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キャンディ、せつなくて。

私たちはガムに対して積極的。
チョコレートに対して官能的。
でもキャンディに対しては怠けてる。あまえてる。
お互いにだらりとしている。そこがいい。
ガシガシと噛んでしまわずに、舌の上でまどろむように転がすのが正しい。

できるだけいろんな色のキャンディがいっぱいつまっている袋を、
いつもストックしている。
つまりいろんな味ということだけど、重要なのは、色。

今日は、勝負をかけたいから、赤。
今日は、平和でありたいから、緑。
今日は、クールに見せたいから、青。
今日は、はしゃぎたいから、黄。
今日は、ひらめきたいから、紫。

こんなにきれいな色なのに、こんなにかわいい形なのに。
ひとたび口に入れたら何も見えなくなるの、キャンディ。

途中で外に出してしまったら、べとべとして、やな感じ。
迷惑な感じ。行き場に困る感じ。
誰にも見せたくない感じ。
ひとりで責任もって最後まで。
こっそり秘密の慰め、キャンディ。

たいしたアクションも起こさないまま
みっちりじっとり触れ合って
時が過ぎて溶けたらなにもかもがおしまい。
あとかたもないくせに、ほんのりと残り香。
憎い。ありがとう。欲しい。もっと。
キャンディ、せつなくて。