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「『面白い』を極める!バリで急成長しているインターナショナルなお笑い芸人コミュニティ」バリ島

バリのエンターテイメント界で、多国籍でインターナショナルなお笑いが注目されているようです。
世界中から観光客が訪れ、年々外国人在住者数が拡大するバリ島。そんなユニークな環境下、各国から現役お笑い芸人や芸人の卵が集まって切磋琢磨するバリコメディクラブ。世界のコメディシーンで活躍する芸人さんの誕生もそう遠くはなさそうです。
ブラワの一大エンターテイメント発信拠点・フィンズがバックアップするというのも注目ポイント。

Lenny Bruce:  お笑いなんて酷いものですよ。ない方がいい。がん細胞みたいなもんだ。
Miriam “Midge” Maisel : そんなこと言ってるけど、やっぱり好きなんですよね、お笑いが。
(Lenny 氏はフッと笑って肩をすくめて見せると、足早に立ち去った)
Miriam “Midge” Maisel : やっぱりあの人、お笑いが好きなのね……
    これは最近バリに来た Maisel 夫人の、お笑いワークショップでの一コマだ。この毎週開催される会はバリ・コメディクラブが主催しており、ステージに上がりたい人は誰でも参加できる。私が毎週水曜に行われてきたこのワークショップを訪れたのは、このホテルでの開催があと2回という日だった。到着するとすでにステージは始まっていた。席に着くと私はサッと会場を見回した。
    足に関連するジョークばかりとばすフランス出身の元ボディガード。軽い下ネタを連発する、小生意気で小柄な、タトゥーを入れた中華系インドネシア人。お笑いを安いセラピー代わりだと思っている未亡人。
この会場は、こんな感じの人だらけ。個性的な芸人から芸人志望まで、腕を磨こうと、お互いに意見感想を交わしている。
    このワークショップの良いところは、無理に急ぐ必要のないところだ。ステージに上がらなくても、好きなだけ観覧してよいのだ。
    英語を話すインドネシア人のバリ島在住コメディアンで、インドネシアで有名なコメディアン・Reggy Hasibuan はインタビューの中でこう話した:「ワークショップに参加している人の中には、ステージに上がるまで1年かかった人もいますし、3か月ほどでステージに上がった女の子もいます。その女の子はこのワークショップでは観覧ばかりしていたんですよ」
    ワークショップとリハーサルはお気楽ムードで行われ、その日は参加者全員がワークショップが終わるまで楽しんだ。意見交換の内容は非常に建設的で、もっと良くしたいという真剣な気持ちが伝わってくるものだった。
    「自分を好きでいてほしいんです」
コメディアンのひとり Dana Pandawa が自虐ネタを披露した後、バリコメディクラブの設立者・Christian Giacobbe 氏はこう言った。
服装をネタにしたネタを披露したものの、誰も笑わなかったのだ。お笑いとは難しいものだ。
     「ウケないのは、難しいからですよ」
ラトヴィアの曲芸師・Renars Latkovskis 氏は言った。カリスマ性と舞台に上がる度胸こそが大事なのだという。
     「立ち上がって動き出さずに日々過ごしているだけでは、何も起こりません」
    芸人歴約7年でインドネシアのテレビでも活躍しているベテラン芸人・Annie Yang は、彼女が主催側になることもあるが、それでも、今でもこのワークショップにやって来てリハーサルを重ねている。
     「バリコメディクラブのみんなのリハーサルを見るのが好きなんです」
Annie 氏は言う。彼女は、台湾に住んでいた頃にお笑いを始めた。彼女の一番人気のネタはこのワークショップで生まれたそうだ。
     「バリコメディクラブは交流の場なんです。私たちは家族みたいなものだし、時にはライバルにもなります。そういうのが、お互いを成長させているんです」

