業を高付加価値化する。

生産計画・生産工程の問題点、あるべき姿、対策を重複しないように整理し、記載できるようにトレーニングしましょう。

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