セラピーとしてのお笑い
    フランス出身の39歳・元ボディガードの経歴を持つジュリアン 氏は、テレビ番組を見て、お笑い芸人になることを決心したという。インターネットで調べている中でバリコメディクラブを知り、即申し込んだ。
「このグループで私はお笑いの基礎やネタの探し方を知り、フィードバックをもらって学びました」
彼は、うまく行った時もそうでない時も、みんなでディスカッションできることが楽しいのだという。例えば、彼の足フェチのネタなどはここで揉まれた成果だそうだ。
「私のはほとんどが足フェチネタなんです。たとえばこういうネタです。私の誕生日に彼女が『ハイヒールは好き?』と聞く。私はもちろん好きさと答える。私たちが旅行に出かけると、彼女はハイヒールを履いて来て『これが私のお誕生日プレゼントよ!』と言った!」
     Giacobbe 氏は37歳。バリのお笑いシーンが発展していく中で、海外からの在住者がこの神の島で活躍すると確信していた。
「多くの人々が公共の場で演説や講演を行っていますが、問題は、お笑いといはそういうのとは全く異なる技術だということなんです。ある人にはウケても、全然理解できない人もいる。
だから私はこのワークショップを始めたのです。お笑いの技術は、他のどんな技術とも違います。練習や勉強が必須なのに、バリにはそうした場がなかったから」
Giacobbe 氏がワークショップを始めるとすぐに大きな反響があったという。インドネシア人のインドネシア語のお笑い界が急成長する中で、英語でお笑いをしたい人も増えているのだ。
世界的な視点から言うと、 Giacobbe 氏は、インドネシアはマレーシアやシンガポールよりも遅れととっているという。例えばマレーシアにはすでに Nigel “Uncle Roger” Ng や Ronny Cheng といったお笑い界のスーパースターが登場し、シンガポールで活躍している。
「インドネシアにはまだそうしたお笑い芸人はいません。たった一人、Pandji [Pragiwaksono] はいい線をいっていますがね。彼は最近ニューヨークで活躍しています」
そんな中で、Giacobbe 氏はバリ島には可能性があると信じている。東南アジアのお笑いの中心地となり、インドネシアから世界を舞台に活躍するお笑い芸人の登竜門となる日は近いだろう。
    ワークショップの最後に、バリコメディクラブの新しい拠点が発表された。チャングー・ブラワにある フィンズ(Finns Recreations Club)である。ドネーションベースで毎週金曜日にお笑いスペシャルイベントが開催されるほか、実験的に毎週土曜日にコメディ・ナイトが開催される。
コメディ・ナイトでは、レストランの食事スペースで新人芸人のステージのほか、ベテラン芸人が登場する。
「フィンズで、バリ一番のお笑いイベントができるなんて、本当に楽しみです」フィンズのイベント企画部マネージャー・Lars Hoehn 氏は言う。
「バリで最大・最高のお笑いイベントになりますよ!毎週金曜のステージと、実験的な土曜日のコメディ・ナイトで、幅広い笑いを提供していきます」

先日行われたチャングー・お笑い特別イベントを主催した Christian Giacobbe 氏 Photo: Obtained.

バリのお笑いのセンスは
私がこの記事のためにインタビューしたお笑い芸人のみなさんは、バリのお笑い界を牽引していくことだろう。「バリ島の観客は特殊です。20か国以上の国々から来ていることも少なくありません。旅行者もいれば、在住者もいる。そんな環境の中で披露するネタは、みんなが理解できて楽しめるものでなければならない。
もうひとつの問題は言語の壁です。ゆっくり話さなければならない。国際色豊かな観客が理解できるように、難しい単語も使ってはいけない」 (Giacobbe 氏談)

バリコメディの観客 Photo: Obtained.

Annie Yang 氏は、忌まわしきチャングーのショートカット(チャングーのブラワとバトボロンの間の私道。近道としてローカルが使用してきたが近年大渋滞している)やバリの町スパ(安マッサージ店)、プティティンゲット地区の外国人ナンパが横行するバーなど、ここ2年ほどの間のバリの中心地がブラワ地区であることをネタにした。
「この3つはテッパンのネタで、外国人の笑いがとれます。でも今は観光客が増えていて、こうしたいつものネタさえ分かってもらえなくなってきましたね」
一方で、バリの観客はオープンマインドであるという長所もある。
「彼らはみんな、いろんな種類のお笑いを楽しんでくれると思います」
    Reggy Hasibuan 氏はバリのお笑いシーンの未来は明るいという。
「これまで、施設の面では非常に貧相でした。観客との距離なんて本当に、想像を絶していましたよ。でも、フィンズでは週を通じてスペースを提供してくれるのです。ステージだけでなく、ワークショップや多言語でのお笑いなどもできる。
バリのお笑い界はまだまだ生まれたてのひな鳥みたいなものです。現代の世界情勢の中、この楽園においても、誰もがみんな、人生に笑いを必要としているのです」

All pictures courtesy of Bali Comedy Club.
COCONUTS BALI "So you think you’re funny? Bali’s burgeoning comedy community invites you to find out" Nov 25, 2022
 


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